2014年4月25日

捲ったジーンズの裾から浮き上がるアキレス腱。アキレス腱が音を立てて切れる。身体のあらゆる腱が続け様に切れていく。反響する音、操れない身体、解体された身体。

自室に集まった事務所の社員。朝まで繰り広げられる酒宴。しかし酒宴の目的は社員たちの連絡先の確保だった。集められた電話番号に偽った連絡先も含められている。怒り出す上司。俺は勤務時間外に業務が行われている事に怒り、上司に反抗して見せ、宴に用意された焼き鮭を食べる。上司は上司で疲れを見せ始め、俺は言い過ぎたかもしれないと反省する。

大型のキャリーバッグを引きずる男性と傍らの女性。これから大型連休に向けて旅行に洒落込むという訳だ。俺も休みを一日設けたが遠くに出掛ける予定も金も無い。少し長めの休み。本を読んでアフリカ横断の続け、眠りの中でどこか遠くに行けるかもしれない。

被ったキャップが肩にぶつかる。横断歩道を渡っている時に限って落としてしまう荷物。立って眠る女、電車に揺られて三等客専用室ベッドの夢見心地。停車した電車の向かいのホームで繰り広げられる出勤を伴にする男女の会話。動く口にどんな台詞をあてればよいだろう?見当もつかない。

客先へ向かう。風が無く少し暑い。「今日からお休みされている方は多いですか?」「いや、そんなことは…」「そうですか」「御社はゴールデンウィークも通常営業なんですか?」「はい、そうです。私は月曜日にお休みを頂きましたが…」「それはいいですね」「ええ、そうなんです」事務所にてエスプレッソについて。「エスプレッソって何ですか?」「抽出されたドリップ」「ちょっとの量で苦いやつ」「ああ、あれですか。適当に頼んで出て来た時、がっかりするやつですね。喫茶店によるけど、チョコレート付いてきますよね」「そうなんですか」「そうですよ」「私はアニメでエスプレッソって知りました。あんな面倒なんだなって」「それってドッピオ、日常ってアニメじゃないですか?」「よくご存知で」「友人に勧められて全話観ましたよ」「私も観ました。単行本も出てるからアニメ三期始まらないかなーって思ってるんですけどね」

前歯の痛み。歯磨きのし過ぎか、煙草の吸い過ぎか。探偵事務所のポスター。相談項目は人捜し、浮気。どちらにしてもゼロからは無理な話だ。大抵、携帯電話の番号や以前の住所の情報等が必要となる。そこからほとんどが違法な手段、探偵事務所が責任を取らない形で情報を買っているのだ。携帯電話販売会社社員が専用端末から情報を引き出し、また探偵事務所が他人を偽り役所から情報を聴き出して警察に逮捕された事は記憶に新しい。子どもが白髪の女性と共に交差点を渡る。

何も面白味が無い。一体何に期待をしているのだ?受身の期待は要らない。こちらが起こしたリアクションのみ期待するべきだ。つまり偶然ではない何かしらの結果のみだ。こんなお利口な理屈は口に出すべきで無いしどうせ偶然を期待しているのだろうが。

過去からやり直したいと考えるが、これは馬鹿らしい。というのも過去からやり直した時、今の俺は俺で無くなる。では今の俺に未練が無ければと考える。むしろ未練があったから何なのだ?俺の今までにどんな未練に足るものがあるのか…?そう考え悲しくなった。

改札口に警官がいない。アメリカの大統領はもう日本に居ないのだろう。朝は駅の自販機に適当にガムテープが貼られていたが、今はどうだろう?接着型の眼帯をした女性。胸元のリボン模様。思い出すのは大したこと無いムカつく事ばかり。それに付き合っていくしかない。腹を決めろ、たぶんそれだけなのだ。

昨日今日とスープカレーを食べる。カット野菜が便利過ぎる。水増しし過ぎた味の薄いスープでご飯を飲み込む。満腹の苦しみのなか、ふと今まで出会った来た人々を思い出す。どこで、なにをしながら、眠り、起き、老い、思うのだろう?暗闇に無数に発光する微弱な電流のイメージが頭に浮かぶ。