『養老天命反転地』に行ってきました。

『三鷹天命反転住宅』に行ってから早一年、今回も御暇を頂く事になったので『養老天命反転地』に行って来ました。
養老天命反転地』の概要は以下の通りです。

養老天命反転地は、現代美術家荒川修作と、パートナーで詩人のマドリン・ギンズのプロジェクトを実現したテーマパークです。
約18,000m2の園内には、メインパビリオン「極限で似るものの家」とすり鉢状の「楕円形のフィールド」があります。「極限で似るものの家」は岐阜県の形をした屋根を持つ迷路状の建物で、天井、地上、地下の3層にそれぞれ家具が取り付けられています。「楕円形のフィールド」には、この「極限で似るものの家」を分割したパビリオンが点在するほか、148の曲がりくねった回遊路や、大小さまざまの日本列島が配されています。
ここでは、予想もつかなかった風景や懐かしい風景、いろいろな出来事に出会うことになるでしょう。はじめて体験する世界で、新しい自分を発見できるかもしれません。  『養老天命反転地』公式サイト概要より引用

養老天命反転地』は岐阜県養老郡にある「養老公園」内にあり、今回は友人に車を出して貰い、都内から5時間程掛けて向かいました。


養老公園内に掲示された地図】


養老公園を見下ろして撮影。養老山の麓に位置する養老公園の眺めは良い。岐阜の街並みを背景に、手前の窪地に見えるのが天命反転地。】

入場料(大人710円)を払って入場。ここで養老天命反転地の案内図と使用方法が書かれたパンフレットを貰いました。
開園時間丁度に入場したので他に入場者はいませんでした。
まず最初に我々を出迎えたのは「養老天命反転地記念館―養老天命反転地オフィス」でした。



【「養老天命反転地記念館―養老天命反転地オフィス」外装。割とこじんまりとしているようで、眺める場所によって建物の傾斜と歪みによる異様さが目を引く。】

養老天命反転地記念館―養老天命反転地オフィス」館内には、荒川・ギンズ両氏によるドローイングやコンピュータグラフィック作品が展示されており、テレビから『死なない子供、荒川修作』のパイロット版が上映されていました。





【「養老天命反転地記念館―養老天命反転地オフィス」内。床は傾斜し、枝分かれした敷居が床と天井に対称に設置されている。上記写真では敷居の上に友人二人が立つ事で、傾斜から免れている。】











【荒川・ギンズ両氏によるドローイングやコンピュータグラフィック作品の展示。メモやイメージ画も描きこまれていた。】

と、「養老天命反転地記念館―養老天命反転地オフィス」館内は一部屋しかないのですが、男子トイレと女子トイレがある事に気が付きました。
もしやと思い、トイレに入ってみると、やはりおかし事になっていました。さすがに女子トイレには入りませんでしたが、男子トイレとは違った仕掛けがあるのかもしれません。






【男子トイレの天井にはなぜか卓球台が…小便用トイレも段差あり、大便用トイレも採光の位置がおかしなところにある。女子トイレはどうなっているのでしょうか…】

養老天命反転地記念館―養老天命反転地オフィス」の出口から出ると「昆虫山脈」がある。



【「昆虫山脈」。なぜか頂上に水引きと釜がある。ただし実際に水を引く事は出来ない。「昆虫山脈」は登る場所によって傾斜が急な所もある。上記写真の位置から登ると傾斜が緩やかになっていた。】

「昆虫山脈」の横には「不死門」がある。養老天命反転地のゲートを意味するらしい。











【「不死門」。竹、猫、兎、養老天命反転地の文字、その他にも文章が記載されている。】

そして公園のメインパビリオンである「極限で似るものの家」へ。
この建物内を探索し続けていると、友人が「酔ってきた」と申告。確かに平らな部分が無く、天井や床に視線を移せないといけないので疲労します。というより身の安全を守りながら行動しないといけないので身体が緊張状態を強いられます。




































【「極限で似るものの家」。床には岐阜の地名が記載されているようです。建物は内部ではソファー、台所、椅子、机が内装ごと壁にめり込み仕切られています、天井や地下に椅子やベッドがある始末。】

「極限で似るものの家」から「楕円形のフィールド」へ、塹壕のような通路を通って向かいました。
そこで友人が首にぶら下げていたカメラのレンズを傷つけるという残念無念なアクシデントが発生しました。
ちなみに友人がカメラを傷つけた塹壕の通路は「しかながらの道 HOWEVER STREET」という名称でした…。





【「やっちまった!」という声が響いた塹壕のような道。「死なない為の道 NOT TO DIE STREET」と塹壕の入口には表記されていた。死にはしないが壊れやすい道。】

