2014年7月24日

曇天の空、蒸し暑い空気のなか駅に向かう。マンションの階段を降りる女性に高校時代の先輩の面影を見る。その先輩は笑顔がよく似合う女性だった。気難しい副部長の女性と二人で女子部員をまとめていた。大学時代、リクルートスーツを纏った姿を見掛けたものの突然の事だったので声を掛ける事が出来なかった。就活の際、偶然就活サイトに彼女の姿を見掛けた。住宅不動産会社に勤める社員として仕事のやり甲斐や難しさを語る姿は俺の知らない姿だった。ふと思う。俺はその先輩と会う事はきっと無いだろう。いや、きっとでは無く、もう会う事は叶わないのだ。そんな現実を前に切ない気分になる。あの頃を思い出す時は常に独りなのだ。

三月十一日とその後の数日間、どんな強い思いも肉体諸共明日滅んでしまうかもしれないという現実を突きつけられ、生への執着をありありと感じた。生きても伝える事など無い虚しさと生の執着、まるで矛盾した論理だが生は理性をまるで無視してしまう。

女性のきれいに整えられた目元の化粧をぼんやりと眺める。がらんどうとした車内、気持ちを整え扉が開くのを待つ。

前髪が一部なり全体なり切り揃えられた女子高生三人組を見掛ける。夏休みが終わる頃には前髪は乱れ伸びているのだろう。

飴に濡れた路面。室外機の風が身体を包む。足元から立ち上がる湿気が気持ち悪い。