2018年5月20日/変身譚

死ぬこと以外に人間を辞める方法を考えると、山月記における李徴は虎になれて良かったのではないか。李徴の不幸は虎になった後、人間として意識を保っていたことである。人間として意識を保っていたのは、物語が成立するための要請であり、李徴が人間であった自分を反省するための要請でもある。李徴は自らが虎となった理由を人間であった頃の自らの精神性に由来すると考え、当惑した上で以下のような考えを思い付いては呟き、直ぐに捨て去る。

「一体、獣でも人間でも、もとは何か他ほかのものだったんだろう。初めはそれを憶えているが、次第に忘れて了い、初めから今の形のものだったと思い込んでいるのではないか?いや、そんな事はどうでもいい。」中島敦 山月記より引用。

2018年4月30日/変身譚

「気が付くと(省略)既に虎となっていた。自分は初め眼を信じなかった。次に、これは夢に違いないと考えた。夢の中で、これは夢だぞと知っているような夢を、自分はそれまでに見たことがあったから。どうしても夢でないと悟らねばならなかった時、自分は茫然とした。そうして懼れた。全く、どんな事でも起り得るのだと思うて、深く懼れた。しかし、何故こんな事になったのだろう。分らぬ。全く何事も我々には判らぬ。理由も分らずに押付けられたものを大人しく受取って、理由も分らずに生きて行くのが、我々生きもののさだめだ。」中島敦 著「山月記」より。

ふと、中島敦の山月記を出勤中に読んでいたところ、上述の引用部を読んで思わずため息が出てしまった。学校の授業を経験した後であれば「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」が何たるか問われたことを思い出すものの、上述の一文のことは全く忘れていた。カフカの「変身」におけるグレゴリー=ザムザは自らが虫になったことを問わない一方、上述の主体である李徴は虎になったことを恐れながらも虎になった不条理を受け入れてしまっている。

今日はおそらく満月なのだが薄い雲が空を覆っているために拝むことができない。

2018年4月18日/春の功罪

オレンジ色の夕陽が沈もうとしている。しかしながら、茨城県の片道一車線の高速道路の渋滞に巻き込まれている状況のため、余り完璧なロケーションでは無い。美しいと感じるのは自らの慰めのためでは無いかと思われた。

オレンジ色の夕陽が美しいのは孤絶しているためであり、孤絶しているが故に人を肯定しているようにも思えるのでないか。人は必ずしも関わり合いになることだけで肯定を得られる訳で無く、距離を置くことで肯定されるのではなかろうか。私と夕陽は限りなく断絶されている。陽が沈み辺りは暗闇に包まれた。しかしながら、陽はまた昇るのである。

岡山行きの新幹線に乗り、一ヶ月前の出来事を振り返ろうと試みて、スマートフォンを手に取る。新幹線の指定席が満席である事が告げられる。車両の各所に座る外国人観光客の言動は他から浮き上がって見える。

医師の診察が終わるまで待合室で過ごす。診療時間を過ぎた待合室には誰もいない。そこに小さな子供を連れた女性が入室する。医師が診療室から顔を出し、子供を招くと子供は母親の後ろに隠れてしまう。先生に対して挨拶するよう母親は子供に促している。

オルゴールでアレンジされた音楽が鳴り続ける待合室。事務員も子どもの対応の為に診療室に赴いている。待合室で書類を確認しながら、自らの仕事の意味をぼんやりと考える。私の仕事は常に事後の確認でしかない。一方、医師はあの小さな子どもの将来に寄り添うことができる。別に医師になりたかったという訳ではないし、なりたいとも思わない。しかしながら、職業を選択する時、将来や未来に直接寄与する在り方を検討する必要があるのかもしれない。

客から督促の連絡が入る。事務方の都合上から休日に仕事をするしかない。土曜日は午前中に仕事が入っている上、午後には友人と上野で花見を予定している。なかなかタイトなスケジュールだと思う。

仕事を終えて電車を乗り換える。休日の外出を楽しむ人々が羨ましい。

友人と上野で花見をする。以前は毎年していた花見は紆余曲折を経て久しぶりの実施になった。桜は既に散り始めていたものの、場の喧騒は以前と変わらないように思えた。一方で集まった友人とも語り合う話題が事欠いていているようにも思えた。誰もが傷付かずに話題にできる話はとうに無くなってしまったのだと思う。

荒川沿いの桜並木に集まる人々に混じりながら駅に向かう。老人、小さな子どもを連れた母親、若い男女が見受けられる。川を下る船、岸の向こうの高速道路を車両が急ぐ。異なる時間がそれぞれの場所で流れていく実感を得る。

昼間の電車の人の疎らな車両の端で、中年の男性が大きな声で何事かを語っている。珍しく私はイヤフォンをしていなかったものの、走る電車の音が男性の話す内容の細部を掻き消して行く。見て見ぬ振りをされる男性は二駅程で車両を降りて行った。

デヴィッド=ギルモアのTシャツを着た外国人男性が新幹線の座席で右往左往している。ここは熱海と新富士駅の間、三島駅である。今日はとても暑くなると同僚たちが話していた。暑い四月である。

天気が悪い時に限って外回りをすることになる。仕事を終えてコンビニの軒先でぼんやりしていると小さな制服姿の子どもを連れた若い男女を多く見掛ける。どうやら卒園式があったらしい。

記憶を遡る。

診察室に掲げられたテレビに流れるパラリンピックの映像。一本のスキー板とストック二本で上半身を制御して失速せずにカーブを曲がる選手たち。日本人の選手のメダルが決まったことが判った。

