ブラッド・ダイヤモンド 

『ブラッド・ダイヤモンド』を観てきた。
映画を観ている途中、ふとコンラッドの『闇の奥』を思いだした。『闇の奥』が『地獄の黙示録』に影響を与えているのは有名な話だ。そしてこの作品も製作者の意図しないところで『闇の奥』の流れをくんでいるのではないかと思った。もちろん、これは私の強引過ぎる考えだと思う。この考えが浮かんだのは、ダイヤ密売人と貴重なピンクダイヤモンドの在り処を知る黒人漁師がダイヤを求めてひたすらアフリカの大地を歩くシーンであった。白人が黒人を連れる―そんなシーンが『闇の奥』とリンクしたのであろう。もちろん細かいところは全く違う。『闇の奥』では白人は黒人を奴隷として連れていたが、この作品では、序盤白人である密売人は、ダイヤの在り処を知る黒人と「ビジネス」として関係を結んでいた(しかも密売人が圧倒的有利な状況下で―ある意味奴隷的か)。しかし、私が『闇の奥』を思い出したシーンでは利害関係のそれは現われていないように思われる。ただ、ここではまだダイヤがその関係をつないでいる。二人の関係が試されるのは、ダイヤを手に入れたその後だ。そしてそれがこの作品を『闇の奥』と決定的に別物であるということを表している。この終盤のシーンがあるからこそこの作品が『闇の奥』にリンクするという私の意見が強引であり、撤回しなければならない理由である(そもそも『闇の奥』は黒人との関わりを主題にしているわけではない。でも象牙に執着するクルツは、密売人、彼を育てた大佐にも観て取れる。昔も今もアフリカを食い物にしている姿は変わらない、そんなことが二つの作品からみてとれる、って話がまとまらないなぁ)。

その他、アフリカの国々の内戦、レジスタンスの実態、少年兵、それに関わる先進国の搾取、これらが切っても切れない関係であること描かれる。特にラスト、現在のアフリカの少年兵の問題を取り上げ私たちに提起している。この作品はもちろんフィクションだが、フィクションであるがゆえに、密売人がいう「TIA(this is africa)」が描かれている。 

闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)

闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)