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巨匠とマルガリータ

読書

ミハイル=A=ブルガーコフ著、水野忠夫訳『巨匠とマルガリータ』を読んだ。

ある春のとても暑い日、モスクワの公園で作家兼文芸雑誌の編集長と詩人がキリストの実在性について語っている。詩人は編集長に依頼されたキリストの存在を否定した詩を完成させたものの、編集長はお気に召さなかったらしい。編集長は売店で買ったソーダを飲み、日射病まがいの幻影にさらされながら、博覧強記で以てキリストの存在を否定し、詩人はこれに頷くばかりである。そこに怪しげな外国人が現れる。外国人は二人の話に割り込み、神を信じずまた実在性を否定する二人に問い掛ける。「神が存在しないとすれば、世の中の秩序は誰が支配するのか。」詩人はこれに対し「人間が自ら支配する。」と応える。しかし外国人は更に続ける。「千年先の事や、今日夜起こる事さえ判らない人間に何が判るのか。」カントと共に朝食を取った事もあるという外国人は、二人の今後をあっさり予言してみせる。編集長は路面電車に轢かれ、詩人は精神分裂症になるのだという。そして男はキリストが存在していたとして、ポンティウス=ピラトゥスを主人公としたナザレの人ヨシュアことキリストの物語を語り始める。
外国人が語り終えると編集長は「その物語はキリストがいた事を証明していない。」と反駁する。しかし外国人は「私はその場に居たので証明する必要は無いのです。」と語る。編集長は外国人を狂人と判断し、公衆電話で外国人観光局に連絡しようとその場を離れる。しかし編集長は外国人の予言通り路面電車に轢かれ首をはねられてしまう。詩人は外国人を追い掛けるうちに往来で下着姿になり精神病院に運ばれてしまう。

本書では、外国人が語ったピラトゥスを主人公とした物語と、外国人の格好をした悪魔たちがモスクワで引き起こす騒動が交互に語られる。そして詩人が精神病院で出会った巨匠を名乗る作家こそピラトゥスを主人公とした物語の創作者であった事が判る。悪魔たちは巨匠の身を案じる愛人マルガリータと接触し巨匠を救い、二人は悪魔に導かれ天上に昇る。

悪魔が起こすバカ騒ぎに笑い、福音の章と呼ばれるポンティウス=ピラトゥスを主人公とした格調高い物語に引き込まれる。著者であるブルガーコフはソ連に於いて戯曲や小説を発表する機会を得られなかったという。ピラトゥスを主人公とした物語を描き、文壇から排斥された巨匠とブルガーコフが重なり合い、その恨みとでも言うべきものが池澤夏樹が解説にて「ファンタスティック」と表する悪魔が起こす騒動で発散されているようにも思える。
本書を手に取ったのは、ストルガツキー兄弟の「モスクワ妄想倶楽部」を読んだ為だが、更に遡れば通勤途中、電車の中で黒衣の美しい女性が群像社版の本書を読んでいるのを見掛けた事がきっかけだった。私は池澤夏樹個人編集の世界文学全集のハードカバーで読んだが、現在は同内容の翻訳を岩波文庫で読むことが出来るようだ。
世界文学などと言うと敷居が高いように思われるが、これを読まないのは余りに勿体無いと思う。

巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)

巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)

巨匠とマルガリータ(上) (岩波文庫)

巨匠とマルガリータ(上) (岩波文庫)

巨匠とマルガリータ(下) (岩波文庫)

巨匠とマルガリータ(下) (岩波文庫)

巨匠とマルガリータ (上) (群像社ライブラリー (8))

巨匠とマルガリータ (上) (群像社ライブラリー (8))

巨匠とマルガリータ〈下〉第2の書 (群像社ライブラリー)

巨匠とマルガリータ〈下〉第2の書 (群像社ライブラリー)

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