有料の出会い系サイトを使用した後、婚活マッチングアプリに有料で加入した。プロフィール欄を任意の部分を含め全て正直に埋め、尚且つ数少ない顔写真も載せた。仕組みはこちらが女性に対して興味ある旨をポイントを使用して伝え、相手から了承を貰った後、メッセージの交換が出来るというものである。とりあえずこちらからアクションを起こさなければ始まらない。女性のプロフィールを熟読しながらポイントを使用していった。おそらく100人近くに興味がある旨を伝え、了承を得られたのは10名程だった。ある程度の予測はできたことであるが、女性に取捨選択されることで自らの価値が判り、客観的になることができるシステムだと思う。また、女性たちのプロフィールを眺めながら、思った以上にハイスペックで一般的に魅力的と言われるであろう女性が多いと思った。
その後、複数回のメッセージをやり取りした後、女性と会うに至った。少なくとも出会いを求めるのであれば、婚活マッチングアプリを使用することは一つの手段として有効だと思われた。

2018年3月2日/オーバードライブ(所持金の下限)

午後11時、残業からの帰りにデジタルサイネージで戯れる石原さとみをぼんやりと眺める。何を話しているのかとスマートフォンを取り出して広告の動画を視聴したところ、石原さとみが東京マラソンの選手を応援する言葉を考え、画面越しに頑張ってと声を掛けてくれるというものだった。それはともかく、どうにも耳に残ったBGMを調べたところ、歌い手は佐藤千亜姫と金子ノブアキと小林武史となっており、題名は「太陽に背いて」とある。なるほど、歌詞を聴けばメトロでの出会いを歌っているようにも解釈することはできる。ベタにジャジーなリズムが気に入り、何度も聴いている。

友人の営業を信頼して保険を契約しているが、最近の仕事の成果が悪かったこともあり、収入に対する支出が多過ぎて金欠になった。正直、病気にならなければ割に合わないと思う。

金欠で新たな音源の供給が無くなったため、スマートフォンに入った音源をランダムで再生して気を散じている。学生時代に聴いたプログレッシブロックは再聴すると新鮮である。Pink FloydにInterstellar Over Drive という曲があり、そんな題名の曲だったのかと驚くが、シド=バレットの影響下にあるアルバムの為、ドラッグによる宇宙遊泳を指すのではないかと思う。

綾辻行人の暗黒館の殺人を読み終える。非常に長い作品だが館シリーズにおいて非常に重要な作品であった。金欠になった手前、今後は余裕ができるまで積んでいた本を読み進めようと思う。

仕事で通っていた高校付近を訪ねることになる。帰りには両親が住む家も訪ねた。しかしながら、故郷とは遠きにありて思うものであった。

お金が無い程、空しく情けない気分になるものは無い。

2018年2月7日/出会い系

コンビニでIQOS本体が販売されていたため、購入する。ちなみにIQOSはフィリップモリスが販売しており、煙草のブランドはマルボロになる。煙草を燃焼させると香ばしいシナモンスティックのような匂いがあり、不味いし臭いというのが第一印象であった。また、普段は吸わないメンソール系を試したところ、燃焼した匂いとメンソールのにおいが相まって特に不快感が強い。とはいえ、使用を続けたところ、慣れてしまった。

コンビニでPloom TECHが販売されていたため、購入する。 ちなみにPloom TECH はJTが販売しており、煙草のブランドはメビウスになる。使用してみると水蒸気を吸っている感覚で匂いが無く、延々と吸い続けてしまう。

未だgloは使用していない。

石井ゆかりの星占いにさっと目を通してようやく今年というものを考える時間を得る。全く柄じゃないが。

無料の出会い系アプリを試した。概ね私が使用したアプリの構成はオープンな場所からコンタクトを取り、互いにしか見えないチャットへ移行するというものだった。一応、アイコンは自画像を使用したが、結局チャットとは言えコミュニケーションであり、相手の返事を待つのが煩わしく進展は一切無く、自らの不甲斐無さが良く理解出来た。

山田洋次の隠し剣鬼の爪とたそがれ清兵衛を再視聴した。どうしてもたまに観たくなる作品である。

日曜日の早朝からレンタカーで群馬県まで向かう。営業所に集まり行楽に心高ぶらせる若者の集団が眩しくも煩わしい。

雪が降った。さっさと帰れば良いものをだらだらと仕事を続けた結果、時間間隔の調整を各駅で続ける電車に乗る事になった。同僚の飼い犬の話を聞き続けたところ、犬の名前は「うどん」というらしい。笑ってしまった。

レンタカーを借りて都内から横須賀を越えて三浦半島に入る。

地下鉄の構内を薄化粧の女性が小走り、はらり、膝丈まで伸びたツイード調のジャケットのセンターベントがめくれベージュの下地を垣間見る。

同業者と共に客先へ向かう。どうにも遠回りな説明をする専門職、直裁で展開しない尋問にも似た質問をするもう一方の専門職…貧乏くじを摑まされていると思う。

寒さの為か、スマートフォンの電源が落ちた。地図アプリの誘導を失い、念の為に印刷した地図を片手に静岡市街をさまよう。

有料の出会い系サイトを使用した。セックスを誘う女性は概して最後の交渉で援助と称して二万円を要求してくる。風俗に通う友人の説明するところによれば、二万円があればそれなりのサービスが受けられると言う。市場が変われば相場は変わるといったところか。有料であるから、女性に興味を持てば課金が必要になる。サイトによっては、女性はメールのやり取りを何度かすれば、得をする仕組みなんてのもあるらしく、やり取りが途中で終わるのも珍しくない。未だ女性と出会える気配は無い。

