トロイカ物語

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『トロイカ物語』を読んだ。

「月曜日は土曜日に始まる」の続編にあたる作品。ただし訳者あとがきの通り、本作は二度発表されており、1968年シベリア地方文芸誌「アンガラ」に掲載された作品と1987年「スメナ―」に掲載された異なる内容のものがある。本書はこの二作の邦訳が収録され、細部の違いを楽しめるにようになっている。

異常現象の合理化と活用に関する三人委員会(トロイカ)が権力を握ったコロニー。プログラマーであるプリワーロフはブラックボックスを、エジクはお喋り南京虫を手に入れるべく、この委員会に出席する。この委員会ではあらゆる異常の存在する権利を審査していた。しかし実際にそこで行われていたのは凡庸な人々の官僚主義的で保守的なお役所仕事だった。プリワーロフはブラックボックスを手に入れるべく申請するも唯の黒い箱がブラックボックスだと決めつけられ、お喋り南京虫は自らを認めてもらうべく委員会で演説するも捻り潰されそうになる。その他、人間を尊敬する雪男、地球に不時着してしまい元居た場所に帰れなくなった詩の読者である宇宙人、翼竜、首長竜、過去の文献を読みたがる巨大なタコの妖怪等が登場する。

本書は官僚主義や保守主義を風刺した作品だったため体制批判とみなされアンガラは発禁処分となり編集部全員が首になってしまった。ストルガツキー兄弟はその後作品を発表する場が少なくなった。この時期アルカジーは翻訳で生活するしかなく、深見弾はアルカジーに義経紀等の資料を送って激励していたいう。

トロイカ物語

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