オンリーゴッド

ニコラス=ウィンディング=レフン監督作品『オンリーゴッド』(原題:ONLY GOD FORGIVES)を観た。
『ドライブ』の主演及び監督による作品と聞き期待して観た。
しかし、本作は『ドライブ』のような判りやすさは無い。一体私は何を観終えたのか、という問いを帰り道、何度も頭の中で繰り返していた。

タイ、バンコク。ボクシングの試合に少年を送り込んだ最中、男たちは仲間たちと麻薬の取引をしている。赤と黒、どこからか漏れたネオンサインと影の中、男の兄は悪夢を予感している。売春、暴力、男の兄は売春宿を巡り若い10代の女を抱こうと希望するも支配人が拒否すれば瓶ビールを頭に叩きつけ、道で客引きする女とアパートメントに入る。血、黒、男の兄は女を殺し、うなだれている。警察が来ても慌てる事も無い。それを観た中年の警察官は女の父を呼びつけ、部屋に入れる。父は言い訳をするも抗せず、男の兄を殺す。警察官は背中から刀を取り出し女の父の腕を刎ねる。
男は兄を殺した男を探す。しかし、女の父から兄もまた女を殺した事を知る。男の母は、兄を殺した男を殺せと命じる。男は中年の警察官の存在を赤と黒の世界で察している。しかし母はそれを知らない。刺客たちは返り討ちに会い、中年の警察官と格闘するも無残に敗れる男。中年の警察官を襲うべく自宅を訪れた男、一方母の元へ現れた中年の警官。男は警官の娘を殺さず、中年の警察官は刀で母の喉を突く。再度相見えた男と中年の警官、男は拳を二度握り、その両腕を中年の警官に差し出す…。

中年の警官は抗えない運命、「ノーカントリー」の暗殺者のような者なのか。そう解釈する事によってこの物語を回収する事は可能かもしれない。しかし、それは違うと感じている。怪しく浮かび上がる、感情移入する事も出来ない登場人物たちの間に、滑り込みながら、没入する事も無く、理解も出来ず、彷徨う感覚―これがこの映画なのだと感じている。



エンディングテーマが格好良かったのでサントラを購入。中年警官が歌う歌謡曲も収録されており、物好きな人は購入すると良いと思った。