2018年1月10日/新本格ミステリー・ダーティハリー・三連休

綾辻行人の館シリーズを読み進めている。現在は第四作目「人形館の殺人」まで読み進めた。「人形館の殺人」において、梅沢事件なる説明があり、史実かと思いネットを検索したところ、島田荘司の「占星術殺人事件」が元ネタであることが判った。あとがきを読んだところ、ミステリーファンのための挿話らしい。この後、「占星術殺人事件」を読むことが決まった。

仕事柄、柄でもない場所に行き、事務職の管理職に胡散臭そうな目つきで見られることが多々ある。それは仕方無いことである。そこでヘマをやらかすと、それはもうあげつらってその場を離れるまで馬鹿にされてしまう。

三連休をひたすら眠り、腰を痛めながらダーティハリーシリーズを全て観終えた。父親が酒の肴にヘラヘラしながら観ており、その横でぼんやりと観ていたものである。改めて観ると、ダーティハリーことハリー=キャラハンはまともであり、作品の中怠みは逆に心地良いものであった。ハリー=キャラハンは自らの仕事について「新しい秩序が生まれるまで必要」と言った趣旨を説明している。おそらく新しい秩序は生まれなかったのではないか、「ノーカントリー」のようにコイントスのルールが世の秩序になってしまったのではないか。「グラン・トリノ」のように拳銃を捨てることになったのは、多分に後ろ向きな姿勢の中で生まれた希望なのではないかと思う。

『ゲンロン2 慰霊の空間』

東浩紀編『ゲンロン2 慰霊の空間』を読んだ。
読んだのが一年以上前になり、印象しか触れる気は無いのだが、面白かったのは哲学者カンタン=メイヤスーの著書『有限性の後で』に関する千葉雅也と東浩紀の対談「神は偶然にやってくる―思弁的実在論の展開について」だった。
しかしながら『有限性の後で』を読んでいない体たらくぶり。
次巻『ゲンロン3 脱戦後日本美術』を手に取り9/10は読み終えたのだが、如何せん読み終えることができないまま、ゲンロンの新刊に手を出せないでいる。
この辺りから哲学・思想・評論的な著作はほとんど読まなくなってしまったかもしれない。

ゲンロン2 慰霊の空間

ゲンロン2 慰霊の空間

  • 作者: 東浩紀,筒井康隆,中沢新一,津田大介,五十嵐太郎,市川真人,大澤聡,福嶋亮大,千葉雅也,海猫沢めろん
  • 出版社/メーカー: 株式会社ゲンロン
  • 発売日: 2016/04/27
  • メディア: Kindle版
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ゲンロン2 慰霊の空間

ゲンロン2 慰霊の空間

  • 作者: 東浩紀,筒井康隆,中沢新一,カオス*ラウンジ,新津保建秀,津田大介,藤村龍至,渡邉英徳,黒瀬陽平,五十嵐太郎,ボリス・グロイス,市川真人,大澤聡,福嶋亮大,さやわか,千葉雅也,クレイグ・オーウェンス,速水健朗,井出明,海猫沢めろん
  • 出版社/メーカー: 株式会社ゲンロン
  • 発売日: 2016/04/07
  • メディア: 単行本
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2018年1月2日/年の瀬の光景と新年の行動

乗り換えた電車で女性が座席に横になって眠っている。以前にも同じような光景を見たことがあったなと思う。

今年で約10kgの体重の上昇があったため、上司と共に年末に向けて減量を目標にしていたのだが三日坊主となり、体重が約3kg増えるという残念な結果になった。やはりジムに毎週通わなくなったことが大きい。問題は持ち前の怠惰さが前面に出ていることだろう。

今村昌弘の「屍人荘の殺人」を事前の仕込み無しで読んだのだが、クローズドサークルになる理由が本書を手に取る前の予想と一致していた状況だったため、面白さが半減したことは否めない。その後、新本格ミステリーというジャンルに興味が湧き、その元祖となる綾辻行人の「十角館の殺人」を読んだ。このまま館シリーズを全巻読破したい気分である。

仕事を納めた翌日の時間を睡眠に注いでしまった。

大晦日に起きると会社から支給されている携帯電話が鳴った。今年は仕事ばかりの1年だった。

大晦日は友人と年越し蕎麦を食べることになった。去年は深大寺の蕎麦となり、今年は麻布十番の更科蕎麦を食べた。行列に並ぶのは苦行だが店内で飲む熱燗は最高である。

2軒目の蕎麦屋の行列で先に並んでいたところ、目の前に並んだ家族が居た。その姉妹の一方がスマートフォンでドラマを観ていたところ、「パケットの無駄じゃん」ともう一方が咎め始めた。これに対して「えっ、皆50ギガずつでしょ。自分の経験を言われても…」と一方が返答したところ「お前は黙ってろよ」ともう一方が睨み返す。その後、家族のスマートフォンのパケット量の確認が始まる。年末の微笑ましい家族の光景に思わず笑ってしまう。

大抵大晦日の夜はさっさと寝てしまうのだが、今回は人の勧めもあり、近所の神社に初詣に行くことにした。境内に入ると出店の机で新年を祝う参拝客で溢れていた。人混みの中で過ごしていると若者のはしゃぎ振りが微笑ましいと同時に気分が冷めていった。このような心境をカラオケ店で年末休み無く働く友人に説明したところ「俺は年明け早々から酔った若者を相手にして来たんだけどな」とのことであった。

