読書

幽霊殺人

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『幽霊殺人』を読んだ。雪山の山荘を訪れた警察官が事件に巻き込まれ、その真相を突き止めるという内容である。 つまりミステリーであるが、そこはストルガツキー兄弟の作品であり、真相に関わる部分はSFの設…

滅びの都

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、佐藤祥子訳『滅びの都』を読んだ。 「都市」がある。この「都市」は「実験」を目的としている。「「実験」のための「実験」」だと本書では語られる。都市にはロシア人・ドイツ人・ユダヤ人・中国人・日本人と人種や国…

『天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART1』

小川一水著『天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART1』を読んだ。『天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク PART2』の続刊。遂にⅨ巻まで来た。 既に本書の続刊である『天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART2』が刊行されているが、以下から本書の内容に…

巨匠とマルガリータ

ミハイル=A=ブルガーコフ著、水野忠夫訳『巨匠とマルガリータ』を読んだ。ある春のとても暑い日、モスクワの公園で作家兼文芸雑誌の編集長と詩人がキリストの実在性について語っている。詩人は編集長に依頼されたキリストの存在を否定した詩を完成させたも…

ちょっと今から仕事やめてくる

北川恵海著『ちょっと今から仕事やめてくる』を読んだ。たまたま先輩の社員から「読んでみる?」と渡されて読む機会を得た。常日頃仕事を辞めたいと思っていたからちょっと興味が惹かれる題名ではある。内容はタイトルの通りいわゆるブラック企業に勤める主…

民主主義

文部省編『民主主義』を読んだ。 一年程前、社会学者である西田亮介の「社会に政治を理解し、判断するための総合的な「道具立て」を提供せよ―文部省『民主主義』を読んで」という記事にて本書を知った。上記の記事や下記にリンクした記事から18歳以上に選挙…

波が風を消す

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『波が風を消す』を読んだ。マクシム=カンメラーが活躍する三部作の第三作目であり、異文明接触委員会が登場するNoon Universe〈未来年代記〉シリーズの一つでもある。『世界終末十億年前』に訳者による長中…

蟻塚の中のかぶと虫

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『蟻塚の中のかぶと虫』を読んだ。マクシム=カンメラーが活躍する三部作の第二作目であり、異文明接触委員会が登場するNoon Universe〈未来年代記〉シリーズの一つでもある事は『収容所惑星』でも触れた通り…

収容所惑星

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『収容所惑星』を読んだ。マクシム=カンメラーが活躍する三部作の第一作目であり、異文明接触委員会が登場するNoon Universe〈未来年代記〉シリーズの一つでもある。この未来年代記にあたる他の作品に「神様…

世界終末十億年前

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『世界終末十億年前 異常な状況で発見された手記』を読んだ。二世紀振りの猛暑、「ありきたりの天体物理学に恒星力学。恒星と拡散物質の相互作用。」を研究する天文学者マリャーノフはある一つの発見をしよう…

トロイカ物語

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『トロイカ物語』を読んだ。「月曜日は土曜日に始まる」の続編にあたる作品。ただし訳者あとがきの通り、本作は二度発表されており、1968年シベリア地方文芸誌「アンガラ」に掲載された作品と1987年「スメナ―…

月曜日は土曜日に始まる

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『月曜日は土曜日に始まる 若い科学者のための物語』を読んだ。プログラマーである青年プリワーロフは旅の道中に二人の男性と出会う。男たちはプリワーロフの仕事を知るとちょうどプログラマーを探していたと…

Jazz The New Chapter 3

柳樂光隆監修『Jazz The New Chapter 3』を読んだ。 「1」と「2」を読み去年聴いた音楽にとても影響があった。本書で紹介されているものは大半は未視聴であり、主要なものについてはこの機会にリンクを貼り視聴する事にした。結果として2曲取り上げているア…

モスクワ妄想倶楽部

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、中沢敦夫訳『モスクワ妄想倶楽部』を読んだ。モスクワ在住の作家は所属する作家倶楽部から原稿を幾つか持って研究センターに行くよう命じられていた。研究センターでは何やら作家の原稿に関する研究が行われているら…

みにくい白鳥

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、中沢敦夫訳『みにくい白鳥』を読んだ。雨が降り止む様子は無い。作家ヴィクトルは娘が大人のように話している事に気がつく。妻によれば娘は濡れ男のところに出入りするようになったという。濡れ男について余り街の人…

そろそろ登れカタツムリ

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『そろそろ登れカタツムリ』を読んだ。森は深く広く誰も何も理解出来ずにそこにある。森に建てられた研究所を舞台にしたペーレツ編と森でさまよい暮らすカンジート編で本書は構成されている。実際本書が発表…

