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2015年2月27日

朝、ゴミ出しに外に出ると陽が射している。晴れ間に清々しさを感じる。これだけで気分が変わるのだから、簡単な人間なのだ。会社に眼鏡拭きを忘れ、雨粒の後が残った眼鏡をする気にもならず自宅を出る。これもまた気分が新たになる。

喫茶店を出ると、以前の職場の業務立ち上げに関わった老人が坂の上から手招きしている。老人の側に寄ると今の事務所の目の前である事に気がつく。「都合が悪いか?」と尋ねる老人にそんな事は無いと応えるのだが、煙草が吸いたくなり人気の無い場所を探して一服する。しかしそこが一軒家の庭である事に気がつく。慌てて場所を変える。

駅まで歩く。陽が眩しい。路上に掲げられた養護支援学校の生徒の手による色鮮やかな桜の絵に目を奪われる。

電車の中は蒸し暑い。上着の裾に固まったラーメンの脂が付いている。

今日の業務を無事終えれば今の職場に勤め始めて二年になる事に気がつく。客先は異動通知日なのだと上司が言う。

電車に女性が走り込む。閉まる扉の隙間から滑り込んだ女性は、顔を上げほっとした顔をする。女性それだけで持つ特有の快とは何だろう。男の勝手の劣情とは違うのだろうが、現象学的還元はまだ先にある。

舌先に痛みがある。電車はひどく空いている。

新垣隆 吉田隆一「N/Y」を聴く。とても良い。

大人になるべきだ。もうそういう年齢なのだ。なれるものなのか判らないが。

休日出勤の時に声を掛けた店員を見掛ける。例えば彼女とデートしている自分を想像してみる。もしかしたらあり得るかもしれない未来であり、全く可能性すらない未来かもしれない。まだ誰も見た事の無い風景。それは何となく荒野を想像させ、ひどくくたびれる。未来を想像するとは、その荒野に別のレイヤーをかざし、荒野を隠す作業かもしれない。

窓越しに上階の窓を清掃する社員の命綱を握る二十代の男性。退屈そうにしている。その紐が上階の清掃員の命に関わるのだとしても、万が一の可能性であれば、おそらく十の一の可能性であっても飽く事は人の習性なのだろう。

異動の話が上司たちから正式に伝えられる。殆ど予想していた通り、結局自分の異動は無かった。但し、事実上お役ご免になる社員がどうなるか尋ねたおいた。いずれ俺もそうなるのかもしれない。その後、飲み屋に誘われ、自らを守る為飲み、酔った上で上司たちに殺す気で視線と疑問と皮肉を放つ。全く馬鹿らしい。しかしただ折れるのは簡単で、ただ感じなくなる事も容易な世界において、一矢報いなければならない。その為に帰り道小汚い駅の便所で全てを吐き出す事になったとしても。

目が据わったまま、改めて新垣隆 吉田隆一「N/Y」を聴く。ただ流れるのではなく、空間的に配置されたピアノの音に、サックスの音が載る。音は時間ではなく、空間さえ占めるのだと言う事に気がつく。