手を合わせども願掛けすることは無い。

スター・ウォーズ 最後のジェダイを観た。シナリオが不味過ぎなのではなかろうか。途中からその場面のみ楽しむように心掛けることにした。

年賀状が届いていた。

パソコンに向かってブログを更新する作業を続けている。

マチネの終わりに

平野啓一郎著『マチネの終わりに』を読んだ。

天才クラシックギタリストの男性と通信社で働く女性の恋愛を描いた作品。舞台は東京、バグダット、パリ、ニューヨーク。40代の苦悩や世界情勢や思想を絡めながら物語は進む。

当時は毎日新聞で掲載された後、noteに転載されるという仕組みになっていた。若手のアーティストとの競演が実施され展覧会もあった。当時は本書にどっぷり浸っており、当初はnoteで読んでいたものの、連載を先に読み進めたい余りに毎日新聞のアカウントを作成した始末。また、仕事終わりに展覧会にも足を運んだ。既に熱は冷めたが本書をきっかけにしてクラシックギターを聴く機会を得た。現在、平野啓一郎の作品を人に勧めるなら、本書を選ぶことは間違い無い。

何故に本書にそれ程引き込まれたのか考えるものの、明瞭な理屈は思い浮かばない。敢えて言えば、誰かに想いを寄せるようになった時の稚気めいた想い等を笑い飛ばすことも無く、登場人物の機微として描いているためだろうか。また分人主義をベースにした人間の狡猾さ、頑迷さを描き、悪人とも言うべき登場人物がいないためだろうか?

主人公がスランプに思い悩む重苦しさから、逃れ出て行く様が気持ち良い。また、差し迫ったソロ演奏の舞台を前にして主人公が亡くなった親友のギタリストと邂逅するシーンは、誰かの未来を幾分か支え得る生の重みを思いださせてくれる。

本書に登場するギター曲に興味が生じた場合、本書とタイアップした下記のCDを聴くのが良いと思う。

マチネの終わりに

マチネの終わりに

マチネの終わりに

マチネの終わりに

マチネの終わりに

マチネの終わりに

『スター・ウォーズ フォースの覚醒』

J=J=エイブラムス監督作品『スター・ウォーズ フォースの覚醒』を観た。

何で『最後のジェダイ』が公開中のなか、『フォースの覚醒』を話をしているのかと思わず笑ってしまう。既に『最後のジェダイ』を劇場で観たが、1年半年後くらいに感想をブログに書くことになるのではないだろうか。

かなり迷った末に観に行ったが、本作は過去の作品の内容を出し惜しみせずに使用している潔さがあって好感が持てた一方、違和感もあった。どうやら私は普通の感性を持っているらしい。

登場人物に関して言うと、カイロ=レンの物に対して八つ当たりをするシーンが2回程有り、非常に小物感が出ていた。ダースベイダーに成りきれていないことが強調されているのだろうか。

レイとフィンの仲の良さがイマイチ判らないのは、私が内容を忘れているからなのだろうか。

レイが可愛いという声がちらほら聞こえたのだが、デイジー=リドリーを画像検索した時の期待感の裏切りようは何なのだろう。

エピソード1~3並のライトセーバーのチャンバラが観たいのだが、やはりエピソード6以降のジェダイという設定では望めないのだろうか?

『デューン 砂の惑星』

フランク=ハーバート著、酒井昭伸訳『デューン 砂の惑星』を読んだ。

当時、ドキュメンタリー映画「ホドロフスキーのDUNE」の公開前後で、本作の映画化が構想されたものの断念した云々といった話をTwitterで良く見掛けたことや新装版の発売が本作を手に取るきっかけだったと思う。

封建体制が敷かれた宇宙でメランジなる特殊能力の源となる香料の原産地である惑星アラキスで繰り広げられる権謀術数と冒険活劇といった内容で、有名なサンドワームの元祖は本書になるようだ。

中世的な世界観に古臭さを感じなくも無かったが、緻密な設定が後々になって解消されていくようになっており、のめり込むようにして読んだ。

デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (上) (ハヤカワ文庫SF)

デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (上) (ハヤカワ文庫SF)

デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (中) (ハヤカワ文庫SF)

デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (中) (ハヤカワ文庫SF)

デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (下) (ハヤカワ文庫SF)

デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (下) (ハヤカワ文庫SF)

『ゲンロン1 現代日本の批評』

東浩紀編『ゲンロン1 現代日本の批評』を読んだ。
もう読んだのがかれこれ一年以上前になる。
そんな中でも印象に残っているのは亀山郁夫・東浩紀・上田洋子の「ドストエフスキーとテロの文学」になり、亀山郁夫が「新カラマーゾフの兄弟」を書き上げていることを知った。
その他に速水健朗「独立国家論」、コラム連載の辻田真佐憲「軍歌は世界をどう変えたか」、西田亮介「日常の政治と非日常の政治」が面白かった。特に西田亮介の連載は何度も読んだ記憶がある。
一応全てのページを読んでいるが、話題になった「現代日本の批評」は読むのが精一杯だったというのが正直なところ。

ゲンロン1 現代日本の批評

ゲンロン1 現代日本の批評

  • 作者: 東浩紀,鈴木忠志,大澤聡,市川真人,福嶋亮大,佐々木敦,安藤礼二,黒瀬陽平,速水健朗,井出明
  • 出版社/メーカー: 株式会社ゲンロン
  • 発売日: 2015/12/23
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ゲンロン1 現代日本の批評

