ETV特集「ロシア・歴史は繰り返すのか〜亀山郁夫 “帝国”を読み解く〜」

 ETV特集「ロシア・歴史は繰り返すのか〜亀山郁夫 “帝国”を読み解く〜」を途中から見る。この番組は未チェックだった。ただ映画監督アレクサンドル=ソクーロフへの亀山郁夫のインタビューをチェックできたのは不幸中の幸いだった。途中から番組を観たので全体の内容をうまく把握できていないが、題名にある通り帝国つまり現在のロシア、大統領プーチンと次期大統領候補メドベージェフの強大な権力構造を、過去のロシア十九世紀ロマノフ王朝時代と比較しながら亀山郁夫がロシアの知識人たちにインタビューをしていく内容のようだった。亀山は『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」を例に挙げ、自由ではなくパンを、ロシアの人々がその強力な権力のもと求めていくのではないかと危惧している。そのような亀山の態度に対し、知識人たちはとても自覚的であった。そして自覚的であるからこそ、真に民衆が勝ち取る民主主義のために、強い国家をつくり権力を民衆に移していかなければならないという。現在のプーチンへの権力集中はそのための準備期間であるというのだ。そして強力な国家を求める理由に、ロシアを蝕むグローバリゼーションをソクーロフは指摘する*1ソクーロフの住むサンクトペテルブルグには高層建築物が建てられているという。しかしサンクトペテルブルクはナチスにさえ破壊できなかった古都だった。その古都はグローバリゼーションの犠牲になろうとしているというのだ。ただしソクーロフはプーチンのような権力者を求めない。それは他の知識人たちとは一線を引いている。また共産主義時代にさえ民衆の受け皿が存在したのに対し、現在にはそれがないということに対する不満を吐露する(この相談の受け皿が具体的に何を意味するのか、ソクーロフは言わなかった)。ロシアの巨大な官僚主義をもっと簡素にした、シンプルなシステムが必要だというのだ(日本も同様であるとソクーロフは指摘した)。ただしその実現は現在のロシアには難しいだろうと彼はいう。彼とその他の知識人たちの同一の意見、それは主流に対する反主流勢力の必要性である。ここから強力な権力者を求めると同時に民主主義を確立したいというソクーロフを除く知識人たちの、矛盾にも似た現在の権力集中体制への危惧がここでも読み取れる。

 繰り返しになるかもしれないが、ロシアという広大な土地をまとめグローバリゼーションに対抗するためには、強大な力が必要であるのだ。ここで問題になるのはロシア人がその力を指導者に求めるのか、国家というシステムに求めているのかということである。おそらくこの番組を見るかぎりロシア人はその力を国家というシステムに求めたいが、それを構築するには時間がかかることを知っており、その代用として現在のプーチン、メドベージェフへの権力集中を認める、もしくは認めざるをえないということなのだろう。そしてその一時的な現実主義路線に対する厳しい警鐘を鳴らすのがソクーロフの立場なのだ。

 さもわかったようにここに書いたが、何度もいうように番組を途中から見始めたことと、正直ロシアの歴史に疎いことが、この記事を簡略化させている(ロマノフ王朝といわれても恥ずかしながらよくわからない)。私のロシアの知識は考えてみるとドストエフスキーと映画、要するにフィクションで補われている。現代史だってそれほど熱心じゃない。再放送がみたい。もしくはしっかりした記事を誰かが書いてくれることを切に望む。

*1:これはどうやら間違い。強力な国家を求める理由にならないようだ。なぜならそのサンクトペテルブルクを開発する企業ははてなダイアリーキーワードによれば>メドベージェフが会長のようだ。ソクーロフはインタビューで数人でつくられた実態のわからない企業といっている。つまりソクーロフは強力な権力者がグローバリゼーションの名のもとロシアを破壊しているといっているのだ。(追記20080625)って違う。メドベージェフは大統領と同じ名前の違う人だった。勘違いしました。すいません。結局ソクローフはグローバリゼーションの名の下の開発をロシア人に対して警告しているということなのだろう。