老ヴォールの惑星

小川一水著『老ヴォールの惑星』を読んだ。
TwitterのTL上で小川一水著「天冥の標」が面白いという評判だった。調べてみると「天冥の標」は全十巻の大作だと聞き、まず作品集である本書を手に取った。
本書は、

  • ギャルナフカの迷宮
  • 老ヴォールの惑星
  • 幸せになる箱庭
  • 漂った男

からの四作が収録されている。
小川一水はSF作家であり、SF特有の気持ち悪さのようなものは「幸せになる箱庭」で味わえる。他三作はヒューマンドラマ的な結末があり、誰でも楽しめると思う。
私が面白く読んだのは「ギャルナフカの迷宮」と「漂った男」である。普通の人の悲哀が描かれる物語はジャンル関係無く面白い。
「ギャルナフカの迷宮」は思想犯が送り込まれた、思想犯と言っても私たちの感覚ではたかがしれているのだが、迷宮の中で思想犯同士のサバイバルが始まる…物語かと思いきやというお話。
「老ヴォールの惑星」は、熱風吹く海面の上で生活する知性体たちが、自らの絶滅の危機を知り、惑星外にコンタクトを取ろうとする物語。
「幸せになる箱庭」は、地球外生命体とのコンタクトを取る物語なのだが、トランザウトなる仮構世界を体験する技術が物語の核心を担う。
「漂った男」は、偵察機の墜落により栄養価が高いジェル状の海しかない惑星に落ちた男が、通信機を頼りに無人の惑星を生き抜くという物語。

この後、「天冥の標」の既刊一気読みが始まった。