ゲンロン1 現代日本の批評

  • 作者: 東浩紀,鈴木忠志,大澤聡,市川真人,福嶋亮大,佐々木敦,安藤礼二,黒瀬陽平,速水健朗,井出明,亀山郁夫,上田洋子,ボリス・グロイス,クレイグ・オーウェンス,海猫沢めろん
  • 出版社/メーカー: 株式会社ゲンロン
  • 発売日: 2015/12/04
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2017年の音楽

2017年に聴いた音楽を以下にまとめた(→2016年の音楽)

アルバムをCDなりダウンロードで聴いており、未だにApple Musicなり、Spotifyと言った有料配信サービスは利用していないが、twitter等を閲覧する限り音源が充実してきたという評判を目にするようになった。おそらく、今後は有料配信サービスを使用することになるのではと考える一方、Bandcampの使い勝手が非常に良く、大手配信サービスでは聴けない楽曲をBandcampでダウンロードして聴いていくのではないかと思う。

何というか、非常にわかりやすいベタなメロディに心が奪われることが多くなっている気がしており、それがどういった理由なのかは判っていない。

今年は小埜涼子のNEW DUO seriesを聴いた。また、去年から引き続きバッハの楽曲をクラシックギタリストの益田展行、河野智美、打楽器奏者の加藤訓子、五嶋みどりの演奏で聴いた。
なお、聴取回数を確認したところ、トップはけもの『めたもるシティ』より「めたもるセブン」、次点はJeff Parker『The New Breed』、後は横並びに猪居亜美『Black Star』、Frederic Hand『Odyssey』、ねごと『ETERNALBEAT』だった。印象と結構違う。
大西順子のアルバム2枚のリリースも嬉しく、過去に遡って聴いていきたいと思っている。
アルトサックス奏者の吉田野乃子が参加しているトリオ深海の窓『目ヲ閉ジテ 見ル映画』の印象も非常に強い。

今年聴いたもので特に印象に残った作品は以下の通り。
猪居亜美『Black Star』
ねごと『ETERNALBEAT』
Frederic Hand『Odyssey』
三村奈々恵『マリンバ・クリスタル~祈り~』
Jeff Parker『The New Breed』
小田朋美『グッバイブルー』
河野智美『The BACH』
三舩優子/堀越彰『OBSESSION』
Keiichiro Shibuya『ATAK015 for maria』
けもの『めたもるシティ』
大西順子トリオ『Glamorous Life』
Daijiro Matsuda,Ryoko Ono『NEWDUO series 002』
Christian Scott aTunde Adjuah『The Centennial Trilogy CD Set』
トリオ深海ノ窓『目ヲ閉ジテ 見ル映画』

以下、聴取順の47曲の目次。クリックにて該当箇所へ。引用内の画像はAmazon、楽曲名はYou Tubeへのリンクとなっている。感想の程度は概ね聴き込み具合と比例する。

Homei Yanagawa,Ryoko Ono『NEWDUO series 001』

  • アルトサックスによる即興演奏で知られる柳川芳命と音楽家でアルトサックス奏者の小埜涼子によるデュオ。
  • 即興演奏の妙を理解できているのかと言われると、理解できてはいない。しかしながら、やけに聴くタイミングによっては良くハマることもある。おそらくライブに行くのが一番の近道なのだと思う。

益田展行『バッハ作品集』

plays Bach バッハ作品集
無伴奏チェロ組曲 第6番 ニ長調 BWV1012 第一楽章 PRELUDE〈編曲:益田展行)

  • クラシックギタリストの益田展行のバッハ作品集。 上記の引用楽曲に聞き惚れて聴いた。
  • 去年からバッハのギター演奏を聴いていたため、山下和仁、福田進一のBWV1012を聴き比べてみたが、三者三様の解釈の違いが浮き彫りになる。その中でより優美さと端正さを感じるのは本作のように感じる。

猪居亜美『Black Star』

Black Star
サグラレス:はちすずめ

  • はちすずめをきっかけに本作を聴いた。
  • おそらく超絶技巧な楽曲を演奏している模様。
  • パガニーニの24のカプリースを聴き、堂本光一と中谷美紀が主演のテレビドラマの「ハルモニア」を思い出し、篠田節子の同名の原作を読むという機会を得た。
  • You Tubeの猪井亜美の動画を探すとファイナルファンタジーやニーア ゲシュタルト/レプリカントのBGMをギター用に編曲して公開しているようだ。

ファジル=サイ『モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集』

モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331

五嶋みどり『バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ 全曲』

SONATEN & PARTITEN BWV 10
パルティータ第3番ホ長調 BWV1006: III. Gavotte en rondeau
パルティータ第2番ニ短調 BWV1004: V. Chaconne

  • 五嶋みどりバッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータの全曲初録音のアルバム。
  • とりあえず五嶋みどりと堀米ゆず子の演奏を聴き比べてみたが、音の伸ばし方とかに若干の違いが感じられた。

ねごと『ETERNALBEAT』

ETERNALBEAT(通常盤)
ETERNALBEAT
アシンメトリ

  • BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之とROVOの益子樹がサウンドプロデューサーとして参加したねごとのアルバム。
  • エレクトロニカなアルバムとなっており、「ETERNALBEAT」、「アシメントリ」、「Ribbon」を良く聴く。特にアシメントリのエコーが好き。
  • ロックバンド的な路線はどのように継続するのだろうと考えていたら、何と年内に新たなアルバム『SOAK』が発表されて驚いた次第。

宇多田ヒカル『Fantôme』

Fantôme
花束を君に
二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎
真夏の通り雨
忘却 featuring KOHH
桜流し

