2014年3月28日

布団に早めに入った為か目覚めが良い。寝る前にアイマスクと耳栓を用意すれば充実した睡眠が得られるというネット上の記事を読んだ。深い睡眠、そこに夢を見る余地はあるだろうか。科学的なトレーニングを取り入れた小太りの野球選手のニュースを夢で観た。モーニング誌上で連載されている野球(選手の年収に焦点をあてた)漫画「グラゼニ」を読んだ影響だろうか?

コンビニで煙草を買い一服する。灰皿の周りに作業着を羽織った男たちが集まっている。「この靴は三ヶ月前に買ったが、あいつは三ヶ月で履きつぶしたんだ」、足元にはオニツカタイガーのレトロな色合い。俺は耳許のイヤフォンの電源を起動させた。

マスクを付け座席に座る。細身のライダースにジーンズの女性、スカートから伸びたストッキングに包まれた細い脚、大きな目の女性が手に持った詰将棋の本。脳内の盤上で行われる熱量消費の格闘。想定された問答。再帰的な意識が繰り広げる意識の模倣。

歳上の新入社員に変顔すると「誰か殺したような人の顔をしてますね。」と言う。なんとなく尋ねる。「ちなみに、人を殺した人の顔を見たことある?」「ないですよ。」当たり前か。いやそうでもない。省みる。直接的に殺人を犯した人に会った事があるだろうか…間接的になら…どちらにしても殺人者に気がつく事は出来ない。昼食の時間、先程の新入社員に声を掛けられる。「シャイニングって映画知ってます?」スタンリー=キューブリックの映画だ。「知ってます。」「あの映画に出ていたジャック=ニコルソン、さっきの顔、似てましたね。」なるほどねぇ。あの顔を真似したディカプリオの顔を知ってるかい、とても似ているんだ。もしかしたら俺はディカプリオにも似てるかもねぇ、もちろんこれは冗談だが。

朝、事務所に早めに来て掃除機を掛ける。結構な重労働で汗をかく。カーディガンを脱ぎシャツの裾を肘までめくる。インナーに汗が染み込んでいくのが判る。PCを立ち上げながら全くやってられないと思う。三十代の社員たちに転職を考えている人を何人か知っている。作業と呼ぶに相応しいやり甲斐に欠ける業務。しかしそれ故に早く帰れる、給料も安い。何に価値基準を置くか、とても実際的な、生活の考察である。耳許でシンメトリーズのミッドナイトランニングが延々と流れている。

定刻に仕事を終え事務所を出る。完璧だ、何も言う事が無い。
本屋に寄りヨアン=グリロ「メキシコ麻薬戦争」、田中康夫「なんとなく、クリスタル」を手に入れる。正直今すぐ読み始める理由の無い本だ。「所有欲も愛の一つ」と歌ったのはJuice=juice。たぶんこれも愛だ、気恥ずかしくなく告白出来る愛の一つだ。電車の吊革広告、石原さとみの下から覗き込んでくる構図はあざとく、しかし完璧にキマっている。右側に座った男性は「歴史人」なる雑誌を読み、左側に座った女性はスマートフォンでゲームに興じている。

帰り道、車のライトに照らされた夜桜に気がつく。まだ五分咲きと言ったところだろうか?それでも一瞬心奪われていた。