2014年8月30日

二度寝から起きる。涼しい朝だ。まだ眠い。夏の疲れかもしれない。何より、部屋に入る気持ちの良い微風が眠りを誘う。

誰もいなくなってしまった。台所で一服しながらそんな感慨が沸く。空になった煙草の箱を捨てる。一体誰がいなくなってしまったのかのと自問すれば、あの時の皆がいなくなってしまったという答えが返ってくる。煙が換気扇に巻き込まれる。この問いはこう置き換えるべきだろうか、皆変わってしまった、何より俺自身が変わってしまったと。

なかなか読み進まない丸山眞男の日本の思想を読み進める。

友人からの電話に出る。起きたばかりだからテンションが低いのか?いや起きたばかりだと言えば本を読んで眠気を覚えていたのはその通りだ。今はAV女優をインタビューした裸身という本を読んでいる。何故そんな本を読んでいるのだ?菊とポケモンという本を読んでいたら戦隊ヒーローに於ける女性はいざ戦うとなれば女性性が消されてしまう。しかしセーラームーンはその女性性が戦闘にも描かれるのだ。そんな事を考えていたらこの本を購入していたのだという。そんな事を話していると友人は今後の生活への不安を口にし三十歳までに転職を考えている事をYouTubeで見たというニートの生活と混じえて話す。家族や恋人がいれば話は変わるが、自分一人の事を心配するだけならどうにでもなると。どの話も他人事では無い。共感するばかりだ。そして答え等無い。夕方の出勤の為にこれから風呂に入って眠ると言う。取り留めも無く電話は切れる。

母からメールが届く。父が親戚の結婚式に参加するという。俺と同年代の再従兄弟の結婚式だった。併せて体調を尋ねる母に何も問題無い事を伝える。

本を読み進める。西欧に於いて文学は科学と対立し、文学はその批判を取り込む事が出来た。しかし日本では四季に合わせてその心情を語る事しか出来なかった。そんな一文を後に引きつつ日本の思想を読み終えてしまう。

気がつくと午後十七時前。ジムにも行く気が起きない。シャワーを浴び散歩に出る。公園には小さな子どもたちが携帯ゲームやバドミントンを興じている。八月最終週の土曜日の午後、夏休みの終わりの光景。

どこぞかの広い家。冷蔵庫の中に軍艦の形をしたアイスがあった。それを取り出した食べようとすると母が顔を出し「弟の為にお父さんが彫ったものなのよ」という。歯を少し立てていたが、形に変化は無い。冷蔵庫にアイスを戻し居間を覗くと父がこちらを見て笑っていた。

耳許でテレビジョンのマーキームーンが流れる。ヴォーカルの細い首を恋人は世界一美しい首元だと語ったという。公園のトラックでは十代の男女がトレーニングをしている。陽が落ちようとしている。高台の公園に吹く風。さすがに半袖シャツ一枚では肌寒い。側に腰掛けている女性が肌をさする。「寒いから帰ろうか?」を声を掛けると黙って頷く。彼女の手を触れる。透明なマニキュアが塗られた指の先が冷たい。イヤフォンを抜いて胸ポケットに入れながら尋ねる。「何を食べる?」「カレーライスかな」とこちら伺うように破顔する彼女。つられてこちらも笑ってしまう。

帰り道を一人、雲の中に細い三日月。変化を求めたのは俺自身ではないのか。例えば職場を転々と変えた俺を見送った人々は彼は変わってしまったのだという感想を持ったかもしれない。

昼はサンクスの洋風カレー、夜に食べたセブンイレブンのバターチキンカレー。おまけに「ペア+ヤング」の「ペヤングソースやきそば」を独り食べる。胃がもたれる。