  • 当初は感情移入することは無かったものの、改めて聴くと良いなと思う。
  • 「二時間だけのバカンス」、「桜流し」は良く聴いた。
  • 「二時間だけのバカンス」のMVがスター・ウォーズだった。あと、宇多田ヒカルと椎名林檎が綺麗だなと月並みに思った。

土岐麻子『PINK』

PINK
『PINK』ダイジェスト動画

SHAI MAESTRO TRIO『The Stone Skipper』

STONE SKIPPER
Water Colors (Home Session)

Frederic Hand『Odyssey』

Frederic Hand: Odyssey
Prayer
Sophia's Journey

  • クラシックギタリストにして作曲家であるフレデリック=ハンドの作品。
  • 表題曲の問い掛けのようなギターの旋律に心奪われる。

クーベリック・トリオ/石川静、カレル=フィアラ、クヴィータ=ビリンスカ『ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第3番 & 第7番「大公」』

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第3番、第7番「大公」

平野玲音/ペーター=バルツァバ『ピアニストのチェロ―ショパン:チェロ・ソナタ 他―』

ピアニストのチェロ ?ショパン:チェロ・ソナタ 他?

ECD + 空間現代『Live at Waseda 2010』

  • 空間現代を聴くようになったのは、本作の動画を観たことが理由になっている。
  • 本作はECDの闘病を支援するために空間現代がリリースした作品になるらしい。
  • 「関係ねー」

三村奈々恵『マリンバ・クリスタル~祈り~』

マリンバ・クリスタル~祈り~

  • マリンバ奏者である三村奈々恵のアルバム。
  • バッハから現代音楽の演奏が収録されているのだが、良い意味で内容が混沌としており、意表を突かれた。

北村陽子『ドビュッシー:前奏曲 第1集 & 第2集』

ドビュッシー:前奏曲第1集&第2集

Jeff Parker『The New Breed』

The New Breed [ボーナス・トラック1曲 / 解説付き / 正方形紙ジャケット仕様]
Cliche

  • TortoiseのJeff Parkerの作品。
  • ダウナー系のスローテンポのため、非常に心地良く聴けた。

D.A.N.『TEMPEST』

TEMPEST
TEMPEST

  • D.A.N.のミニアルバム。
  • グルーブのミニマリズム。

小田朋美『グッバイブルー』

グッバイブルー
『グッバイブルー』試聴動画

  • 小田朋美のソロアルバム。
  • 演奏・歌唱・歌詞に耳が離せない。前作『シャーマン狩り』と比較してより聴かせてくれる。
  • 「北へ」、「マリーアントワネットのうた」は聴く度に鳥肌が立つ。
  • 「陣痛かもしれない」

前田啓太『I Ching』

I Ching

  • ペア=ノアゴーの「イーチン」、クセナキスの「ルボン」と「サッファ」の演奏。

福田進一『マズルカ・アパシオナータ』

マズルカ・アパシオナータ 〜ベスト・オブ・バリオス〜

Pablo Casals『Bach:Cello Suites』

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)≪クラシック・マスターズ≫
Cello Suite #1 In G, BWV 1007 - Praeludium

  • ようやくカザルスの演奏を聴いた。

JAZZ DOMMUNISTERS『Cupid & Bataille, Dirty Microphone』

Cupid & Bataille, Dirty Microphone
革命feat.I.C.I

  • 良かったのだが、そもそも余りラップを聴く訳では無いので比較ができない。
  • I.C.Iは前作から引き続き登場。朗読に近いラップの間隙に切り裂くように登場するサックスが最高。
  • 大谷能生こと谷王は「相模横浜オリジナルフロー」

挾間美帆『Time River』

Time River
The Urban Legend

  • ようやっと挾間美帆率いるm_unitを演奏を聴いた。

Nik Bärtsch's Ronin『Holon』

Holon
Modul 45

  • Nik Bärtsch's Roninの『Stoa』と『Llyria』の間隙を埋めるために聴いた。

河野智美『The BACH』

ザ・バッハ

  • クラシックギタリスト河野智美のバッハの演奏。聴かない訳にはいかない。
  • 河野智美の編曲が多数を占めている。
  • 柔らかな落ち着きのある演奏はバッハに対して親しみを感じさせてくれる。

猪居亜美『Moonlight』

Moonlight
moonlight視聴動画

三舩優子/堀越彰『OBSESSION』

OBSESSION
歌劇イーゴリ公 第2幕: ポロヴェツ人の踊り(ダッタン人の踊り)

  • ピアノとドラムスによるクラシック演奏。
  • 「ポロヴェツ人(ダッタン人)の踊り」をしっかりと聴くのは初めてだったのだが、その旋律に感銘を受けた。
  • ファイナルファンタジーのBGMに似たようなメロディの曲があった気がする。

Steve Lehman Octet『Mise en Abîme』

  • 以前ジャズを愛好する方々が年間のベストに挙げていた作品。

Keiichiro Shibuya『ATAK015 for maria』

ATAK015フォー・マリア
for maria

  • 渋谷慶一郎のATAKレーベルの配信解禁を機に聴いた。
  • 久しぶりに感情移入して聴いて涙腺をうるませることを許した。
  • 上記の掲載曲と比較して本作の「for maria」は相当意図的に重く演奏されている印象。

