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『天の声・枯草熱』

スタニワフ=レム著、沼野充義深見弾吉上昭三訳『天の声・枯草熱』を読んだ。

スタニワフ=レムの長篇二編が収められている。

  • 天の声

偶然発見された地球外からの信号を研究する為に一流の科学者達が集められた。しかし信号の一部を解読して出来たのはコロイド状の物質だけだった。信号の事実が解明出来ないまま研究と実験が続いていく。本作は数学者の手記という形を取っており、ソラリス等と同じように未知との接触の不可能性が主な主題になっている。同時に自らの生い立ち、科学者との対話、政治的な駆け引きが描かれる。コロイド状の物質の研究から核爆発を地球上あらゆるところで起こす事が出来るという爆発移動効果に関する件は、科学者たちの緊張感と政治的駆け引きが相まって非常にスリリングだった。

  • 枯草熱

枯草熱とは花粉症・アレルギー性鼻炎を指す言葉である。本作は確率論的ミステリーというジャンルになるらしい。ここでいう確率論とは、「自分の出生は両親の出会いがあったからであり、たまたまどこそこで偶然にも出会い、何時かの性交により、精子卵子が邂逅を果たし、たまたまその前に二人はチョコレートを食べて興奮状態にあり、更に遡れば二人の両親はどこそこで出会い…」というような出来事の偶然の連鎖を指す。元宇宙飛行士でアレルギーを持つ男性がナポリで起きた怪死事件を解決する為、被害者の足跡を辿る偽装作戦を実行する。しかし男性はテロに巻き込まれるといった予想外な局面を迎えてしまう。様々な要素が重なって物事が解決に向かう様は、偶然の産物である故に奇妙な読後感をもたらすが、作品自体はストレートに描かれており、「天の声」よりは読みやすいものとなっている。