メディアと自民党

西田亮介著「メディアと自民党」を読んだ。

私が何を思って本書を手に取ったのかは3年前になるためすっかり忘れてしまったが、本書は題名の通り、メディアと自民党の関係を解説した本である。例えば、ある国政選挙の際、自民党は世耕弘成を中心にメディア対策を蓄積して内製化しており、選挙では各候補者に配られたiPadから毎日演説の際にネタ等が提供されていたという。

現在の自民党のメディア戦力はどのようになっているのか考える時、ファッション誌と自民党のコレボレーション、自民党の#自民党2019プロジェクト、首相のInstagram等に話題に挙がったことが記憶に新しい。また、他党でも国会議員がYou tubeを開設している。これらは政治に対するイメージを刷新するのには有効であると思われるが、イメージ戦略が先行し、その内実が蔑ろにされている気もする。実際のところはどうなのだろうか?

同年代の同僚と選挙の話になったことがある。ちょうど選挙の時期だったのだと思う。同僚は「選挙に行っても仕方が無い。選挙に行って何か変わることがありますか?」という。確かに何かが変わったという認識をミクロ的な観点から得られたことは無いような気がする。私は同僚の話に適当に相槌を打った。最近、その同年代の同僚が新居を購入した。しかしながら、増税前の家電の購入等はしなかったという。また、奥さんがスーパーの野菜の値段を細かくチェックしているともいう。そういった話を聞きながら、ミクロ的ではなくマクロ的な観点から見れば、選挙に行っていれば消費税が増税されることは無かったのではないか、眉唾ではあるが野菜の値段を気にすることも無かったのではないかと思いがよぎる。

メディアと自民党 (角川新書)

メディアと自民党 (角川新書)

2019年9月の音楽

今月は今年前半に聴いた音楽の再視聴をしたというところ。

Celer『How could you believe me when I said I loved you when you know I've been a liar all my life』


tower.jp
アメリカ人の音楽家で現在は日本在住のCelerことWill Longのアルバム。
ドローンを検索した際に上記の記事で知る。


Ortance『Escargot』

Escargot

Escargot

  • Ortance
  • J-Pop
  • ¥2400
メンバーは坪口昌恭、西田修大、大井一彌。
私はRadioheadのカバーで知ったつもりでいたがFlying Lotus『L.A.』の全曲カバー等で知られているという。


Chick Corea, Dave Holland, Barry Altshu『A.R.C.』

A.R.C.

A.R.C.

  • バリー・アルトシュル, チック・コリア & デイヴ・ホランド
  • ジャズ
  • ¥1600
喫茶店の店主曰くまだ偉くなっていない頃のチック=コリアとのこと。確か東京JAZZに来日する云々という話の流れで聴かせてもらったものである。大抵、こういう時は一曲目で評価をしてしまうものだが、やはり何か違うということは素人にも明らかだった。レーベルはECM。


Dollar Brand『African Piano』

上記に続き、こちらも喫茶店で聴いもの。繰り返されるフレーズと跳ねる躍動する音に生きている心地がする。レーベルはECM。

Nik Bärtsch's Ronin『Awase』

Awase

Awase

  • ニック・ベルチュ
  • ジャズ
  • ¥2100
体感的に表現するとシャリシャリとした感じは薄めでモワーンとしている。すごく良いです。レーベルはECM。

『羊の歌―わが回想』『続 羊の歌―わが回想』

加藤周一著『羊の歌―わが回想』『続 羊の歌―わが回想』を読んだ。

テニスの練習を一生懸命したとか、日本人女性の付き合いがあったとか、外国人女性とも付き合ったとか、海外を放浪していた…といった断片的な記憶しか残っていない。

最近、山田風太郎の「戦中派不戦日記」を読み終えたのだが、本書と比較すると、日記とエッセイという体裁の違いもあると思われるが、世界観が全く異なる印象を受ける。なお、偶然であるものの、2人共医学を志し、肋膜炎により兵役を免除になったという一致がある。

以前も説明した通り、私が加藤周一を意識するようになったのは高校生の時に国語の教科書に掲載されていた「日本の庭」が面白かったことによる。また、朝日新聞で連載されていた夕陽妄語を読んでいた記憶がある。本書内で触れられていたかは忘れたがモスラの原作者である中村真一郎、福永武彦とも親交があったと言う。

