栗原裕一郎著『〈盗作〉の文学史』を読んだ。
本書は文芸作品に関する盗作事件を収集、分析、検証したものである。
それでは盗作と何なのか。著者によれば「「盗作」にしろ「剽窃」にしろ、いずれも俗語だから、明確な定義は持っていない。」という*1。
もし明白な客観的な基準があるとすれば、著作権侵害が認められた時という事になる。
では、文芸作品における著作権侵害が認められた事があるのか。その答えは「無い」である*2。
これは「文章における著作権侵害に対する司法判断は、一般通念をはるかに超えて基準が高い。」為である*3。例えば川端康成「雪国」の冒頭一文には著作権が無い―創作性を欠いている、と司法では判断されるのだ*4。
では、文芸作品における盗作、剽窃、無断引用とは何なのか。それは私たちが作者のモラルを問題としているという事になる*5。
明治時代の出版事情からなる盗作事件、プロレタリア文学の作家グループの盗作事件、ネットを端に発した盗作事件等、非常に面白くお勧めである。
- 作者: 栗原裕一郎
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2008/07/01
- メディア: 単行本
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