錯乱のニューヨーク

レム=コールハース著、鈴木圭介訳『錯乱のニューヨーク』を読んだ。
この本は以前購入していたもので、ヴァルター=ベンヤミンのパサージュ論について調べていたところ、参考図書として挙がっていたものだと記憶している。尚、ベンヤミンのパサージュ論を未読である。

本書の表紙に記載された画が印象的である。摩天楼がニューヨークのどこかの高層ホテルで二つで愛を交わしている、もしくは事を終えて寝ている。外には人の顔をしたビルが整列している。この表紙の絵は著者の妻マデロン=ヴリーゼンドープの作品だ。

ニューヨーク、マンハッタンのアーバニズム*1の理論的傾向をマンハッタニズムとして定義したのが本書である。
ニューヨークは過去ニュー・アムステルダムと呼ばれた。オランダのアムステルダムを模した絵空事に見出される欲望。そこから本書は始まる。土地区画グリッド。娯楽としての遊園地の塔に見出される摩天楼の前景。そして人口過密を補うべく縦に伸びるビル。法律によってビルはその大きさの限界を定められ、定められた事によってその傾向が決められ、区画ごとに分断された摩天楼が、自動的にそびえ立つ事になる。

n階のフロアで裸でグローブをつけたままオイスターを食べる―これが九番目の階の「プロット」である。あるいは運動する二十世紀と言っても良い。
レム=コールハース著、鈴木圭介訳ちくま学芸文庫『錯乱のニューヨーク』p262より引用。

という独身男性の生活描写。そんなにカキが好きなのかと。またゴーリキーがニューヨークを訪れて、その事を記したという「退屈の王国」というものが引用されている。資本主義の牙城にゴーリキー、摩天楼の壁画にレーニンが登場し損ねた等の逸話。資本主義という欲望がニューヨーク、マンハッタンを造り、そして本書はそれらを追い「マンハッタニズム」を明らかにする。


錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)

錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)

*1:都市を志向する文化的・社会的な傾向。都市的な生活様式を指す。