羊の歌?わが回想 (岩波新書)

羊の歌?わが回想 (岩波新書)

続 羊の歌?わが回想 (岩波新書)

続 羊の歌?わが回想 (岩波新書)

奥泉光の諸作品を読む

奥泉光の諸作品を読んだ。
読んだ作品の一覧は以下の通りとなる。

バナールな現象 (集英社文庫)

バナールな現象 (集英社文庫)

モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)

モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)

黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2 (文春文庫)

黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2 (文春文庫)

鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)

鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)

新・地底旅行

新・地底旅行

『吾輩は猫である』殺人事件 (河出文庫)

『吾輩は猫である』殺人事件 (河出文庫)

神器〈上〉―軍艦「橿原」殺人事件 (新潮文庫)

神器〈上〉―軍艦「橿原」殺人事件 (新潮文庫)

神器〈下〉―軍艦「橿原」殺人事件 (新潮文庫)

神器〈下〉―軍艦「橿原」殺人事件 (新潮文庫)

虫樹音楽集

虫樹音楽集

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

ビビビ・ビ・バップ (講談社文庫)

ビビビ・ビ・バップ (講談社文庫)

奥泉光の作品を知ったのは中学生の頃になるのだろうか?新聞の週末の書評欄に「鳥類学者のファンタジア」がジャズに関する小説として取り上げられていた。題名に謳われるようにファンタジーなのだろう等と考え、それから数ヶ月か数年の後、図書館でハードカバーを手に取ったことまでは覚えているが、結局読むには至らなかったのだと思う。当然ながら、当時(今もだが)鳥類学者がアルト・サックス奏者のチャーリー=パーカーを指すことも知らなかった。

その後、奥泉光がフルートを吹くことを知る。また、「対テロ戦争株式会社―「不安の政治」から営利をむさぼる企業」「戦争サービス業―民間軍事会社が民主主義を蝕む」等の書評を読み、現代の戦争に関することを小説の題材にしているのかと思ったこともある。

それから十数年経過して、私は最近のジャズを自ら聴くようになった。そして奥泉光がジャズを題材にした「ビビビ・ビ・バップ」を発表することを知った。ちょうど無職だったこともあり、これを機に一気読みをするかと立ち上がったのが3年前の話だ。

「バナールな現象」と「モーダルな事象」は今となっては印象が薄い。しかしながら「モーダルな事象」に登場した桑幸とその生徒の活躍が描かれる「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」シリーズにはすっかりハマってしまった。

「鳥類学者のファンタジア」、おそらく新聞紙上の連載を読んでいた「新・地底旅行」「『吾輩は猫である』殺人事件」を読み、それぞれの作品に同じ設定が仕込まれていることを知るに至る。

「神器」は前回の記事で触れたメガノベル。平野啓一郎の「決壊」と共に新潮で連載されていた。

「虫樹音楽集」は短編集でジャズに関する物語があったことを覚えている。

「東京自叙伝」は「そんなつもりは無かったのです」「仕方無かったのです」とあらゆる出来事が締めくくられるグロテスクな作品。無責任で反省の無い人々の精神性が明らかにされているように思う。

「シューマンの指」はベートーヴェンのピアノソナタが話題に挙がっていたように思う。

「ビビビ・ビバップ」は「鳥類学者のファンタジア」の設定を継承した作品となっている。近未来SF的な話で割と何でもありのかなり面白い小説である。

珈琲東山/まとめ

当ブログで最も読まれているのは友人が営んでいる自家焙煎珈琲「珈琲東山」の記事となっている。
嬉しい反面、わざわざ検索までして友人の喫茶店のことを調べようと思う人々には最も良い情報に触れて欲しいという気持ちがある。
そのため、現状のネットで確認できる情報をまとめることにした。



www.facebook.com
珈琲東山のウェブサイト。店主が記事を投稿しているため、最新の情報はここから確認しよう。フェイスブックのウェブサイトになるため、セキュリティチェックが必要と表示されているが、問題無くサイトにリンクされています。



www.porta-y.jp
山梨県内の情報を届けるポータルサイトPORTAにおける珈琲東山の紹介。
店内の様子や雰囲気がよく分かる。地図で駐車場の位置が確認できる心配りも嬉しい。
ちなみに山梨県・公益社団法人やまなし観光推進機構が提供する「富士の国やまなし観光ネット」にもPORTAが提供している珈琲東山の記事がある。



www.rubaiyat.jp
店主が珈琲東山を開業するまで働いていたルバイヤートのワインで知られる丸藤葡萄酒工業のブログ記事。
記事にもある通り、珈琲東山ではルバイヤートのワインを多く取り揃えている。


www.instagram.com
店主の後輩の珈琲東山に関する素敵なinstgramの投稿。
上記の記事と比較すると使用されているソーサーに違いがあることに気が付く。





