2014年4月18日

うつ伏せになるかたちで浅い風呂の中で浮いている。どうやら実家の浴室の風呂桶の中だ。顔を上げると大きな窓ガラスから隣家二階の窓を仰ぐ事が出来る。網戸が掛かっている。季節は夏のようだ。隣家の夫婦の和室、寝室。彼等に子どもはいただろうか?網戸越しに覗く夫の顔、その周りで細々と作業する妻。気がつけば俺は列車に乗っている。長身の見知らぬ男性の友人。女性の友人は椎名琴音だった。車窓から田園と小さな家々風景。穏やかで不安の無い世界。椎名琴音が窓の淵に腰掛け何かを言う。俺は窓の淵に頬杖をつき外を眺める。すると線路が別れ、椎名琴音は別の線路の上を独り滑っていく。線路の上を座ったまま滑る彼女を目で追う。線路が再度合流する。目の前に窓の淵に座ったままの彼女がやってくる。列車が駅前でスピードを緩めた。ゆっくりと彼女が目の前に現れる。俺は何と無く彼女のお腹に顔を埋める。列車を降りた駅で彼女は笑いながら「いいねを2回頂戴」と見返りを求めた。

干していたワイシャツを外に取りに出ると雨が降ってきたところだった。ワイシャツは乾いている。シャワーを浴び、取り込んだワイシャツを羽織る。骨組みの歪んだビニール傘片手に自宅を出る。子宮回帰願望丸出しの夢に笑うしかない。むしろ今際の際と言うべき夢だったと簡単に推理。女性左手薬指に光る指輪。スマートフォンに流れる映像、手元に開いた両開きのテキスト、窓に散る飛沫。

事務所内の静謐。牽制しようとする電話口向こうの男性。適当な相槌ではぐらかし電話を置く。雨は止んだが肌寒い。ジョン=スパークスKimono My House」の妙なテンション、見知らぬ女性店員、財布に入ったなけなしの千円。業務しながらプラウザのニュースを眺めているとガルシア=マルケスが亡くなったという。そろそろ彼の本を読む頃だと思っていた。「自発的隷従論」を監修する西谷修は、彼の作品を引いて―作品の題名を忘れてしまったが―解説をしていた。老人が身を乗り出して中年の男性と熱心に話している。老人が足早に喫茶店を出る。中年の男はカップのコーヒーを煽って飲み込む。いつも閉まっているビル一階のシャッターに姿を表した白いBMW。束の間、シャッターが降りる。高級車に掛けられた盗難保険、奪われたハイエースイモビライザー、海を渡るナンバーが外された車両たち、駆けつける海上保安庁の哨戒船、何も知らぬ外国人の船員たち………

やる気ゼロの金無し。前髪に白髪を見つけ笑う。Kimonosを聴く。Kimonoが続くのは偶然に過ぎない。身体を横たえるともう動かない。目を覚ますと口の端をよだれが伝う感覚。スマートフォンで時間を確認すると二十二時四十分。明日まであとわずか。