スカっと『メランコリア』

ラース=フォン=トリアー監督作品『メランコリア』を観た。
去年3月、同監督の『アンチクライスト』を観て以来となる。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』はまだ観ていない。

本作は、『アンチクライスト』のように象徴的な映像と*1、第一部「ジャスティン」第二部「クレア」というパートに分かれている。パート名は本作の主人公である姉妹の名前である。
第一部「ジャスティン」では姉クレアとその家族が住む邸宅で催される妹ジャスティンの結婚式が描かれる。
第二部「クレア」では結婚式の後、惑星メランコリアが地球に衝突するかもしれないという事態を背景に、再度邸宅を訪れたジャスティンとクレアの家族を中心に物語が進む。

第一部冒頭では、リムジンが森の小道を通る事が出来なかった為にクレアの邸宅に何時間も遅れてたどり着いてジャスティンは尋ねる。
「あの赤い星は何?」
それにクレアの夫は「アンタレス」と応える。
そしてクレアの息子はジャスティンに「シェルターを一緒につくろう」と語り掛ける。
しかし、これらのシーン以降、第一部「ジャスティン」では惑星メランコリアが地球に向かっているという事態は語られない。
ジャスティンが「足が重い」と不調を訴え、新郎、上司、家族との仲を破壊していく様が描かれる。
クレアはジャスティンに「今日は変な事をしないはよね?」と語り掛け、ジャスティンの奇行が今に始まった事では無い事が示唆される。

第二部に於いて、姉クレアが惑星メランコリアが地球に向かっているという事態を非常に恐れている様子から描かれる。
ここでようやく惑星メランコリアが地球に向かっている事が物語に於いてハッキリと描写される。
しかし、舞台はクレアの邸宅とその周辺の森であり、ジャスティンとクレアの家族しか描かれない。
物語が終わりに向かうにつれ、クレアが混乱、歩く事もままならなかったジャスティンは正気を取り戻し、神経を冴え渡らせ、世界の真理さえ手に入れていく。

おそらく精神を病んだ人々の症例と一致するであろうジャスティンの言動。
それは惑星衝突という混乱によって真理となる。
この構図は『アンチクライスト』と似ている。しかし『アンチクライスト』では妻が暗に実行する事によって事態が引き起こされていた。
しかし本作では惑星メランコリアが地球に衝突するかもしれないという環境によってジャスティンは真理を得る。

とかなんとか言いながら惑星の衝突なんて事が起こるのかしら?
『24』主演で本作ではクレアの旦那のキーファー・サザーランドは死に損なんじゃなかろうか?と最後まで思っていたところ、スカっと物語は終わる。
スカっとした気持ちでラース=フォン=トリアー監督の作品を見終えるとは思っていなかった。
心底驚いたというの正直なところで、これはお勧めの映画だと思った。

*1:ただし、『アンチクライスト』のように事の発端を映しているのではなく、あくまで象徴的に、である。