ソクーロフ の検索結果:

滅びの都

…てはアレクサンドル=ソクーロフが「ファウスト」で描いた真理の場所そのもののように読み取れる。しかし著者はどうやら世界の果てに辿り着いたとしても終わりの場所では無い事を示唆しているらしい。 本書はストルガツキー兄弟の「モスクワ妄想倶楽部」で青ファイルと呼ばれた原稿である。「モスクワ妄想倶楽部」の翻訳者である中沢敦夫によれば、本書は1970年代に執筆され完成していたという。捜査官となった主人公が赤い館でソ連指導者とチェスを指すというあからさまな描写や*1、ソ連という体制を、そして…

世界終末十億年前

…作はアレクサンドル=ソクーロフが邦題「日陽はしづかに発酵し…」として映画化しており、またストルガツキー兄弟も「蝕の日」と題して本作の映画シナリオを発表している。 尚、本書にはアルカジー=ストルガツキーによる自伝、深見弾による作品リストが掲載されている。世界終末十億年前―異常な状況で発見された手記作者: アルカージイストルガツキイ,ボリスストルガツキイ,深見弾出版社/メーカー: 群像社発売日: 1989/02メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を…

2014年3月26日

…あるアレクサンドル=ソクーロフであった。彼は官僚制とグローバリズムを人の手に余るものだと批判した。彼の映画に登場する歴史的な人物たちはシステムの前でただの人になる。昭和天皇は無力な一人の人間に、レーニンは惚けた老人に。人の手に余るものの上に君臨するプーチン、飼い馴らせない何かを飼い馴らせたように見せる姿。主人の手の震えと冷汗を、感じ、指摘しなければならない。「災害対策基本法」と題されたコピー用紙の束片手に眼鏡を額に掛け見入る中年男性。社交ダンスの動画をYouTubeで検索する…

ロシア映画傑作選

…督はアレクサンドル=ソクーロフ。 ロシアオペラ界の伝説のバス歌手シャリアピン。彼は国外公演を許可され、その後祖国に戻る事は無かった。彼の遺骨がフランスからモスクワに移され、彼の親類縁者の食事を映しながら、シャリアピンの残されたドン・キホーテを演じる姿等が挿入される。 という事も判らずに観たので面白くも何とも無かったのだが、判らなくても祖国に帰らなかった男の悲しみ、ノスタルジアを感じる事が出来るのがこの映画の素晴らしさか。 『ピロスマニのアラベスク』 セルゲイ=パラジャーノフ監…

権力者のアーキタイプ『ファウスト』

…た。アレクサンドル=ソクーロフ監督作品。 『ファウスト』はアレクサンドル=ソクーロフ監督作品の権力者4部作最終章という位置付けとの事である。 これまでに公開されたのは、アドルフ=ヒットラーを描いた『モレク神』、ウラジーミル=レーニンを描いた『牡牛座 レーニンの肖像』、昭和天皇を描いた『太陽』である。私は『モレク神』は未鑑賞であるが、レーニンの晩年を描いた『牡牛座 レーニンの肖像』、昭和天皇の煩悶する日々を描いた『太陽』を観れば、権力者を人として捉え直している事が判る。しかし、…

霧を通した朝日の如く―『太陽』

アレクサンドル=ソクーロフ監督『太陽』を観た。 20世紀の権力者を描いた四部作の一つであり、『牡牛座―レーニンの肖像』を観て以降、気になっていた作品だ。 今回は年末年始にGyaOで無料で公開されている機会を利用して観た。GyaOで観るのもどうなのとも思うのだが、PCのDVD再生機が調子悪いという事もあり、「この機会に」と思った。本作は、第二次世界大戦の日本、終戦前後における昭和天皇の日常を描いた作品だ。 昭和天皇をイッセー尾形、皇后を桃井かおり、侍従長を佐野史郎が演じている。…

チェチェンへ アレクサンドラの旅

…實重彦はこの足こそがソクーロフの撮りたかったものだという。アレクサンドラの旅とは、足に対する試練であるのだと。確かに劇中、アレクサンドラは交通機関を使用する際も、チェチェン人の家を訪ねる際も、人の手助けなしには、足がままならないのである。そして蓮實重彦は続けていう。この足の試練による緩慢さこそがアレクサンドラ、そしてソクーロフの寛容さを表すのだと。寛容さ、ここでいう寛容さとは何を指すのだろうか。アレクサンドラと孫との交流は、孫が度々駐屯地から出撃するために、断絶されている。ア…

新潮1月号 群像1月号

…から国籍、村上春樹論とその論争について。また水村美苗の『日本語が亡びるとき』について書かれていた。 宇野常寛の「母性のディストピア」もうついていけそうにない感じである。 蓮實重彦の「映画時評」はアレクサンドル=ソクーロフ監督の『チェチェンへ アレクサンドラの旅』を紹介していた。私は蓮實重彦の映画時評はなんかすごいものだと勝手に思っていたのだが、そうではなかった。今回のソクーロフは以前の作品より観やすいそうです。とはいっても『牡牛座―レーニンの肖像』ぐらいしか観ていないのだが。

ETV特集「ロシア・歴史は繰り返すのか〜亀山郁夫 “帝国”を読み解く〜」

…監督アレクサンドル=ソクーロフへの亀山郁夫のインタビューをチェックできたのは不幸中の幸いだった。途中から番組を観たので全体の内容をうまく把握できていないが、題名にある通り帝国つまり現在のロシア、大統領プーチンと次期大統領候補メドベージェフの強大な権力構造を、過去のロシア十九世紀ロマノフ王朝時代と比較しながら亀山郁夫がロシアの知識人たちにインタビューをしていく内容のようだった。亀山は『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」を例に挙げ、自由ではなくパンを、ロシアの人々がその強力な権力…

牡牛座 レーニンの肖像

…あるアレクサンドル=ソクーロフの作品だからである。私は『太陽』は観にいっていない。簡単に調べてみるとこの監督は二十世紀の指導者を四部作で描こうとしているらしくヒトラーを描いた第一作『モレク神』、そして第二作にこの『牡牛座』、第三作に『太陽』を、そして第四作に『ファウスト(仮題)』が予定しているらしい*1。もちろん私は『モレク神』も観ていない。この映画の邦題のサブタイトルの通り、レーニンが描かれる。ただし現役のレーニンではなく、狙撃により右下半身を麻痺し、認知症の症状が出始めた…