GOEMON

『GOEMON』を観た。
紀里谷和明監督作品。
私は紀里谷監督の前作『CASSHERN』が好きである。当時はあまり映画館に通う習慣はなかった。しかし漫画雑誌の試写会告知ページの写真の格好良さにしびれ、たまたま友人と遊ぶ機会があり、この映画を観に行った。私が『CASSHERN』を気に入ったのは荒廃した世界観と、CGを駆使した映像、そして格好良さにあると思う。また意図的かどうか知らないが、物語が筋道立っていないことによって理解しようと、もしくは解釈しようと必死にならなければいけなかったことも理由になるかもしれない*1。その後この作品の評判が良くないことを知った。適当にその理由をネット上で観たりした。その感想で特に印象に残っているのは、作品のテーマ、例えば愛だとかそういったものをそのまま主人公たちに語らせてどうする、といった主旨であった。確かにその通りだと思う。何かを観客に考えさせるなら、そんな言葉はいらないし、総論ともいえる言葉を投げかけえたところでそれは誰にも届かない。せいぜい勘違いするだけだ。むしろ知らぬ間に愛という概念に属する何か具体的な事、思考をさせてしまうのが、映画などの力であると思う。しかしこの映画を観た当時私は愛という言葉を言い切ってしまう、その思い切りの良さに驚いていたと思う。

さて今回観た『GOEMON』であるが、正直非常に冷めた目で見ざるを得なかった。主人公の言動もいちいち説教臭くてみてられないし、はっきりいってスベっている。CGなどによる建築物なども『CASSHERN』と変わりなく目新しさもない。ただ時代状況を考えると南蛮文化の到来によって服装や建築物にも変化があっただろうから紀里谷和明の考える南蛮文化をCGや衣装で表現したということなのだろう*2。また前回のテーマであった愛や平和も語られてる。監督はやはりこの点はゆずれないのだろう。ただし時代劇でありながら愛や平和を語られても違和感が残る。『CASSHERN』は現代から地続きの戦争というリアルさがあったから私はすんなり観ることが出来たのだろう。
かなり批判ばかりしているが、やはり印象に残るシーンがある。五右衛門とは旧知の仲である才蔵が石田三成の策略によって釜茹での刑に処される。才蔵は群集が見守る中、自らを「五右衛門」と名乗り為政者の政治を批判する。そして釜の中に姿を消す。このシーンは『GOEMON』にコメントしている岩井俊二のいうところのゴルゴタの丘なのだろう。これがラストシーンでも良いくらいである。この後繰り広げられる戦闘シーンは、もしかしたらキリストの復活のように、死んだ「五右衛門」の復活であり、新しい国造りのために残された五右衛門の仕事だったのかもしれない。
とにかく批判*3したくなる映画だった。

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  • 伊勢谷友介
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*1:いきなり違う場所に移動したりする主人公に驚いた。

*2:兵士はクローン・トルーパーなのには苦笑いだけど。

*3:良いことも悪いことも。