当ブログの記事。
bullotus.hatenablog.com
bullotus.hatenablog.com

われらが歌う時

リチャード=パワーズ著、高吉一郎訳「われらが歌う時」を読んだ。

はっきりと憶えていないのだが、2000年代後半に多くのメガノベルが発表されたと記憶している。私のメモには以下の作品が挙げられていた。

  • 平野啓一郎「決壊」
  • 鹿島田真希「ゼロの王国」
  • 古川日出男「聖家族」
  • 町田康「宿屋巡り」
  • 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日」
  • 桜庭一樹「ファミリーポートレート」
  • リチャード=パワーズ「われらが歌う時」

2000年代後半、私は大学を卒業し、会社員にはなったものの、すぐに会社を辞めて…というような経過を辿っていた。そして10年の月日を経た今、その時の心情を思い出すことも難しくなっている。

上記の作品でリアルタイムに読んだ作品は平野啓一郎「決壊」のみとなる。その後、暇があれば読もうと考えていたものの、数年が経過していたという訳である。たまたま仕事を辞めた3年前、暇にかこつけて唯一読み終えたのが「われたが歌う時」だった。
Amazonの内容紹介は以下の通り。

1961年、兄の歌声は時をさえ止めた―。亡命ユダヤ人物理学者のデイヴィッドと黒人音楽学生のディーリアは歴史的コンサートで出会い、恋に落ちた。生まれた三人の子供たち。天界の声を持つ兄ジョナ、兄の軌跡を追うピアニストの「私」、そして、空恐ろしいまでに天賦の音楽の才能を持つ末妹ルース。だが、音楽で結ばれ、あまりに美しい小宇宙を築き上げた家族は、ある悲劇を機に崩壊することになる…。妙なる音楽の調べとともに語られてゆく、30年代を起点とした過去と50年代を起点とする二つの過去。なぜ二人は恋に落ちたのか。子供たちは何を選ぶのか。通奏低音のように流れる人種問題、時間の秘密。あの日に向けて、物語は加速してゆく。巨大な知性と筆力により絶賛を浴びてきたパワーズの新境地、抜群のリーダビリティと交響曲にも似た典雅さ。聖なる家族のサーガが、いま開幕する。全米批評家協会賞最終候補作。プシュカート賞/ドス・パソス賞/W・H・スミス賞ほか受賞。

上記の通り、アメリカの歴史とある家族の歴史が描かれている。もちろん、3年前に読んだということもあり、詳細は忘れている。しかし、リチャード=パワーズの作品を読むのは初めてのことだったにも関わらず、非常に面白かったことははっきりと憶えている。

われらが歌う時 上

われらが歌う時 上

われらが歌う時 下

われらが歌う時 下

シン・ゴジラ

庵野秀明監督作品「シン・ゴジラ」を観た。

3年前に映画館で2度観た。また脚本を読んだ。本記事を書く前に改めて脚本を読み、パソコンのモニターで鑑賞した。既に本作公開後、「GODZILLA」(アニメーション3部作)、更にアメリカ版ゴジラの2作目「ゴジラ キングオブモンスターズ」(2019年)が公開されている。なお、どちらも鑑賞はしていない。仕事が忙しかったのもあるのだろうが、どうにも映画館に脚を運ぶ気がならなかった。というよりここ3年程、そもそも映画館にほとんど行っていないのだった…

本作を3年前に観た時、非常に興奮したことを憶えている。エヴァンゲリオンの劇伴楽曲「EM20」とヤシオリ作戦の名称から、なるほど、エヴァの監督が作るゴジラはヤシマ作戦になるのかと膝を打った。

