凧あげの思い出

スーパーからの買い物帰りがてら、空にひらひらと舞う影を見つけた。
最初は飛行機かと思ったが、ふと凧だなと判った。自宅に戻り荷物を置き。凧揚げがされているであろう公園に散歩がてら出向いた。
高さは様々ながら小さな子どもから大人まで凧あげをしていた。数にして20枚ほどの凧があがっていた。和凧もあればカイトもあった。
空を見上げながら公園をふらふらして持っていた携帯端末で凧を撮る。しかし距離が遠い事もあって写真には小さな影が映るだけである。
よくよく考えてみると都内で凧あげを見るのは初めてかもしれない。かといって上京するまで凧あげをよく見掛けたかといえば余り思い出せない。
腰掛けて凧を見上げる。ビニールの尻尾がひらひらと空中で凪いでいる様子は見ていて飽きない。
凧を眺めながら、小さな時に凧あげをした事を思い出した。
家の前にある公園で独り凧あげに熱中していた。しかし凧をあげる事に飽きてしまうと、もっと面白い凧あげはないかと考えた。
そこで思いついたのが、凧糸を自分の首に巻き凧をあげる事だった。今考えればどうしてそんな事を思いついたのだろう。思いついたとしても何が起きるか位わかりそうなものだ。しかし、当時の私は結果を予想する事が出来なかった。

似たような事は何度かあった。
たんぽぽの綿毛は吹けば飛ぶが吸えばどうなるだろう。そう思った私は思い切りよくたんぽぽの綿毛を吸った。すると鼻と口に綿毛を吸い込みゲホゲホとむせ返った。私は顔を鼻水とよだれまみれにしながら綿毛を吸った事を後悔したのだった。線香花火を終えた直後に先端を触るとどうなるだろうと指で触り手に火傷をして後悔した事もあった。

私は首に凧糸を巻きつけ、凧を飛ばす為に走った、すると凧糸が首をするすると締め付けていった。そして凧があがろうとするところで凧糸の摩擦で首に痛みが走った。
私は痛みに驚き慌てて首から凧糸を外した。そして首を手で触った。すると首を一廻する痛みの筋がある事に気がついた。
首に傷が出来ているだろうか。親に傷の事を聞かれるのだろうか。そして怒られるのではないだろうか。私は不安になった。
同時に家族にこの事を話してみたいという気持ちも少しあったのだった。

果たしてその後、家族に首の傷を尋ねられたのか、自分からこの話をしたのかは憶えていない。
しかし私はたんぽぽの綿毛を吸った事や花火で火傷した事やこの凧あげの事を思い出すたび、当時の私が物事の因果関係とか、そういった事とは関係無いところで行動していたのだなと思うのだった。

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