2014年7月4日

専門学校に通う若い男女たち。どうやら俺は部外者らしい。学校の前で女性が意中の男性を待っている。友人たちが学校を出て行くなか、男性はなかなか出てこない。諦めて駅に向かう女性の肩を叩く。同級生たちは怪訝な表情を露わにする。すると意中の男性が学校を出て来た。女性に男性が出て来た事を告げる。嬉しそうに男性に向かって走り出す女性。我ながらお人好しだなと思いつつ駅に向けて歩く。

外から耳栓越しに雨音が聴こえる。久しぶりの早起きだが、PCを眺めた後、横になると寝てしまった。よだれまみれの顔を拭いシャワーを浴び着替える。自宅を出るとリードに繋がれた柴犬の尻が目に付く。黒い肛門の周囲を短い白毛が放射状に広がり腰から伸びた黄金色の毛が膝まで柔らかく包む。路地を出ると車にクラクションを鳴らされ、駅前の銀杏の木に手を掛けた白髪の男性が吐き気を堪えている。電車の中、スマートフォンを眺めながら便意を覚え、若い男女の会話を眺める。耳許で流れるアイドルの狂騒曲とイヤフォン越しの車掌のアナウンスに大差は無い。改札前で男と女が警備員を前にアーアーと声を挙げている。ここには敵も味方もいない。

熊木杏里「私は私をあとにして」を聴き始めた。アルバムの題名は絶え間無い反復を連想させる、等と考えていると一度閉まった扉が開き、もう一度閉まったところで鞄の端が挟まってしまう。固定された鞄から離れられず、引き抜こうにも抜けず、また抜けば電車が異常を検知する可能性にも晒されている。そんな事を考えている間に目的の駅まで一駅。 暇なので挟まった鞄から手を離してみる。挟まった鞄は扉に凭れたまま浮いている。鞄を「固定したっ!」と独り心のなかで叫んでみる。車内には線路を跳ねる車輪の音が響いている。

客先へ上司と共に向かう。昨日の異動の話題になり「~さんのさじ加減一つで俺も異動ですね」と嫌味を言っていると五円が落ちている。拾い上司に渡そうとするも遮られ「きっとご縁があるよ」と言う。「以前の職場の人と鉢合わせするんじゃないですか。悪運のご縁です」五円玉を胸ポケットに放り込む。客先で用事を済まし、受付を通ろうとするとおそらく以前の職場の営業を見掛け思わず笑う。

喫茶店に入る。長身の女性がショートカットに髪型を変えた。反復する世界を微妙な差異によって脱げ出す事は可能だろうか。昼のお代はいつも通り四百十円。

いつもなら会社を早々と出るところだが、新入社員研修に駆り出されている上司たちの仕事を手伝う事になる。同じく残業する女性社員と共に無駄話をしていると生命保険の話になる。年長の彼氏の生命保険は月の支払額にして一万円以上するらしい。守るべきものも無ければ残すべきものも無く無縁の話だと気がつく。

帰りの電車では中年の夫婦が楽しそうに会話をしている。別段、二人はどこにでもいる平凡な夫婦であるが、俺はとても羨ましいのである。