ノルウェイの森

トラン=アン=ユン監督作品『ノルウェイの森』を観た。
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読み、映画になった本作を観ようと思いたった。
公開当時の感想をTwitterで観る機会はあったのだけど「直子の足が早い」、「ハイコンテクスト」、「当時の状況が背景としてきちんと描かれている」、「BGMが良い」というもので、実際に観賞したところ、概ねその通りだなと思った。
原作の大体の筋を憶えていたが、やはり映像として背景が映し出される事によって、1968年の雰囲気がよく判る。私の小説の読み方が悪いのかもしれないが、村上春樹を読む時、さらりと描かれた当時の状況はほとんど意識出来ていない。騒々しい学生運動をかわしていく主人公の姿を小説から読み取る事は出来ていなかった。
またこれも印象の問題なのだが、主人公が、直子を引き受ける事を自らの責任と捉えている事、友人キズキの自殺を「お前が諦めた人生を俺は生きていかなければならない」と自らを叱咤する事、自らも精神的にかなりこたえている事、等を語る姿に「ノルウェイの森」の、小説ではスルーしてしまったであろう主人公の痛みを認識する事が出来た。
雨、草原、池など、湿度までを感じさせる映像は情感を動かしてくれる。
演じている人もどれも初々しさがあり、直子を演じた菊地凛子は「実際どうなのか」と思ったのだが可愛らしく全く問題にならなかった。実はレイコさんを誰が演じているか知らなかったのだが霧島れいかという綺麗な女性が演じており、これも問題なかった。
以上の通り、丁寧につくられた映画で非常に好感を持ちました。