2021年の漫画

今年は今まで気になっていたけど読んでいない漫画、完結したけど途中までしか読んでいない漫画を読んだ。その結果、かなりの量の漫画を読むことになったので記録を残す。

wako『サチコと神ねこ様』

youpouch.com
以前から継続して読んでいる四コマ漫画。Web連載のため、仕事終わりに読むのが日課となっている。

ヤマシタトモコ『違国日記』

www.shodensha.co.jp
以前から継続して読んでいる。最新巻である8巻は未読である。本書における「違国」は姪から見た叔母の世界と思われたが、物語の進行に伴い、様々な他者の価値観を指すことは明らかだと思う。時事的な話題も違和感無く取り入られており、時に辛いものの非常に面白い。

岩本ナオ『マロニエ王国の七人の騎士』

flowers.shogakukan.co.jp
昨年からのめり込むように読んでいる。マロニエ王国=中つ国の七人兄弟が大使となり、周辺諸国へ赴き、異国の地で自らの出自や世界の成り立ちを知るという王道の中世騎士物語である。素晴らしい線で構成された柔らかな絵柄で登場人物の心情の機微が丁寧に描かれており、一度読んだら止められない。

鳥山明『DRAGON BALL』

アニメでセル編あたりからざっくりと内容を把握していたものの、ナメック星編を把握していなかったため、全巻を通読した。

川原正敏(原作)、甲斐とうしろう(作画)『修羅の紋』

www.gmaga.co
陸奥圓明流の異世界転生物語。なお、陸奥に魔力は無い。

アサイ『木根さんの1人でキネマ』

manga-park.com
映画好きを主人公にしたコメディ漫画。そういえば最近は映画を観る習慣が無くなった。

山田鐘人(原作)、アベツカサ(作画)『葬送のフリーレン』

www.sunday-webry.com
魔王を倒した勇者パーティーの長命のエルフの魔法使いであるフリーレンは勇者の死後、人を知るために旅に出る。精緻な絵柄とフリーレンの感性の表現なのか淡々と進む物語が良い。

武論尊(原作)、原哲夫(作画)『北斗の拳』

強さの指標は愛と哀しみ。サウザーやラオウを倒しても物語は続くので最後までちゃんと読もう。

福本伸行『賭博黙示録カイジ』

賭博黙示録 カイジ 1

賭博黙示録 カイジ 1

Amazon
yanmaga.jp
ざわ・・・ざわ・・・(25周年記念で無料だったところ、夢中になり、全巻を購入して読んだ)

ほったゆみ(原作)、小畑健(漫画)『ヒカルの碁』

shonenjumpplus.com
友人から途中まで借りて読んだことを思い出した(月日は移ろい、その友人は今では衆議院選挙に立候補している…)。なお、囲碁のルールは理解できていない。

杉谷庄吾【人間プラモ】『映画大好きポンポさん』

comic.pixiv.net
映画化を知り、改めて読み直した。

日渡早紀「ぼく地球シリーズ」

たまに「ぼくの地球を守って」を読みたくなることがあり、それを機に続編を一気読みした。続編が継続できる構想力が凄い。

吾峠呼世晴『鬼滅の刃』

読め読めと言われて読まぬ天の邪鬼を斬る

松本大洋『東京ヒゴロ』

漫画編集者が自らの信念に基づき漫画家に声を掛けて雑誌を作ろうとしている。

荒木飛呂彦『ジョジョリオン』

完結に合わせて再読した。また、杜王町が舞台となる第4部も再読した。東日本大震災を経た杜王町を舞台に、記憶喪失という形で系譜や血脈を受け継がない主人公が活躍する本書は冒頭より「これは呪いを解く物語」であるとテーマを掲げる。系譜や血脈は因果や呪いとして示され、登場人物たちは因果や呪いに束縛されつつ抗う…と理解しているものの、ロカカの実やスタンド能力を含め、第4部や第7部の内容も織り込んでいるため、抽象化して説明することが難しい作品だと思う。

諫山創『進撃の巨人』

完結に合わせて再読した。ふと思ったが、良し悪しは別として上述した「ジョジョリオン」が抽象化することが困難な複雑な物語であるとすれば、「進撃の巨人」はパズル的な複雑な物語であると言えるかもしれない。

