2014年8月22日

夏、深夜の夢現、一つ、二つ、三つ…。

地下鉄駅構内、事務所の所長がサングラスを掛けた水商売を思わせる服装をした女性と立ち話をしている。人が行き交うなか、年上の社員と二人の交渉を見守る。どうやら交渉は成立したらしい。お仕事の時間だ。あるマンションを訪ねる。声を掛けても誰も出ない。年上の社員が玄関の扉に手を掛ける。鍵は掛かっていない。そのまま部屋に入り込む社員。後に続く。散らかったリビングのゴミ箱にはスポーツ新聞と血を拭き取ったであろうティッシュの山、底には血に塗れた髪の毛。年上の社員は全てを悟ったらしく、ゴミ箱に入ったスポーツ新聞を、冗談なのか、声を挙げて読み始めた。まだ誰もここで起きた事に気がついていないだろう。警察の臨場に影響は与えたくない、とはいえもう指紋も足跡も残してしまった。確証を得る為に部屋の奥に進む。浴室の扉を引く。バスタブの蓋の上に血塗れのタオルにくるまれた塊、光を反射する瞼から覗く水晶体。寒気を背中に感じつつ、この事態を考える。依頼者とこの女性は何らかのトラブルに巻き込まれた。事態が悪化するなかこの女性と連絡が取れなくなった依頼者は最悪の状況を想定し彼女を第三者に確認させた。もちろん自分がトラブルに巻き込まれない為にも。とはいえ今一番危険なのは依頼者では無いだろうか。次の標的はきっと依頼者だ。口元を抑えているハンカチが湿り気を帯び始めた。

目覚め、午前二時。窓を開け放ったままになっている。この夢を観た状態で窓を開けたままに出来るほど強心臓ではない。しかし目を開けられない。恐怖。首から上が動かない。金縛りだろうか。心霊現象は無いにしても、この状況を合理的に理解する為に何かを見てしまうかもしれない。動く腕で首の位置を動かそうと試みる。薄目で周りを確認する。開いた窓と網戸が何度も思い出される。

目覚め、午前二時。身体も動く。恐怖心は無く、網戸越しに外を伺う。

大学内で講義を受けている。手に束ねた教科書が懐かしい。どうやら大学のプログラムで教養科目を多く受講するよう設定されているらしい。初めて取る舞踊の講義の教官はゲイだから気をつけろと友人に言われ、教室を移動する。教室に入るとこちら振り返る教官。五十代、白髪、目をぎょろりと動かす。なるほどと俺は思う。

シャワーを浴び髭を剃る。短く刈り込まれたなか輝く白髪。

夢について上司に話すと「俺は昔は女性といちゃつく願望のような夢をよく観たな」と笑う。ではあの夢は俺の願望だろうか。首に残る違和感を手で紛らわす。