『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』を家で観た。青山真治監督作品。
『鈍獣』で浅野忠信の鈍い役を演じている姿を観ていたら、もっと浅野忠信を演技を観たくなった。そこでライブ演奏をしているシーンがあるという『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』を観ることにした。
自殺を促すレミング病なるものが蔓延する近未来、レミング病を抑える方法はある演奏家の音楽を聞くことだった。
この設定を知った時、思い出したのは村上龍の『五分後の世界』の続編、『ヒュウガ・ウイルス』だった。こちらの本ではあるウイルスを抑える方法が、確か死に直面するような事態を経験することで免疫を持つ、ということだったと思う。
しかし『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』で面白いのはウイルスを抑える音楽がいわゆるノイズ・ミュージックであるという点だ。
この演奏家役を浅野忠信、中原昌也が演じている。中原昌也を私は小説家だと認識しているが、その他の活動では音楽家、映画評論家があることは知っていた。たぶんこの映画ではその音楽活動との関係から出演したのだろう。動く中原昌也を見て、普通の人なんだなと思った*1。役も結構脆い人物を演じていた。宮崎あおいも出演しているが、確か六月公開予定の映画『劒岳 点の記』では浅野忠信との夫婦役で共演するはずだ。
映画はノイズ・ミュージックの音源を集める姿と演奏がほとんどである。風景は車の行き交いもあまりない閑散とした場所が映される。時たま電柱には首を吊った死体がぶら下がっている。こういう風景を見ていると正直興奮してしまう。私の荒廃した近未来のイメージはまさにこういうものだからだ。たぶん椎名誠のSF小説のイメージが私にとって近未来の世界なのだ。
映画のクライマックスでもある演奏シーンは、広々とした野原で行われる。映画のクレジットには「ライブパフォーマンス 浅野忠信」となっていたから、音楽活動を行う時とあまり変わらない浅野忠信のライブパフォーマンスなのだろう。演奏技術などについての上手さは私にはわからないし、それがノイズ・ミュージックならなおさらわからない。私はただひたすらその音を聞くしかない。高音の悲鳴のような音、音の重なりを聞きながら、一体これが何を意味するのだろうと思った。ただ、これがただの騒音ではなく、まとまりのある一つの音楽だと認識出来るのから、不思議なものである。
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*1:笑