ブッチャーU(漫画)、ムンムン(原作)、水龍敬(キャラクター原案)『せっかくチートを貰って異世界に転移したんだから、好きなように生きてみたい』

エロ有りファンタジー有りロボット有りのてんこ盛り。

ボーンシリーズ

友人の勧めを受け『ボーン・アイデンティティー』から始まるボーンシリーズを観た。

主人公ジェイソン=ボーンが活躍する作品は『ボーン・アイデンティティー』『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』『ジェイソン・ボーン』となる。『ボーン・レガシー』はスピンオフ的作品でジェイソン=ボーンは登場しない。
2作目の『ボーン・スプレマシー』のモスクワのカーチェイスのアクションが非常に良かった。
5作目の『ジェイソン・ボーン』はCIAとビッグテックとの関係が描かれており興味深い。
本作におけるCIAはプロジェクトの露見を阻止するためにプロジェクト関係者を全員殺害するという行動を取りがちで恐ろしかった。CIAは政局や担当者の属人性によってプロジェクトの成否や可否が決定するといったことを改めて欲しいと思った。

『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』

奈倉有里著『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』を読んだ。

本書は著者のロシア留学を綴った自伝的なエッセイ集となる。久々に読書の喜びを感じたお勧めの一冊だ。ロシアと文学の世界がまばゆく、時に薄暗く活写される。著者の文学に対する意欲的な姿を通じて、気が付くと読書や大学の講義に取り組んでいた若い頃のことを思い出した。本書に感化された捏造の記憶かもしれないが…

著者は高校時代からロシア語を自主的に学び、高校卒業後にロシアのペテルブルグに渡ったという。本書は著者がロシアに渡り、ロシア国立ゴーリキー大学を卒業するまでが、ロシアの詩、小説、歌謡曲等の紹介と共に描かれる。また、チェチェン紛争、ウクライナ情勢等、過去から現在のロシアの世情も描かれている。なお、著者は大学卒業後、東京大学大学院に進学しており、進学後は沼野充義を師事していたようである。

本書や「プーチンのユートピア」を読んでいるとロシアに関して語ることが恐れ多いと恐縮する。他方、文学や映画等を通じて一端に触れることならできるかもしれない。

アルカジー兄弟の作品を読んできたため、著者がボリス=ストルガツキー翻訳の芥川龍之介の「芋粥」を大学教授に紹介するところでニンマリした。

2021年の音楽

今年よく聴いたアルバムを挙げる。

Cleo Sol『Mother』


7トラック目「Don't Let It Go To Your Head」のLo-fi Hip Hop的なアコースティックのミニマリズムが心地良い。

Amaro Freitas『Sankofa』


1トラック目「Sankofa」の繰り返されるフレーズが美しい。

Lisa Lerkenfeldt『A Liquor Of Daisies』


どこか遠い異国のようでありながら友人のこだわりのダイニングルームにいるような親しみを想起させる約40分の小宇宙的音景。

2021年12月の音楽

Adrian Knight『Pleasure Center』


Jana Rush『Painful Enlightenment』


Joseph Shabason『The Fellowship』


Alba『MAUGLI』


Double Geography『Flights』


Tarentel『The Order of Things』


Brett Naucke『Mirror Ensemble』


hikaru yamada and metal casting jazz ensemble『moon』


Yosuke Tokunaga『9 MEZZOTINTS』


Will Long『Long Trax 3』


Will Long『Violet』


Will Long『Turquoise』

2021年12月26日/投影

先日の日記において以下のように記した。

昨今の事件において、加害者は死刑になるために人を殺そうと思ったと動機を語る。これらに鑑みると、加害者は自殺を断念した上、殺人や事故等の突発的な被害者になることを想定しておらず、自らを死に至らしめるのは法制度だけだと考えていることになる。当たり前だが横暴で勝手な考えである。

しかしながら結論は安易で考えを上手く表現できていない。紋切り型の定型句に思考の展開を落とし込んでいるだけのようだ。

ここで思い浮かぶのは投影の原理である。投影の原理の具体的な例はこのようなものである。
「私は友人が嫌いである。しかしながら友人を嫌うことは良くないことである。よって友人が私を嫌っていることにする」
これは次のように言い換えられる。
「友人は私を嫌っている。故に私は友人が嫌いである」
「私」は友人が嫌いな理由を「私」ではなく外部である友人にあるとすることで精神の均衡を維持している。
投影は防衛機制の一種とされており、ある問題の根本の原因を自分ではなく第三者に原因があるとする思考展開である。