初代「ゴジラ」に対するオマージュやリスペクトを嬉しく思う一方、本作から思い出された作品は、舞台が東京湾と東京を舞台に繰り広げられていることもあろうが、「機動警察パトレイバー 2 the Movie」だった。
本作ではゴジラ対策のために設置された若き政治家矢口蘭堂率いる「巨大不明生物特設災害対策本部」(巨災対)の奮闘が描かれる。しかし、本作の主軸となる戦いの構図は「ゴジラVS巨災対」では無く、厳密には「ゴジラの謎を解明して失踪した牧悟郎元教授VS巨災対」である。そして矢口蘭堂の推測によれば、牧吾郎元教授はゴジラ対策のために日本に3度目の核兵器を落とすのか、牧吾郎元教授の残した謎を解いて解決するのか(「ヤシオリ作戦」)、予測していたのではないかという。この物語の構造に鑑みると、どうしても「機動警察パトレイバー 2 the Movie」を意識してしまう。

政治家や官僚、自衛隊、更にアメリカ等が一丸となって戦う姿には胸が熱くなる。一方、本作で描かれるのは、旧態依然とした日本の政治の世界やお役所仕事でもある。本作の功罪があるとすれば、旧態依然としたものがまるで新しい有効なもののように思えてしまうところではないか。現実を見れば、間違い無く日本経済と国民に大きな傷を残すであろう消費税増税が政治家や官僚の手によって実施されるのである。ここで環境省自然環境局野生生物課長補佐(後に課長代理)尾頭ヒロミの言葉を引用しよう。

「・・・・・・ゴジラより怖いのは、私たち人間ね」


本作で一番の衝撃を受けたのは、現実路線を取る政治家の赤坂秀樹が終盤に語る以下の台詞である。

「せっかく崩壊した首都と政府だ。まともに機能する形に作り替える。次の臨時政府で、巨大不明生物関連法案の成立と東京復興の目処がたてば、解散総選挙だ。都の避難民が360万人いる瀕死の日本を立て直す、新たな内閣が必要だからな」
「スクラップアンドビルドで、この国は伸し上がって来た。今度も立ち直れる」

旧態依然とした日本という国は、ゴジラのような大災害と多数の犠牲者がいなければ、作り変えることができない。一応、エクスキューズがあるものの、逆説的にそう言うのである。

その他、ゴジラが何故東京湾に出現したのか、何故東京を目指したのか、タバ作戦における武蔵小杉駅のタワマンを崩壊させたい、ゴジラの放射線流で霞が関と永田町は炎上したものの皇居の森は無事だったようだ、背中から放射線流、最初にZARAはどこは聞き漏らした、高橋一生が良く騒ぐ、エヴァ量産型も運んでいたアメリカのステルス戦闘機が格好良いけど随分高いらしいですよ等、色々思うところがあった。

以上、映画館を観た時に感じた所感である。この所感を書くために実は3年前から本作に対する批評等はほとんど観ていない。この記事を書きながら、色々と検索をしたが、既に多くのことが言及されていたようだ。

シン・ゴジラ

シン・ゴジラ

シン・ゴジラ Blu-ray2枚組

シン・ゴジラ Blu-ray2枚組

ジ・アート・オブ シン・ゴジラ

ジ・アート・オブ シン・ゴジラ

シン・ゴジラ音楽集

シン・ゴジラ音楽集

2019年8月の音楽

今月はサブスクリプションのサービスを利用していた際に購入をしていなかった音源を聴いた。
また、木澤佐登志著「ニック・ランドと反動主義」で取り上げられていたVaporwave(ヴェイバーウェイブ)を聴いた。なお、主に参考にした記事は以下になる。
obakeweb.hatenablog.com
essential-vaporwave.herokuapp.com

小埜涼子 NEWDUO series 11~14





未だ集中して聴けていない状況。

Ryorchestra『DMK』


Ryorchestraは名古屋を中心に活動中のZeuhl系アヴァンギャルド集団。小埜涼子参加。コーラスワークと奇怪なヴォイスが印象的。


Shuta Hiraki『Not Here, But There』


誘眠のための音楽。地下鉄に乗る際、ノイズキャンセリング機能があるカナルタイプのイヤフォンが必須な状態であるが、外部の音響に取り込まれながら更に本作を聴く時、二層の空間の中で意識が明確になり、遠のいて行く。


