勝田文著『かわたれの街』『しゃべれどもしゃべれども』(原作佐藤多佳子)を読んだ。
勝田文の漫画は基本的に大好きであり『あのこにもらった音楽』『あいびき』『Daddy Long Legs』とほとんど読んできている。勝田文の魅力は著者自身が認めるように適当で、ファジーで、ゆるいということに尽きるのである。
その観点から見ると『しゃべれどもしゃべれども』は原作の影響が強いのか、割としっかりとした内容になっているように感じた。おそらく『Daddy Long Legs』のようにおとぎ話に落とし込めなかったのかもしれない。とはいえ落語的な世界と勝田文の趣味嗜好の相性は良いから、読めてしまうのである。
一方『かわたれの街』は恐ろしいくらいゆるいのでびっくりしてしまった。正直一読した後、あまりの内容のなさに苦笑いをした。といいながら何度も読み返していると、内容のなさに反比例して情感に溢れていることを発見するのだった。登場人物の粋なやり取り、小道具が雰囲気を醸していくのである。そしてそれを求めて何度も寝る前に読み返している始末なのである。
と同時にこの懐かしがる感じが、昔は良かった、という感じにつながってしまうのではないかと自らに危惧しているところだ。懐かしがるには早すぎる。
(20081103)
はてなキーワードにこんな勝田文の漫画を評してこう書いてあった。
「楽園としての中間領域=失われた地域社会/ムラ/下町」を、日本の伝統文化を織り交ぜてやわらかく描くことに定評がある。 はてなキーワード 『勝田文』より
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