投影の原理を加害者の動機に端的に当てはまる。
「私は死にたい(自殺)。しかし自殺は良くないことである。よって私は殺される」
この時点でそもそも自殺が良くないことであるという考えに無理があるように思う。むしろ、自殺ができない故に殺人が展開されている。また実際にそのような報道を読んだことがある。加えて、自殺を前提に殺人が許容されている節もある。この点が以前の日記の通り横暴で勝手な考えだと思う原因なのだろう。そのため、以下のように修正する。
「私は死にたい(自殺)。しかし自殺をすることができない。よって私は誰かに殺されることで死ぬ」
しかしながら、現実に「私」を殺してくれる人はいないため、次の論理が展開されると思われる。自殺が第三者の殺害に転換され、何故か自らの死の達成のために第三者の殺害が許容されてしまう。そもそも自殺が前提ではなく殺人を許容するために自殺が前提とされている可能性もある。
「私は誰かを殺す。誰かを殺すことによって私は死刑になる」

これらの通り、投影の原理に加害者の論理展開を追うのは難しいようである。端的に展開することで複合的な要因が無視される。上記の論理的整合性も危ういと感じる。しかしながら、自殺を前提とすることで殺人が許容され、目的が自殺から殺人に転換されることは往々にしてあるのではないだろうか。

2021年11月の音楽

Biosphere『Angel's Flight』


Ibukun Sunday『PSALM006: The Last Wave』


Clarice Jensen『Identifying Features』


NEW MEXICAN STARGAZERS『Highway Dreamscape』


Bremer McCoy『Natten (The Night)』


Ayako KATO『昔 mukashi』


Fabiano do Nascimento『Ykytu』


LIGHT LAYER (HIROSHI MINAMI / KAZUKI ISHIUCHI)『Looking North from South』


HIROSHI MINAMI/EIKO ISHIBASHI『GASPING_SIGHING_SOBBING』


Mark Tester『Oblivion Rhythms Revisited』


Music For Sleep『Decades』


Tatsuya Yoshida & Risa Takeda『THEISM』


Tatsuya Yoshida & Risa Takeda『NUYODIN』

2021年11月21日/コロナ禍における政治について

コロナウイルスに関してはっきりとした認識を持ったのが何時頃になるのか今となっては憶えていない。メールやSNSのやり取り等を確認する限り、2020年1月時点で私は今のような現状になるとは全く考えていなかった。当然ながら脅威という認識も無かった。おそらく2020年2月後半、割と唐突と思料された小中高校等の休校の処置の報道がターニングポイントになると思う。…と言う文章を2020年4月23日に残している。個人的なコロナウイルスの記録を残そうとしたものの、結局書き継ぐことは無かった。その後に西田亮介の『コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か』(刊行:2020年7月20日)を読んでいるが、起きた出来事の時系列すらほぼ忘れている状況であった。

さて、未だ続くコロナウイルスの影響の中、2021年10月31日に第49回衆議院総選挙が実施された。私は場当たり的な政府のコロナウイルスの感染症対策に怒りがあり、当然ながら選挙の結果に反映されるだろうと考えていた。しかしながら、結果的には立憲と共産が議席を減らした一方、自民と公明は議席を維持、維新が座席を増やすという状況となり、民意は非常に冷静だった。SNSのエコーチェンバー現象の中で勘違いをしたのは私だった。もちろん、個別具体的にみればベテラン勢の落選等、前向きに捉えることができる変化も見受けられたと思う。

政治の利益誘導の対象とならない人々が起こし得る行動は何か?その問いに一足飛びで暴力を想像する。断絶された個人が起こし得る暴力は自殺だろうか?昨今の事件において、加害者は死刑になるために人を殺そうと思ったと動機を語る。これらに鑑みると、加害者は自殺を断念した上、殺人や事故等の突発的な被害者になることを想定しておらず、自らを死に至らしめるのは法制度だけだと考えていることになる。当たり前だが横暴で勝手な考えである。

