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アルマジロ

ヤヌス=メッツ監督作品『アルマジロ』を観た。
映画配給会社でもあり劇場も持つアップリンクが戦後七十年企画として終戦記念日前後にネット上で無料配信したものを観た。

  • アフガニスタン最前線にあるアルマジロ基地にPSO(国際平和活動)という名の元に派兵されたデンマーク軍兵士の若者を描いたドキュメンタリー映画である。
  • アルマジロ基地はイギリス軍とデンマーク軍が駐留している。
  • 派遣を決めた若者が家族に「良い人生経験になると思う。」「本当の親友が欲しいんだ。」と語る。そんな若者の言葉に家族は頭を抱える。
  • 派遣が決まった若者たちは壮行会と称されたコンパニオンとの乱痴気騒ぎの後、空港で家族と別れる。
  • 基地では退屈を持て余した若者たちが半裸でバイクを乗りまわし、基地に設けられた給排水設備で水遊びに興じている。
  • 基地から飛ばされるドローンが捉えた無数の人影を「敵」と判断し、爆撃で建物ごと吹き飛ばされる。
  • 爆撃で家を失ったという現地住民が基地を訪れる。顔にはモザイクが掛けられている。現地住民は「住む場所も家族も居ない。せめて金が欲しい。」という。弁護士立会いのもとに賠償金が手渡され、男はポケットに金を入れる。
  • 派遣された若者たちは隊を組み定期的に村にパトロールしている。村では現地住民に協力を要請するも「君たちに協力すればタリバンに殺される。」と返される。子どもたちは外国人である若者たちに「ここから出て行け。」と語る。作戦の為、散開するも耕作地に入り込み、現地住民たちがクレームを入れる。
  • 他の基地に派遣されたデンマーク兵が地雷により2名死亡された事が告げられる。若者たちはそれをただ黙って聞いている。
  • 定期的なパトロールがタリバンに知られた為、不規則な時間帯に出撃する作戦が実施される。ヘルメットに付けられたカメラは脚元に煙埃を巻き上げる銃弾を捉え、絶え間無く動き、そして静止する。どこからの射撃なのかも判らず、無線で応答しあう兵士たち。よもや味方同士で撃ちあっているようにも見える。すぐ傍の灌漑に敵が潜んでいる事が判ると手榴弾が投げられる。川に内蔵を撒き散らしたタリバン兵を「臭うな。」と言いながら引き上げ、武器を物色する若者。それを咎める声をマイクは拾う。他方、負傷して憔悴する若者、搬送先から基地に戻り歓迎される若者の姿も映される。
  • 作戦の成功後、若者たちが呼び出される。国の家族との会話から、作戦の内容や若者たちの行動を咎める声が軍に報告されたのだという。若者の一人は言う。「俺たちの事を野蛮だという人もいるかもしれないが俺は正しい事をやったのだ。」「誤って自分が子どもを殺したとする。しかしそれは別の誰かがやった事なのだ。」
  • 最後に駐留を終えた若者が国に戻り歓迎されている光景が映される。主要な登場人物が六人程いるのだが、一人を除きまた駐留を望んでいるという。

「良い人生経験になると思う。」そんな若者の発言に衝撃を受けながらこの映画を観た。死を意図的もしくは無意識的に排除された発言に家族たちは思わず「死ぬかもしれないだぞ。」と判りきった言葉を掛ける。実際カメラが捉えるのはもしあと一歩踏み込んでいたら弾が当たっていたという事態だ。若者たちは「命を掛けていた」という類稀な事実に気が付き興奮しているのだろうと見受けられるもののどこか違和を感じさせる。とは言いながら画面越しに戦闘を眺める私自身が若者には劣るものの、高揚していた事を振り返れば致し方無い事態なのだろうとも思える。

デンマーク国連の決議の元にPSO(国際平和活動)のISAF国際治安支援部隊)として活動している。ISAF多国籍軍だがその後NATO北大西洋条約機構)軍が主導、2014年12月に終了しているが、RSM(確固たる支援任務)が継続しており、デンマークはこれにも参加している。尚、日本はアフガニスタン法秩序信託基金にて10億ドル以上拠出している。
さてPSOとは聞き慣れない言葉だが、日本でも認知されているPKO国際連合平和維持活動)はPSOの一種である。現在日本のPKOは南スーダンにて実施されており、2016年10月まで派遣が延長された。また集団的自衛権が限定的に容認された為、これに駆けつけ警護の任務が加わる可能性が高い。更に政府は、国会にて安保法案に関する答弁の中、ISAFのような活動に自衛隊が参加する可能性を否定していない。現状のPKOに話を戻せば、国連は住民保護の為の戦闘行為を容認しており(ルワンダ虐殺からの反省)、南スーダン情勢は自衛隊にとって非常に危ういものとなっている。駆けつけ警護等の集団的自衛権の容認以前に、自衛隊の存在を含め憲法9条から議論されるべきだった。私は憲法にて自衛隊を容認した上で専守防衛を旨とする記述するべきであり、またPKOでは無い国際貢献があるのでは無いかと考えている。とは言えPKOにしろ集団的自衛権の容認にしろ既成事実となった今覆すのは難しいだろう。せめてPKOに参加するならば隊員の保護及び懲罰の為の法律があって然るべきだと思う。しかしこういった事について考えていると自衛隊武力行使を伴う活動を国外で展開するのは時間の問題だと気がつく。