Noël Akchoté『Gabriel Fauré – Requiem in D minor (Op.48, 1887-1890) (For Dobro)』




上記のツイートで興味を覚え視聴。クラシックギター等と比較すると派手さはなく瞑想的である。ディスコグラフィーからフォーレを選んだのは、私がフォーレくらいしか判らなかったからである。

2814『新しい日の誕生』


Vaporwave(ヴェイバーウェイブ)関連。題名から完成度が高そうと思われた2814「新しい日の誕生」を聴いた。上記の記事によれば、かなりの人気作らしい。

猫 シ Corp.『NEWS AT 11』『OASYS ♁ 博物館』『Palm Mall』『HIRAETH』





Vaporwave(ヴェイバーウェイブ)関連。お気に入りの曲は「NEWS AT 11」に収録されている「Evening Traffic」。

Kobayashi Yamato『商業的な仕事 1993 – 2004』


Vaporwave(ヴェイバーウェイブ)関連。チップチューン風の音楽かと思いきやそうではない。


Blank Banshee『Blank Banshee 0』


Vaporwave(ヴェイバーウェイブ)関連。ここまで整っていると特にジャンル分けに意味は感じない。


Shuta Hiraki『Afterwhile』


Shuta Hirakiの旧譜を聴く。自宅でドローンを聴いている時、周囲の音がドローンに溶け込んでしまうことがある。

rakish『Inverted Decay』



Shuta HirakiのInstagramの画像と共に聴くプロジェクトとのこと。

2019年8月19日/蒸気の波に行きつ戻りつ航海リゾート

木澤佐登志著「ニック・ランドと反動主義」で取り上げられていたVaporwave(ヴェイバーウェイブ)に興味を持ち、Bandcampを漁っている。この夏の暑さと体調悪化に適当な音楽を探していたのだが、ただのノスタルジア、適度な雑多さ、平面的な音響…聴き手に求められる解像度の低さが気分を落ち着かせてくれる。最初はアンビエントに分類されており、題名から完成度が高そうと思われた2814「新しい日の誕生」を聴いた(どうやらかなりの人気作らしい)。その後に前掲書でも紹介されていた、猫 シ Corp.「NEWS AT 11」「Palm Mall」、McIntosh 「Floral Shoppe」(但しネットで音源を直に聴く。音源は販売されていないらしい)、もう一度、猫 シ Corp.「OASYS ♁ 博物館」「HIRAETH」。加えてBlank Banshee「Blank Banshee 0」を聴いた。多分まだ聴くと思う。

勝田文がモーニングで山田風太郎著「戦中派不戦日記」を原作とした「風太郎不戦日記」の連載を始めた。月1連載らしい。楽しみである。勝田文が漫画化したジーヴスの翻訳者である森村たまきが「美しいものも美しくないものもおんなじ密度で力入れて描いちゃうんだね。」と評しており、なるほどと思った。良い機会だと原作を読み始めた。

2019年8月15日/愚直なドラムスと立ち尽くす中年

公共施設前の路上で立ち尽くす中年の夏。

8月半ばの午後9時過ぎの電車に乗り込むと虫取り網を座席の下に置いた少年と母親を見掛ける。そういえば休日の朝方にも公園で虫取り網を持った少年と母親が樹々を眺めていた。子どもが虫取りをしたいと言えば、虫取り網をどこかで購入し、虫取りの方法も調べ、野外に飛び出さなければならない。そんな事を考えて、自らの現状を笑う。

油汗、毛穴の黒ずみ、白いニキビ、たるんだ二の腕。知らぬ間に焼けた上腕と紺色の半袖シャツと汗染みのグラデーション…気が付けば夏の暑さに汗を流していた。

仕事で無駄足を踏み空しい。これはビジネスなのだから機会と費用の損失は埋め合わせをしなければならない、いち早く対策を講じなければならない等と言いながら、内心急ぐ事でもないと察しが付いているのは全く馬鹿げたことじゃないか?一杯の珈琲と一時間も掛からない時間で気分を変えることができそうなんだ。判るだろ?さぁ、さぁ、とりあえず、まず一杯だ。

店主が流した音楽は以下の通り。Ches Smithの愚直なドラムが気に入った。また、「Polish Jazz Vol. 4」の一曲目のピアノに耳を奪われた。

  • DAVID TORN, TIM BERNE, CHES SMITH「SUN OF GOLDFINGER」
  • The Andrzej Trzaskowski Quintet 「Polish Jazz Vol. 4」。

