『ロスコの部屋』

過去に『イースタン・プロミス』という映画について語る際、「イコン」に少しだけ言及している。
これは大学時代に現象学の講義で見知った事をそのまま書き綴ったものだが、イコンと現象学の関連性を講義で受ける中、ロスコの壁画はイコンと同じように志向性のまなざしを飽和させる、と観に行く事を勧められた*1

都内から総武線・総武本線を利用して川村記念美術館の最寄り駅である佐倉駅へ。
佐倉駅から美術館行きの無料送迎バスが運行しており、それを利用した。
学生時代、佐倉駅は通学経路だったのだが、電車から無料送迎バスに描かれたレンブラントの「広つば帽を被った男」をよく見送ったものだった。

川村記念美術館の『ロスコ・ルーム」の展示方法は有名で、記憶によればNHKでその展示方法やロスコの壁画について、特集が組まれて放映されていたのを憶えている。

美術館に到着すると、土曜日にも関わらず、中学生が十数名おり、どうやら中学生の美術部御一行のようだった。

『ロスコ・ルーム』と呼ばれた部屋にはマーク=ロスコの壁画が七つ、部屋の周囲に飾られている。
抑えられた照明の中で、部屋の中央に設置された背もたれの無いソファに座り、七つの壁画と向き合う。
まず、視界からはみ出す距離に置かれた壁画に対して、壁画の巨大さに圧倒され、壁画を全体的に見る事が出来ない距離の為に、絵に対して焦点が合わせる事が出来ない。
意味を読み込む事を拒否されているという感覚。
この感覚は何と呼べばいいのか判らない。
とりあえず畏怖といえばいいのだろうか。
この部屋に座り続ける学芸員に「この部屋にずっと座っていると発狂しそうになりませんか」と質問したくなった。

『ロスコ・ルーム』だけでなく『ニューマン・ルーム』なるバーネット=ニューマンの壁画が展示されている部屋がある。
白い部屋に鮮烈な赤の壁画が印象的で『ロスコ・ルーム』とはまた違う趣がある。

その他にも巨大な壁画が展示されており、モーリス=ルイスの『ガンマ・ツェータ』という作品は意図的に絵と向きあえない工夫が施されており、奇妙な感じを味わった。

美術館を出た後、無料送迎バスが来る時間まで美術館付近の散策路を歩く。
睡蓮やら紫陽花が咲いており、写真を撮る人や絵を描く人が見受けれられた。
今回の写真もその散策路で撮ったもの。
中学生の美術部御一行は、芝生の上で昼食をとっており「まるでピクニックみたい!」と大きな声を出して、散策を行く人々の笑いを誘っていました。

『ロスコ・ルーム』だけでなくその他にも美術の教科書に載っていたあの作品たちが常設展示されており、興味深く見る事が出来ました。
大体、これで学生時代に興味を持っていた展示やら美術館に行った事になる。
さて次はどこへ行こうか?

DIC川村記念美術館公式サイト
http://kawamura-museum.dic.co.jp/nature/index.html

*1:ちなみにイコンについては色々聞かされて、別の教授なんかも昔のロシア人は自殺する際にイコンを携えて死ぬとか何とか…