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ソラリス

スタニワフ=レム著、沼野充義訳『ソラリス』を読んだ。

飯田規和訳はロシア語からの翻訳になるらしいのだが、そのロシア語版は編集サイドの自主的な検閲により一部削除された箇所があるという。沼野充義訳はポーランド語版からの翻訳になり、国書刊行会から出版されていたが、これがハヤカワ文庫版として読める事になった。国書刊行会の品のあるハードカバー版は好きなのだが、やはり手軽な文庫版が発売された事は嬉しい限りだ。

過去に本書を読んでいた時は、ソラリスが主人公の前に出現させた死んだ妻の蘇りと生の反復から、生の一回性という問題を扱った作品として読んでいた。タルコフスキーの映画版「惑星ソラリス」も生の一回性を押し出した作品になっており、ソラリスの地表に降り立った主人公が自らの父と再会を果たし跪くという終わりを迎えたのもこの為だろう。
他方、小説を読めば、この問題の背景にあるソラリスという未知との接触の不可能性が立ち上がってくる。特に本書ではソラリス学なる部分が忠実に訳されており、人類が未知を理解しようと試み積み重ねて研究していた事実が判る。主人公は理解しようと試み、しかし叶わなかった人類の一人でしか無い。

主人公がソラリスの地表―ミモイドに降り立ち、ゲル状の海と遊び飽きられ物語は終わる。どこか物悲しいものの、しかし美しい風景だと思う。