2019年。これは令和元年である。

絵巻物から飛び出した餓鬼。暗闇の中で弛んだ腹を叩き、鏡の前で白髪を抜く。

君の名は。

新海誠監督作品『君の名は。』を観た。

既に同監督の最新作「天気の子」が話題になっているなか、3年前に映画館で観た作品を記事として上げる状況に笑うしかない。なお、「天気の子」は未視聴である。

当時鑑賞した際、私は時間SF作品として楽しむことができた。また、本作を鑑賞して驚いたのはその結末である。これまで鑑賞した「秒速5センチメートル」や「言の葉の庭」は二人が出会うものの、最終的に結ばれることは無く、「ロマンチック・ラブの否定」が描かれていた(参照サイト『星を追う子ども』公式サイト/新海 誠 最新作)。

また、彗星が隕石衝突という災害として描かれていることも意外だと思った。宇宙や自然が叙情的なものとしてだけでは無く具体的な災害として表現されたのは、やはり、東日本大震災の影響なのだろうか?

登場人物たちには彗星落下という災害を回避した結果、叙情的な表現だけが残る。これによって叙情的な表現がロマンチック・ラブを否定していたというロジックである従来の作品から、叙情的な表現がロマンチック・ラブを肯定するというロジックへの転換が果たされる。「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」が現実的な作品としてロマンチック・ラブを否定していたとするならば、本作は時間SF(フィクション)を導入することによりロマンチック・ラブを肯定したのである。

鑑賞当時は複数の友人とヒットした理由について話している。当初、私は「広告に予算が掛かっていた」「ロマンチック・ラブの否定を辞めた」「謎解きがある」がヒットの理由ではないか等と考えた。また、最終的に友人とのやり取りの中で「普通の恋愛映画であり、一般人でも楽しむ事が出来る」「時間SF作品のため、普通の恋愛映画を観ない客層にも受け入れられた」という話に落ち着いた。

2019年6~7月の音楽

いまどきサブスクリプションサービスを使用しない人の音楽履歴。
最近は仕事にかまけて音楽を聴く時間が減った。
今年前半に聴いた作品の音源を購入して聴き直したという感じだった。

Brad Mehldau『After Bach』

After Bach

After Bach

  • ブラッド・メルドー
  • ジャズ
  • ¥1900

やはりバッハは素晴らしいのだが、聴いていると感極まり哀しくなる。
バッハがパイプオルガンを使用した即興演奏者だったという話はなるほどと思う。
本作後に発表されたブラッド=メルドー名義の「Finding Gabriel」も傑作とのことだが未聴。

スガダイロー『季節はただ流れて行く』

季節はただ流れて行く

季節はただ流れて行く

  • スガダイロー
  • ジャズ
  • ¥2400

note.mu
暦をテーマに毎月1曲ずつ一年を費やし作曲した作品群。
上記の柳樂光隆のインタビューは非常に面白く、スガダイローに惹かれる理由がよく判った。なお、スガダイロートリオの「公爵月へ行く」は未聴。

河野智美『The Spain』

河野智美/ザ・スペイン

河野智美/ザ・スペイン

  • アーティスト: 河野智美,アルベニス,タレガ,グラナドス,ファリャ,ロドリーゴ,デ・ラ・マーサ
  • 出版社/メーカー: アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト / ミューズエンターテインメント)
  • 発売日: 2019/02/13
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
ようやく聴いた河野智美の新譜。
前作のバッハの次はスペイン。
一曲目のアストゥリアスで引き込まれる。

珈琲東山/アイスコーヒーの淹れ方

令和元年5月末日、松本での仕事帰りに自家焙煎珈琲「珈琲東山」を再訪した。
bullotus.hatenablog.com


夏と言えば冷たいアイスコーヒー。今回は以前の記事で触れたアイスコーヒーの淹れ方を動画で紹介する。



珈琲東山のコーヒーはネルドリップ(「ネル」と呼ばれる布製のフィルターを使用してコーヒーを抽出する方法。ネルは「フランネル」の略)だが、アイスコーヒーのためペーパードリップ(紙製のフィルターを使用してコーヒーを抽出する方法)を使用している。最近は上記のシェーカーではないアイスコーヒーの淹れ方も覚えたとのこと。