…等と考えた。こうやってぼんやりと考えていることを列挙していくと、関係性があると思われていることが、特段の論理的な繋がりを持たないことが判る。

プーチンのユートピア

ピーター=ポマランツェフ著、池田年穂訳『プーチンのユートピア 21世紀ロシアとプロパガンダ』を読んだ。
原題は「Nothing is True and Everything is Possible」となり、本書では「みんな嘘だし、何でもありさ」と訳されている。

2021年1月にロシアの野党主導者であるアレクセイ=ナリヌワイがプーチン宮殿に関する動画を公開した。


プーチン宮殿で思い出したのは「億万長者サッカークラブ」で知ったロシアの新興財閥を指すオルガリヒであった。


なお、その後にアレクセイ=ナリヌワイはロシアに戻り、刑務所に収監されることになったが、2021年10月20日、EU議会は人権分野の活動を称えるサハロフ賞を授与した。
www.europarl.europa.eu


SNS上でポピュリズムに関する文献一覧を知り、書籍を吟味していたところ、本書を推薦している歴史家のティモシー=スナイダーを知った。
www.tkfd.or.jp


上記の経緯のなか、SNSで本書を知り、ポピュリズムに関する書籍と共に本書を手に取ることになった。
本書の概略は出版社の特設サイトを読むと良い。
www.keio-up.co.jp


ロシアの政治に関して考える時、思い出すのは以下の記事のことである。
bullotus.hatenablog.com
なお、上記番組の概要は以下の通りである。
www.nhk.or.jp


結果的に民主主義を確立するまでの代替としてのプーチンは民主主義に取って代わってしまったようである。上述の野党の主導者であるナリヌワイは法を逸脱する権力を持ったプーチンを前に活動することもままならない。ここで得る教訓は、判りきったことであるが長期的に権力を手に入れた者は腐敗することである。そして、ここが特に大事だと思われるが、有能なリーダーであっても民主的な手続きを経ずにその権力を得たり、維持したりした場合、その権力を民主的に取り上げる仕組みが必要であるということである。この点に関しては権力者の取り巻き等の良識が問われる部分もあると思われる。少なくとも、現在のロシアはプーチンによって、プーチンに権力が集中し、その他の選択肢が台頭する余地がなくなっている。
例えば、その実例として、以下の記事はかなり強烈な印象を受けるのでは無いだろうか?
wired.jp

『人生ミスっても自殺しないで、旅』

諸隈元著『人生ミスっても自殺しないで、旅』を読んだ。

私が著者を知ったのはつい最近のことだ。Twitterで諸隈元シュタインを名乗り、ヴィトゲンシュタインに関して詳細に綴っていた。アカウント名から胡散臭い印象を抱いたものの、その内容はヴィトゲンシュタインに並々ならぬ興味が無ければ知り得ないものであった。そんな著者が初の著書である本書を発表するという。興味を惹く題名に刊行直後に本書を手に取った。

本書でも呼称に関して言及されているが、ヴィトゲンシュタインとタイプするとウィトゲンシュタインがサジェストされる。本書はヴィトゲンシュタインという呼称に拘っているのだが、私が学生時代にヴィトゲンシュタインを知った時、果たしてヴィトゲンシュタインとして知ったのか、ウィトゲンシュタインとして知ったのかは憶えていない。当時、分析哲学に興味を持ち、ヴィトゲンシュタインの「論理哲学論考」を読んだ。私は特に入門書等を読むこと無く「論理哲学論考」に挑んだ。無謀なことだが当時は割とよくしていたことだった。最後まで読み切ることはできたものの、難解さと数学や記号論理学の素養が無いことを理由に分析哲学に対する興味を失ってしまった。本書の読了後、著者とTwitterでやり取りをした上で、過去のツイートを確認したところ、「論理哲学論考」を読んでその後に全くヴィトゲンシュタインに手を付けなくなることはよくあることだと知った。私は正に初学者の失敗をしていた訳である。なお、著者によれば、ヴィトゲンシュタインの入門書は野矢茂樹と古田徹也の著作が良いとのことである。ちなみに大学の哲学科の教授や講師は分析哲学の話を振ると割とつまらなそうなリアクションをすることが多かったと思う。なお、西田幾多郎を専門とする教授が京都大学の哲学科は分析哲学の牙城となっていると話していた(10年以上前の話である)。

