柳樂光隆監修『Jazz The New Chapter ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平』『Jazz The New Chapter 2』を読んだ。
『Jazz The New Chapter』では、Robert Glasper*1 を起点として90年代以降のジャズ史が語られている。ここで Robert Glasper について簡単に確認してみよう。Robert Glasper はアメリカ出身のジャズピアニスト。2012年第55回グラミー賞R&Bアルバム賞をRobert Glasper Experiment 名義の「Black Radio」で受賞している。この「Black Radio」は前作「Double Booked」以降、R&B と HIPHOP を JAZZ に取り入れた集大成として評価された。その後「Black Radio」の続編となる豪華ゲストが競演した「Black Radio 2」が発表されている。JAZZ が R&B と HIPHOP を合流させる試みがこれまで無かったのか。本書によれば技術的に上手くいかなかったらしい*2。しかし Robert Glasper Experiment のドラマーである Chris Dave*3 、Mark Colenburg*4 は変拍子・ポリリズム・ビート*5を生演奏で可能とし技術的な面をクリアしたのだという。これが大体本書の一部に相当。本書二部は名門レーベル、その他世界のJAZZの潮流について特集が組まれており、アルメニア出身の Tigran Hamasyan*6 のメールインタビューがあったのは嬉しかった。
『Jazz The New Chapter 2』では Robert Glasper、Beeca Stevens*7等のインタビュー、Flying Lotus*8と彼が主宰するレーベル Brainfeeder*9特集、ECM特集*10、シカゴ特集がある。本書はECMとシカゴ特集を大変面白く読んだ。またここで吉田ヨウヘイgroup、Rabbitooを知った*11。
さて本書は数多の音源が紹介されており、それを見ながら興味を持ったものを聴いた。これが本書の一番良い所。以下、聴いたものを挙げていく。
- Chris Dave & The Drumhedz『MIXTAPE』
無料DL可能。『Jazz The New Chapter』のインタビューによれば「ジャズがあまり好きじゃない人のためにつくった」との事。
- Nels Cline Singers『Macroscope』
『Jazz The New Chapter 2』にインタビュー有り。 Nels Cline*12は Wilco のギタリスト。出自はジャズだったらしい*13。
- Chicago Underground Duo『Locus』
『Jazz The New Chapter 2』にRob Mazurek*14インタビュー有り。RPGのボス戦のようなメロディが奏でられ、かなり親しみやすかった。
- Brad Mehldau & Mark Guiliana『Mehliana Taming The Dragon』
Brad Mehldau*15 と Mark Guiliana*16 のユニット Mehliana*17。『Jazz The New Chapter 2』に Mark Guiliana のインタビュー有り。Brad Mehldau がシンセサイザーを弾いている。最近来日していた。
- Tigran Hamasyan『Shadow Theater』
本書のお陰で発売される事になった作品。既に新作『Mockroot』も聴いた。
- Nik Bärtsch's Ronin*18『Stoa』『Llyrìa』
『Jazz The New Chapter 2』ECM特集で登場。インタビュー有り。スイス人のグループ。禅ファンクとか呼ばれているらしい。そんなのはどうでも良い。完璧にハマった。
- Becca Steavens Band『Perfect Animal』
インタビュー有り。これもかなり聴いている。『Jazz The New Chapter』で推されている『Weightless』も聴こうと思っている。
本書で直接的には紹介されていないが登場したバンドも聴いた。下記二枚はかなり聴いている。
- 吉田ヨウヘイgroup『Smart Citizen』
Nels Cline にインタビューしているのがこのバンドの吉田ヨウヘイ。彼らを知ったのは本当に良かった。聴いていると切なくなってしまう。6月には新譜『paradise lost, it begins』の発表を控えている。
- rabbitoo『national anthem of unknown country』
『Jazz The New Chapter 2』にシカゴで活動経験がある田中徳崇のインタビュー有り。新作の録音は終わったとブログに報告があり楽しみでしょうがない。
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*1:日本語表記「ロバート=グラスパー」。ちなみに名前の接続に「・」を使わず「=」で接続させるのは文章上の表記上、等値表現が出来なくなる-例えば「グラモフォン・フィルム・タイプライター」と物事を並べた文章と人名表記が混同される恐れがあるのだ。しかし、世間では「・」を使って名前を表現させるのが一般的になっていますね、なぜでしょう?
*2:ここから音楽のテクニックの話になる。正直全く無知な事を留保して頂きたい。音楽の技術的な話は皆どこで学んでいるのだろうか。
*3:日本語表記「クリス=デイブ」。現在、Robert Glasper Experiment を離れている。
*4:日本語表「マーク=コレンバーグ」。
*5:ここで言うビートとはソフトウエアーの自動演奏でしか出来なかった高速ドラミングを指しているようだ。
*6:日本語表記「ティグラン=ハマシアン」。
*7:日本語表記「ベッカ=スティーヴンス」。Beeca Stevens Band として作品を発表している
*8:日本語表記「フライング=ロータス」。
*9:日本語表記「ブレインフィーダー」。
*10:Editions of Contemporary Music. ドイツのレコード会社。
*11:共に日本のバンド。
*12:日本語表記「ネルス=クライン」。
*13:Wilco はきちんと聴いた事が無い。無料のライブ音源を聞き流していた事はあったが…
*14:日本語表記「ロブ=マズレク」。
*15:日本語表記「ブラッド=メルドー」。
*16:日本語表記「マーク=ジュリアナ」。
*17:日本語表記「メリアーナ」。
*18:日本語表記「ニック=ベルチェズローニン」