GRAPEVINE『ROADSIDE PROPHET』

ROADSIDE PROPHET(通常盤)
Arma

  • 「疲れなんか微塵も無いとは言わないこともない」GRAPEVINE20週年のアルバム。
  • 普通の人達が主役の楽曲。

高橋悠治『エリック=サティ:新・ピアノ作品集』

エリック・サティ:新・ピアノ作品集

加藤訓子『Bach:Solo Works For Marimba』

Bach, J.S.: Solo Works for Mar
Bach:Violin Sonata #3 In C, BWV 1005 - 1. Adagio

  • 加藤訓子の解説に「天上の音楽」という言葉があり、篠田節子の「ハルモニア」にも散見された。
  • 音楽を直観することにより私が真理を得ることはできないだろう。おそらく私は感極まって得た状態を以て真理と勘違いするだけだろう。
  • 教会で録音されており、響きがちょっと違う。

ものんくる『世界はここにしかないって上手に言って』

世界はここにしかないって上手に言って
ここにしかないって言って
空想飛行

  • 前作より洗練された印象で、一曲目の[Driving Out Of Town」から高揚感がある。
  • 「透明なセイウチ」の間奏のキーボードが最高。

けもの『めたもるシティ』

めたもるシティ
めたもるセブン

  • 表題曲「めたもるセブン」に感情を掻き立てられた。今を生かされているという所与を「時が私を選んだようです」と表現し、現在/2017年と近い将来に対する不安と期待を丁寧に描く一方、懐かしい印象も受ける。歌詞自体は東村アキコの東京タラレバ娘の影響があるらしい。
  • その他だと「第六感コンピューター」が面白い。
  • フィッシュ京子ちゃんのテーマも前作から引き続き収録。

CP Unit『Before the Heat Death』

  • 今年来日したクリス=ピッツィオコス。やっと聴いたクリス=ピッツィオコス。

Shuta Hiraki『Unicursal』

Unicursal

  • id:yoroszことShuta Hirakiのアルバム。

大西順子トリオ『Glamorous Life』

Glamorous Lifeグラマラス・ライフ

  • 「7/29/04 The Day Of」が格好良いのだが、映画「オーシャンズ12」のBGMらしい。

大西順子『Very Special』

Very Special ヴェリー・スペシャル

Daijiro Matsuda,Ryoko Ono『NEWDUO series 002』

  • デス声とアルトサックスの競演。聴くと元気になる。

Christian Scott aTunde Adjuah『Stretch Music』

  • トランペッターであるクリスチャン=スコットのアルバム。
  • 本作と次の三部作『The Centennial Trilogy』で色々と挑戦しているらしいが、すんなりと聴けた。

Chris Pitsiokos,Ryoko Ono『NEWDUO series 003』

  • 来日したクリス=ピッツィオコスと小埜涼子の競演。

Christian Scott aTunde Adjuah『The Centennial Trilogy CD Set』

  • 『The Centennial Trilogy』は『Ruler Rebel』、『Diaspora』、『The Emancipation Procrastination』の三部作。本作はセット販売(ダウンロード版)。

トリオ深海ノ窓『目ヲ閉ジテ 見ル映画』

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流転
さくら
空ヲ知ル

  • 吉田野乃子が組んだトリオになり、映画のBGMのような音楽を演奏するグルーブらしいのだが、あれっと言う間にドライブするサックスが快感である。

James McVinnie『Wesley: Organ Music』

Organ Music
序奏とフーガ 嬰ハ短調(1869年改訂版)

  • 年の瀬にパイプオルガンで精神を清め、物事を省みようと「怖い絵展」で提供されたというSamuel Sebastian Wesleyの作品を聴いた。
  • Samuel Sebastian Wesleyはオルガニストで作曲家となる。

High Risk『Dark Territory』

  • 以前、Dave Douglasの『High Risk』を聴いたのだが、どうやらユニット名でもあったらしい。
  • 『High Risk』と同様にドラムスはMark Guiliana。
  • NEU!っぽい感じがする。

ねごと『SOAK』

【早期購入特典あり】SOAK(初回生産限定盤)(DVD付)(SOAK オリジナルクリアファイル Original Ver.付)
DANCER IN THE HANABIRA

  • 前作『ETERNALBEAT』と同路線の作品だったため意外に思ったのだが、果たして次作はどうなるのだろう。
  • 「WORLDEND」、「サタデーナイト」が好き。
  • 本作を聴きながら、今村昌弘の「屍人荘の殺人」や弘綾辻行人の「十角館の殺人」といった新本格ミステリーを読んでいたため、聴いているとミステリーな気分になる副次効果が付いている。

ねごと『Mizuki Masuda Remixes - EP』

Mizuki Masuda Remixes

2017年12月24日/肖像の人類学的解析によりそのルーツは霊長類としてのボノボ

乗るべき電車を間違えた事に気がつき、電車を乗り換える。最近全く運動していないこともあり、息が上がる。腹周りに付いた贅肉は手で掴める程ある。

バスを降りるべき停車場に間違い無く降りたものの、目的地は川の向こう側にあった。印刷した経路図に目的地まで400mとある。なるほど、目的地まで一番近い場所に案内された事は間違いないらしい。

バスに乗っていると天気が良いためか富士山が見えた。埼玉からでも見えるのかと感心してしまう。

眠気に身を任せて一日が終わる。意味も無く解像度が高い夢と思考が混じり合い、夢と現が曖昧模糊としている。夜と夜が繋がり、二日間が一日になる。損得で言えば、損をした気になるだけだった。確かに休息を求めているが、身体は一日中眠る事を欲している訳では無いらしい。

十二月半ばの土曜日、仕事を回す為に土曜日に外出して普段は乗らない電車に乗ると、隣に座った少女がノートに眼鏡を掛けた男性の絵を描いている。隣に座るのは少女の父であり、その絵が父の肖像であることは間違いながった。子を持つ親だけでは無いだろうか、子どもの絵の肖像になり得るのは?