著者はヴィトゲンシュタインを私淑しており、大学卒業後、アルバイトをしながら、ヴィトゲンシュタインの「論理哲学論考」を小説にすることに打ち込む。小説を書き始めて3年目の日記には二十代をヴィトゲンシュタインに賭け、結果がでなかったら「自殺しよう」と記していたという。7年を費やして書き上げた「完全小説論考」は文芸誌の新人賞の二次選考を通過するも落選してしまう。そして、お先真暗の中、著者は欧州へ独り旅に出る。本書はその旅の記録である。

著者の欧州独り旅は自殺への期待が仄めかされており、死に場所を探す旅であることが示唆される。しかしながら、自殺への思いや著者の思いは瞬く間に移ろって行く。過去を振り返って書かれているため、旅の工程も前後していく。度々表れる文末の「~である。では無い」の両論併記はベケットの文体を模したというが、考えと感情の瞬く変遷と矛盾なのだろう。読んでいる私は何も理解できなくなり、さて困ったと思いながら、理解しなくても良いかと開き直り、著者の旅を追った。よくよく考えてみると、若い旅人の足跡を追うのは沢木耕太郎の「深夜特急」以来だったのではなかろうか?

著者はその後に文芸誌の新人賞を受賞し、現在は法律事務所のアルバイトをしながら執筆活動を続けているとのことである。

本書はKindleで刊行されていなかったため、本屋に赴いて購入したが、本のデザイン等も良く、今までKindleで済ませていたことに損をしたような気持ちになった。

タイタンの妖女

カート=ヴォネガット=ジュニア著、浅倉久志訳『タイタンの妖女』を読んだ。

訳者の新装版の刊行に寄せてにでも触られているが、10年以上前に爆笑問題の太田光が本書をテレビ番組で勧めていた。おそらくこれが本書を読んだきっかけになる。このタイミングで読んだ理由はKindleでセールされていたからだ。過去に著者のスラップスティックを読んでいるようだが意味の無い感想しか残っていなかった。なお、私は著者をSF作家として認識していたものの、訳者の解説によれば、戦争小説である「スローターハウス5」を以てアメリカ文学の代表的な作家として知られているとのことである。

本書は滑稽小説や風刺小説になるのだろう、登場人物たちは割と適当な設定で訳も判らず地球、月、火星、時間等曲率漏斗(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)を行き来する。そして、最後に登場人物たちの運命を左右した理由が明かされる。なお、爆笑問題の太田光は本書を勧めるにあたり、この理由を概ね説明していた。そのため、その理由が明かされた時に驚きや新鮮さは無く、若干興が削がれた気がする。おそらく、知らない方がそれなりに楽しると思うのでここでは詳細に触れない。

本書の適当な設定を読み進めるのは苦痛ではあった。しかし、その適当な設定も、本書の最後に示される理由に鑑みると、ある目的を達成するための急ごしらえのものと捉えれば、本書が滑稽小説に落ち着くことも理解できる。災害や戦争の実態を調べた時、その悲惨さと比較して浅薄で安易な判断が幾度も決定されていることに、悲劇性よりも喜劇性を見出すのはよくあることだ。

2021年9月の音楽

Cleo Sol『Mother』

令和3年9月はCleo Sol『Mother』のみしか購入して聴いたものは無かった。9月のbandcampFridayに合わせて楽曲を購入しようと考えていたものの、結局週末の疲労に見舞われ、購入に至らなかった。そんな中、Twitterで絶賛されていたCleo Sol『Mother』はその素晴らしさに勢い購入しており、結果的に集中的に聴くことになった。タイムラインのリンク先をクリックして流れ始めたのは7トラック目の「 Don't Let It Go To Your Head」…アコースティック・ミニマリズム・スロー、ローファイヒップホップ的と言って良いのかは不明だが、音に身を任せて安寧を得てしまった。今となっては何度も聴いてその感慨を得ることは叶わない。そして、それはそれで構わないことだと思う。

2021年8月の音楽

Shuta Hiraki『絹雲 Cirrus』


Shuta Hiraki『Fossils And Vein』


Emma-Jean Thackray『Yellow』

2021年7月の音楽

HIROSHI MINAMI,KAZUKI ISHIUCHI『LIGHT LAYER』


Amaro Freitas『Sankofa』


Akihiko Matsumoto『Akihiko Matsumoto Ambient / Noise Works for YouTube』


Akihiko Matsumoto『Akihiko Matsumoto Works for Wave/Hardwave』


Sam Prekop『In Away』