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アイスコーヒー/シェーカー使用によるコーヒー表面の泡が口当たりをまろやかにしている

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アイスコーヒー/ミルクを使用。ミルクはこだわりの低温殺菌牛乳

夏の暑さに珈琲東山のアイスコーヒーを思い出し、飲んで涼みたいと思う今日この頃である。

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ネルドリップを終えた店主/基本的に気さくな方なので話し掛けると喜ぶと思います

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平日の営業時間が11:00~から12:00~になりました(令和元年5月末日時点)

自家焙煎珈琲 珈琲東山
〒405-0005
山梨県山梨市小原東72 イーストセルジュ2


bullotus.hatenablog.com

2019年5月の音楽

今月は新譜とジャズ喫茶で知った旧譜を聴く。AppleMusicは貧乏性を発揮して精神的に疲弊するため利用を終了した。今月はColin Vallon Trio の三部作をよく聴いた。本当に素晴らしいと思う。

Mark Guiliana『BEAT MUSIC! BEAT MUSIC! BEAT MUSIC!』

BEAT MUSIC! BEAT MUSIC! BEAT MUSIC!

BEAT MUSIC! BEAT MUSIC! BEAT MUSIC!

  • MARK GUILIANA
  • エレクトロニック
  • ¥1500

Christian Scott aTunde Adjuah『Ancestral Recall』

Ancestral Recall

Ancestral Recall

  • クリスチャン・スコット
  • ジャズ
  • ¥1500

Chick Corea, David Holland, Barry Altschul『A.R.C.』

A.R.C.

A.R.C.

  • バリー・アルトシュル, チック・コリア & デイヴ・ホランド
  • ジャズ
  • ¥1600

Lonnie Liston Smith & The Cosmic Echoes『Astral Travelling』

Astral Traveling

Astral Traveling

  • Lonnie Liston Smith & The Cosmic Echoes
  • ジャズ
  • ¥1500

2019年5月11日/冷静な生活

令和元年5月1日、皇居周辺の路上で警察車両を目にする。

職場で仕事をしている間に夜となった。雨は昼頃から翌日の深夜まで降り続けたようだった。

友人の喫茶店に赴く。帰宅中、電車内で子どもが大いに泣いていた。

高尾駅のホームの照明に虫が群がっている。

連休明、会社から仕事がキャンセルとなった旨の連絡が入る。訪問先に向かう途中だったため、下車して連絡を取ったところ、面談相手が体調不良だと言う。訪問先から謝罪と労いの言葉があり、別件の用事を先送りするため、問題無いと伝えた。

訪問先が観光地だったため、未だ連休が続いているような錯覚を覚える。晴れており風が気持ち良い。

電車に乗るとボックス型の4人座席で若い2人が惚気ている。その惚気ぶりに思わずニヤついてしまう。気持ち悪いおじさんになってしまったと思う。

喫茶店に赴きコーヒーを飲む。友人が喫茶店を開業したことを店主に伝えたところ、お祝いの言葉を貰ったため、友人にメールで伝えた。店主によれば東京JAZZにChick CoreaやKamasi Washingtonが来ると言う。調べてみるとSnarky Puppyも公演を予定していた。浅学な私に気を利かせてくれた店主はChick Corea「A.R.C.」を流してくれた。Nefertitti(ネフェルティティ)を初めて聴く。

再度、喫茶店に赴きコーヒーを飲む。Cecil McBee Sextet with Chico Freeman「compassion」、
峰厚介「ダグリ」 、Dollar Brand「African Piano」を聴いた。「ダグリ」の一曲目の序盤のピアノが美しい。演奏者を確認したところ、板橋文夫だった。

2日連続で電車内や駅ホームで口論する男性を見掛けた。連休明けの影響なのだろうかと考える。

訪問先へ向かう途中、あちこちの路線で電車遅延が発生していた。連休明けの影響なのだろうかと考える。

混み合う電車内で座席に腰を下ろし、行先を確認した。その時、ふと大学を卒業して10年経った事に気が付き、目頭が熱くなった。ここで何をしているのかという問いは、この10年を過ごした自分こそよく判っているのだった。

2度目の訪問先の道中に蛙の鳴き声を聴く。田に水が張られ稲の苗が整列している。一方青い小麦が穂を揺らしていた。