地獄から来た青年

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『地獄から来た青年』を読んだ。惑星ギガンダではアライ公国と帝国が血みどろの戦争を繰り広げていた。アライ公爵に忠誠を誓う公国特殊部隊ファイティング・キャットのガークは突破された前線にて守備につく…

完全な真空

スタニワフ=レム著、沼野充義・工藤幸雄・長谷見一雄訳『完全な真空』を読んだ。スタニワフ=レムによる架空の書物の書評集であり、メタフィクションの傑作として知られている。「短篇ベスト10」で紹介した通り、読者投票では本書から五作品が選ばれている…

ソラリス

スタニワフ=レム著、沼野充義訳『ソラリス』を読んだ。飯田規和訳はロシア語からの翻訳になるらしいのだが、そのロシア語版は編集サイドの自主的な検閲により一部削除された箇所があるという。沼野充義訳はポーランド語版からの翻訳になり、国書刊行会から…

『天の声・枯草熱』

スタニワフ=レム著、沼野充義・深見弾・吉上昭三訳『天の声・枯草熱』を読んだ。スタニワフ=レムの長篇二編が収められている。 天の声 偶然発見された地球外からの信号を研究する為に一流の科学者達が集められた。しかし信号の一部を解読して出来たのはコ…

泰平ヨンの未来学会議

スタニワフ=レム著、深見弾・大野典宏訳『泰平ヨンの未来学会議』を読んだ。アリ=フォルマン監督が本作を原作に「コングレス未来学会議」として映画化している。映画を観たのだが、メタ的な視点やドラッグがもたらす幻覚をアニメーションで描く等面白い演…

短編ベスト10

スタニワフ=レム著、沼野充義・関口時正・久山宏一・芝田文乃訳『短編ベスト10』を読んだ。ポーランドのSF作家スタニワフ=レムの短篇集。読者投票、編者、レムによって選ばれた短編十五作の内、十篇を邦訳したものとなっている。翻訳者の一人である沼野充…

ゼロからトースターを作ってみた

トーマス=トウェイツ著、村井理子訳『ゼロからトースターを作ってみた』を読んだ。 翻訳者のブログやtwitterがとても面白く、どんな作品を翻訳しているのか興味を持ったのが本書を手に取った理由である。本書はイギリスの大学院生が卒業制作の為にゼロ―原材…

知的生き方教室

中原昌也著『知的生き方教室』を読んだ。 アベノミクス、オリンピックで息を吹き返した作家の件に腹を抱えて笑った。 また居酒屋経営のゴローちゃんの件も笑った。 更にダンサーやらキーボード奏者の単独リサイタルを開催するも客無しに笑った。 笑う以外に…

寺田寅彦を読む

寺田寅彦著『コーヒー哲学序説』『数学と語学』『カメラをさげて』『映画と生理』『わが中学時代の勉強法』『映画芸術』『秋の歌』を読んだ。 『〈わたし〉の哲学 オートポイエーシス入門』にて寺田寅彦が取り上げられていたものの、作品を読んだ事が無かっ…

風立ちぬ

堀辰雄著『風立ちぬ』を読んだ。 本書を読んだのは宮﨑駿が本作に着想を得て制作した同名の映画の影響だ。実際どのような作品なのか興味を持ったのである。 読んでみると「お前は…」と婚約者の問い掛けから始まり高原の風景描写が続き、また婚約者の結核の病…

浮雲

二葉亭四迷著『浮雲』を読んだ。 本書は言文一致体で書かれた近代日本小説の始まりとして知られるのは誰もが学校の授業で習い知っている。実際、読み勧めると軽妙な語り手が存在し物語の進行を務めており、これは戯作と呼ばれる通俗小説の影響だと言う。 さ…

『イスラム国の正体』『イスラム国の衝撃』『イスラム国とは何か』

国枝昌樹著『イスラム国の正体』、池内恵著『イスラム国の衝撃』、常岡浩介著(聞き手高世仁)『イスラム国とは何か』を読んだ。 上記三冊は日本人が人質となり殺害された後に読んだものである。この事件の経過は主に『イスラム国の衝撃』の著者のブログを参照…

『Jazz The New Chapter』『Jazz The New Chapter 2』

柳樂光隆監修『Jazz The New Chapter ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平』『Jazz The New Chapter 2』を読んだ。 『Jazz The New Chapter』では、Robert Glasper*1 を起点として90年代以降のジャズ史が語られている。ここで Robert Glasper に…

渚にて

ネヴィル=シュート著佐藤龍雄訳『渚にて』を読んだ。 オーストラリアの陽が射すビーチにて、人々は水着姿でぼんやりと放射能がやってくるのを待っている。そんな気怠い物語をイメージしていた。しかし本書は全くそのような物では無い。放射能が南下するなか…