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2017年4月4日/督促

雑記(2014.3.11~)

年度末最後の平日の朝を走る。年度末最後の平日だからなのか、電車の進みがいつもより遅い、というのは言い訳で、そもそも自宅を出る時間が遅すぎたのだと思う。形式だけのタイムカードは無慈悲に午前九時一分と刻印される。息を整えたところで、事務員から「今日はどうしたんですか?」と問われ、とぼけようかと思案しながら、間も無く返事をした結果、「いつもより電車が進むのが遅くて。」と考えていたことをそのまま口にしてしまう。

地下鉄のゴミ箱を漁り、排水路と排水口の間を黒い影が走る。ねずみといえば、奥泉光の小説を思い出すが、目の前には夢の国から帰宅する人々がシートに深く腰を下ろしている。

右隣の席に座る母親と赤ん坊。赤ん坊がどこかを眺め、時折視線を送ってくる。母親が赤ん坊を膝の上からシートへ移動させようとすると、すかさず泣き声を上げる。「嫌なのね。」母親は独りごちる。左隣の席には「宗教を越える真理を求めて」と題された頁をめくる白髪の女性が座っている。

髪の先から額まで頭皮の脂が及んでいるのが判る。ワイシャツとインナーが身体に馴染み過ぎた気持ち悪さ。求められているのは、白紙の頁を文字で一刻も早く、誰でも読めるように埋めること。

「すいません、もう督促が来ているので、明日にでも書類を送ってもらえませんか。出来ませんか?」今日でも無く、明後日でも無く明日。新しい朝が来た。希望の朝だ。朝は明日にならなければやってこない。答えは簡単だ。「寝なければ。」「すいません。できますか。」「判りました、やります。」確かに書類の提出が遅れている事は事実、非はこちらにある。
午前二時を周る前に仮眠を取り、午前五時に起き、顔を洗い、歯を磨く。果たして徹夜というのは労力の割に…等と言い訳をしている場合では無い。

「自分から自由になれるゼロ思考」なる本を黒衣で身を守る女性が読み進めている。L'Arc〜en〜Cielの楽曲に「自由に縛られている」という歌詞があった事を思い出す。これは自論だが自由になる方法はたった一つ、決まりと時間を守る事だ。しかしながら、私はまた、タイムカードを定刻ギリギリに刻むのだと思う。