塹壕のような「死なない為の道 NOT TO DIE STREET」を抜けると「精緻の棟」にたどり着きました。












【「精緻の棟」は下の隙間から建物内部に入り、その建物の隙間から外を切り取るように覗く事が出来る。建物内部の壁には久しく見なかった相合傘の落書きが。こんな変な建物にそんな落書きをしてみようという好奇心が新鮮である。その他にも同公園内には経年劣化していく様子が見え、荒川氏・ギンズ氏は建物が経年劣化していく事も考慮に入れて設計図を描いたのだろうかと思う。】

「精緻の棟」から「楕円形のフィールド」へ。


【「楕円形のフィールド」。草木が生い茂り、フィールド内が隠れて全容が判らない。公式サイトにある画像とはまた違ったフィールドへ変容している。】

まずは「楕円形のフィールド」の外壁を上って景色を眺める事にしました。













【「楕円形のフィールド」。外壁の通路は薄暗く前日に雨が降ったのか水溜まりが多数ある。私は左足を水溜まりに突っ込んだ。外壁からの眺めは良い。「養老天命反転地」入場者に危険な事をしないように呼び掛ける警備員がポツンと見えた。】

そして「楕円形のフィールド」へ*1










【「楕円形のフィールド」内はその名の通りすり鉢状になっているのでほとんどが傾斜地。草木も茂って歩くのにも難儀する。】





【「もののあわれ変様期」。ベッドで寝てみたけど、コンクリートのベッドは硬く冷たい。ベッドからの眺めは歪んで切り取られた空だった。】



【「宿命の家」。もはや家でも無く、脈々としている。そう表現するしかない。】





【「運動路」と模様のある外壁。外壁の模様が何を意味するのか。そもそも意味があるのかも判らない。最後の写真に見える茶色い建物はおそらく「想像のへそ」。】



【「地霊」。小さな防空壕のような洞穴に入ると中は暗闇。手を前に出し突如現れた足元の段差に悲鳴を上げながらたどり着いた先は日本列島の光である。】




【「切り閉じの間」。「地霊」同様の仕組みになっており、はてさてこの光はどこからと思い、「切り閉じの間」周辺を探索すると小さな硝子の日本列島を発見した。】

養老天命反転地」の施設を体験しながら観て廻り、気が付くと二時間以上経っていた。
他の入場者の姿も見え始め、子どもが数人で元気よく走り回り大きな声を挙げている。
小さな、まだ立つことがやっとのような子どもを連れた夫婦や、若い男女の姿もある。
そんななか、疲労した身体を公園内のベンチに任せ、友人たちとこんな会話をした。

「この公園で身体の新たな可能性に目覚める根拠とかあるのだろうか」
「だとしたら岐阜県の人はトップアスリートばかりになっているんじゃないの」
「それだと、この施設で身体の新たな可能性に目覚めるっていう事がオカルティズムとどう違うのかという事になってくるでしょ」
「実際に天命反転地や天命反転住宅で育った子どもがどのように他の人と違うのか」
「しかし親のエゴで子どもに無理を強いるのも可哀想だ」
「しかし子どもはよくあんな傾斜地を思いっきり走る事が出来るね」
「確かにここではカメラなんて持たず身ひとつで好き勝手に遊んでみたいね」
「さっきの子どもたちは、傾斜のある場所から尻の摩擦を使って下りてきてたよ、驚いた」
「子どもはああやって怪我とか恐れずに走るよなぁ」
「そうだね」
「ああいうのは反省とかあるのかな?」
「反省なんてしてないんじゃないの、自分は大丈夫みたいな自信があるんじゃないの」
「いや、反省はするでしょ。こうやったら怪我をしたからもうやらない、みたいな」
「でも怪我するような行為はいつも違うじゃない?」
「いやだから、またそれは反省して、次に行くっていう」
「あー、そうか」
「でも俺らの歳になってそういうのある?」
「いや、無いね、そうならないように気をつけるだけで、走らないっていう選択をするでしょ、根本的な対処として」
「そうだね」
「でも子どもは走ると」
「子どもは何度でも挑戦していくんだ」
「超人的に?」
「いや、ニーチェとか判らないけど」
「でも俺らみたいにもう怪我しないようにあきらめるっていうのと、何度でも個別具体的にトライ&エラーで挑戦しているっていうのはさ、死んでないよね」
「あー、だから死なない訳だ」
「あー、そういう「死なない」ね、象徴的な意味で」
「あー、まとまっちゃったよ」
「本当かよ?でも、それが死なないっていう荒川の意味と同じかどうか…」
「まぁ、ね」
「いやぁ、疲れたね」
「俺、座ってると金玉が挟まって痛いんだけど」
「なんだよ、それ」
「いや(ry」

―同施設サイト―
養老公園』公式サイト http://www.yoro-park.com/
養老天命反転地』公式サイト http://www.yoro-park.com/j/rev/index.html


死なない子供、荒川修作 [DVD]

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建築する身体―人間を超えていくために

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死ぬのは法律違反です―死に抗する建築 21世紀への源流

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*1:ここから写真に撮る余裕が無くなり、全ての建物物を写真に残してはいない。