7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想

城繁幸著『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』を読んだ。

著者によれば『若者はなぜ3年で仕事を辞めるのか』、『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか』に続く若者をテーマとした新書とした3作目であり最終作との事である。
本書では、日本町なる場所を舞台にして、大企業の窓際部長、昇進待ちの係長、派遣社員、新入社員、中小企業の社員等が登場し、現在の日本の現状とその処方箋について理屈とシュミレーションによって判りやすく説明している。
本書で主題になるのは、日本型雇用である終身雇用・年功序列の給与体系から、従事する仕事によって給与が変動する職務給にする事、雇用が流動化するように規制緩和を実施する事である。
ちなみに本書によれば、日本に於いて終身雇用、年功序列の給与体系は戦後に出来たものであり、高度経済成長期に判例が積み重ねれた結果出来た比較的新しいシステムとの事である。
上記の変更によって何が変わるのか、それは、

  • 性別、年齢に関係なく一律に一つの基準で働く同一労働同一賃金になる事。よって年齢や性別に関係なく能力によって賃金が決定する事になる。
  • 年齢による賃金モデルでなくなる為、新卒・既卒に関係無く就業出来るようになる。合わせて35歳以上の人間でも転職が容易になる事。

等である。
そしてこれらの実施によって少子化や世代間格差の問題等の解決になる事が説明される。
もちろん著者は雇用の流動化に合わせて、セーフティネットの用意が必要である事を説明している。
ただし、雇用の流動化の為の規制緩和の実施はいいのだろうけど、実際に法律として実施されれば、企業側に都合の良いように利用される可能性は危惧出来る。この問題に関して、本書では、中高年を急にリストラする事は出来ないし、中小企業で元々リストラを実施出来るような環境では無いと説明している*1。そもそも雇用が流動化していれば、新たに仕事に就くことも可能であるという事なのだろう。
んで、基本的にこういう事に対して賛成だし現状のまま何もしないよりした方が良いと思う。もちろんこれによって利益が得られる立場であるからこそだけど。少なくともドロップアウトした人間…そもそもこのドロップアウトという言葉自体、現状の終身雇用や新卒を追認する言葉なのだろうけど、そういう人間にも胸を張って「大丈夫」といえる世の中の方が良い。失敗や寄り道が許されない社会は行き詰まるし、生き辛い。もう少し風通しの良い場所に生きたいと思う*2


7割は課長にさえなれません (PHP新書)

7割は課長にさえなれません (PHP新書)

*1:たぶん中小企業でこの法律がどのように解釈されるのかがポイントだと思う。個人的にも。

*2:もちろん俺は割と論外な生き方しているし、首切りの対象になりかねない仕事の仕方していたので変わろうが変わるまいが、五十歩百歩という立場。