2018年8月20日/如才無い故に所在無い

マンションに挟まれた古びた一軒家。モルタルの壁には共産党のポスターが掲示されている。
以前、一軒家の主と思われる老人がスーツに身を包み片手にノートパソコンを持った男性に熱心に声を掛けられていた。土地の売買の交渉だろう。元は一軒家の一階には工房があったと思われるものの、現在は物置小屋になっており、孫の遊具が開いた扉から垣間見ることができた。
その一軒家が八月に入り、遂に解体されるに至る。解体された一軒家を下敷きにして鎮座する巨大な重機。掲示された工事名称を確認すると「××荘」とある。つまらないアパートができる。瞬く間に変わる東京の風景。ありがちな決まり文句が浮かぶ。

山田花子がハイジャック犯に捕まり、木棺の中に閉じ込められてしまう。
ハイジャック犯は故障した航空機の格納庫に木棺をしまう。
空港を飛び立つ飛行機だったが、故障故に床が抜けて木棺は上空から落下してしまう。
万事休すかと思われた山田花子。しかし空になったバックパックをパラシュート代わりに山田花子は無事地上に帰還したのだった。

人も獣も人語を解して交流する世界。一匹の雄猫は人間と距離を置き生活していた。ある雌猫がその態度の意味を問い掛けると雄猫はこう答える。「例え猫と人が交流したとしても子は産めない。そうやって猫という種族とその生、自らの生が、生きほぐされることに我慢がならない」と答える。

夢とは不思議なもので山田花子にアクション映画の主演を強き、「生きほぐされる」という使用したことも、辞書にも載っていない言葉を提示してくる。

生きることがほぐされる。猫としての生が人と交流することで異なる在り方に変質してしまうという雄猫の怒り。言いたいことは判るものの、随分保守的な考えではある。そもそも設定がイマイチなのではないか…夢に対して批判を繰り返してもしょうがない。

真夏の宇都宮の仕事での帰りがてら、駅前の餃子屋に寄り、水を数杯飲みながら餃子を待つ。隣に座る新幹線の乗車券を持った中年の男性が時折苦しそうな呻き声を上げながらビールをあおっている。あまり気分の良くない座席だと思いながら、ぼんやりと路上を眺める。

指定の座席に座ると蝿がヘッドレストの頭部で羽根を休めている。手を擦り、羽根を動かして整え、後ろ脚を擦り合わせる。果てしてここまで身繕いする蝿を観たことがあっただろうかと思い、笑ってしまった。

ラックから情報誌を取り出すと仙台に関するアニメと漫画に関する特集が組まれており、ジョジョの奇妙な冒険の話題も含まれていた。その他にもアニメ作品が言及されていたものの、興味が無かったために作品名を思い出すことができない。ページを戻し、表紙に見掛けた沢木耕太郎の旅に関するエッセイを読む。どうやら金沢に開通した新幹線に端を発するエッセイらしい。以前、駆け出しだった沢木耕太郎がインタビューを実施し、苦手意識すら持っていたザマス口調の女性の魅力を再発見したところで、エッセイは次回に続く。

ぼんやりと外を眺めていると、行ったことがない母校の他学部のキャンパスを見つける。線路沿いを歩く大学生は学部は違えど後輩になるらしい。思えば、客先に運ぶ時間が早かったり、遅かったりする時、学生と共に通学路を歩くことは多々ある。彼や彼女を眺めていると、何やら当時の何者にもなりきれない、モラトリアム特有の心情ー私にとってそれは苦痛でしかなかったを思い出す。更に言えば、私の誤算は会社に勤めることで自立して苦痛から脱却できると考えていたことだろう。しかし苦痛から脱却するには自ら大人になるしか無かったのだ…と考えながら的確に言葉を選んで語るとことは難しいなと思う。

大学生の大袈裟なジェスチャー、それに応える笑い声が駅構内に響く。

ロシアワールドカップが開催され、ネットで試合結果やダイジェスト映像を眺めた。昨今、サッカーに興味を覚える事は無かった。しかしながら日本代表ハリルホジッチ監督のワールドカップ直前の突然の解任が私に興味を惹かせた。サッカーに詳しい友人でさえ突然の解任の理由は判らないらしい。報道によれば選手との信頼関係が問題らしい。いかにも日本らしい、曖昧な理由に思わず辟易させられたのはさておき、突然の解任に対するSNSにおけるあるサッカーファンの声明を幾つか読む事になった。当初、スキャンダルを追い掛ける野次馬以上の興味は無かったものの、現代サッカーの高度に構築された戦略性と戦術性を理解するハリルホジッチ監督の成果を示す機会が失われたとする声明に非常に興味を覚えた。その後、速水健朗がTwitterで薦めていた「日本サッカー辛航記」「億万長者サッカークラブ」「砕かれたハリルホジッチプラン」を読んだ。当初は「砕かれたハリルホジッチプラン」を読むことが目的だったが強烈な印象を残したのは「億万長者サッカークラブ」だった、

八月の半ば、人が疎らになり、気持ちの良い風が吹き始めた。そして、何か物悲しい気持ちになる。

児童館の校庭で遊ぶ子どもたちを眺める。大人の庇護の下、思い思いに遊び、時間をもて余している子どもたちが眩しい。

台風から逃げるように都内から内陸部にレンタカーで移動する。奥穂高岳に雲が掛かっているものの、平野部は快晴だった。仕事を終えて都内に入ろうとすると土砂降りと渋滞に巻き込まれる。相模湖インターチェンジで発生した事故渋滞に巻き込まれたらしい。高速バスが車体の右側を通り、ラジオの音が途切れる。ラジオDJはリスナーに対して早めの帰宅を控えめに伝えている。

少年が蚊に刺されたふくらはぎを掻く。

地下の厨房の床には透明のゴミ袋が置かれていた。ゴミ袋の中には玉ねぎが入っており、複数の羽の付いた虫が袋の中を這っている。袋を見つめながら何故俺はこんな場所にいるのかと思う。

チェーンレストランで会計を済ませようとする男性が店員に外の天気を尋ねる。女性店員は雨が降り始めたことを伝えてその場を去る。

深町秋生の「ドッグ・メーカー」「オーバーキル バッドカンパニー2」「インジョーカー」を読み終える。ドッグ・メーカー以外は続編だが、面白く読んだ。

帰宅後、10分間程のランニングをしてみたところ、非常に気持ちが良い。何より自由な心持ちを得られるのが良い。

安田峰俊の「境界の民」を読んだところ、非常に面白かったため、続刊を読む進めようと思う。