ニトロプラスの装甲悪鬼村正をプレイし、何とかシナリオを全てこなすことができた。主人公の独白だったり、一太刀振るうための文章量が余りにも多かったりするのに辟易したが、本筋のルートに入る頃には耐性が付いていた。

2017年11月20日/現代ギリシャのデフォルトと海上保険に関する考察

アリストテレス=ソクラテス=オナシス。ギリシャ人の実業家にしてミリオネア、二十世紀の海運王。何も金持ちを羨んだりしたいって訳じゃない、そうじゃない。彼が成功と金と名誉を手に入れただけでなく、古代ギリシャの哲学者の名を二つも有していることに注目したい。「君の名は?」「アリストテレス=ソクラテス=オナシス(もしかして、私たち、混ざり合ってるぅ〜‼︎)」「エウレイカ〜(最近だとクリストファー=ノーラン監督作品「インターステラー」における主人公の娘が想起されるのだろうか)」「タウマゼイン‼︎(哲学の始源は驚きにあると学んだものである)」となりやしないかい。しかし、そんなクリシェは一片たりとも聞いた事が無い。グリセリンの浣腸は官能小説の常套の手段。古代ギリシア哲学の講義で海運王の話題は冗談でも挙がらなかった。古代ギリシャ哲学の講義は海運王を学ぶ場では無かった。海運王よりラバーメンの海賊王の方が親しみやすかった。もしかしてオナシスっていうギリシャの哲学者がいてトリプルプレーなのか。哲学者達の3Pなのか、それともオナニーを連想すれば良いのか、疑いさえ抱き始めてしまう。アリストテレス=プラトン=ソクラテス=オナシスなのかもしれないとも疑い出してしまう。思わず検索して確かめてしまう。小池百合子のアウフヘーブンなんて目じゃない、メジャーじゃない。宇宙英雄ローダンシリーズを邦訳したことがあるドイツ語の先生が「アウフヘーブンって君らは哲学習っているから特別な用語だと思っているかもしれないけど、日常会話だと持ち上げるって意味だからね」と昔言っていた。アリストテレスもソクラテスも単にありふれた名前だったということかもしれない、「これだからヤポニカは…」とギリシャ人の溜息が聞こえてくるのかもしれない。そうこうしているうちにアドレナリンが切れ始めた。「そうか、今時はソクラテス=オナシスを知らない人もいるのか」(暗にアホと言っているように見えるが実はそんな気は無い)「アリストテレス=オナシスの名前に興奮している人がいますが、彼はJ=F=ケネディの妻と結婚しています」(豆知識を追加してマウントポジションを取ろうとしているように見えるが、そんな気は無い)「FF外から失礼…」(フォローフォロワーの意味だと最近知りました)等と再帰的になり、真顔に戻るかもしれない。

ノーマン=メイラーの「死者と裸者」を図書館で予約して借りた。図書館で司書は「保存状態が大変悪くなっています」と言い、本をパラパラと開いて見せる。おそらくこの厚さを読み終えるのは二週間では難しいだろう。なぜ、ノーマン=メイラーの「死者と裸者」に興味を持ったのかは思い出せない。ブラウザには「死者と裸者」のウィキペディアの履歴が残っているものの、検索の契機を確認するにはブラウザを三ヶ月以上遡る必要があった。

午前七時の新幹線に間に合うよう、早朝に最寄駅へ足早に向かう。後方から現れた女性が横並びになる。視線を前方へ戻すと、車道に赤黒い痕跡を発見して、何かを想起する前に、街路樹の下に硬直して伸び切った猫の死骸が横たわっていることに気が付く。顔をしかめた後、鮮明に連鎖的に記憶が蘇る。

片田舎で路上に死骸を見つける事は珍しい事では無い。内臓を撒き散らしたイタチ、狸、猫。後ろめたさを感じながら、私はそれに見入っていた事があったはずなのだ。

高校と最寄り駅の通学路に小さな池があった。蓮の葉と茎が水面と水中を巡り、池の中央には赤い鳥居と小さな社があった。その池には数羽の鴨がいた。「グワァグワァ」と時たま連呼する鴨を眺めながら、これから授業を受ける必要も無い鴨を恨めしく思ったものである。

ある朝、まだ肌寒い、マフラーが必要な時期だったと思う。早朝、部活の自主練習の為に池の前を通ると数羽の鴨が路上で血に塗れていた。一羽では無く数羽の死骸が横たわっていた事に故意性を感じさせた。しかし、故意だとして、それは何の為に行われたのだろう。

朝見た猫の死骸は帰宅した際には片付けられていたように、鴨の死骸も知らぬ間に片付けられていた。いや、正確に言えば、猫の死骸は帰宅する頃には忘れてしまっていて、この文章を書く際に事後的に把握したのだ。おそらく鴨の死体も。

最近、車の移動に体力を消耗するため、なるべく新幹線、在来線、バスを使用することにした。午前中に一仕事を終え、在来線の駅で時刻表を確認すると朝のように通勤快速の電車が無い。各駅停車に乗り込み、バッグを抱きしめて眠ろうと試みる。左前方に座る中年の女性はT字杖を傍に携え、ビニール袋からトリスハイボールのアルミ缶をあおり、巻き寿司を頬張る。その女性の前方に座る若い女性はコンビニで買ったであろうカップに入ったデザートをスプーンで掬っている。

警報と共に電車が止まる。イヤフォン越しの車内アナウンスによれば、ホームの安全確認を行うと言う。場面は既に東京の地下に移っている。

一日中、家で眠って過ごした後の早朝の休日出勤。やるべき事は全て後回しになって行く。キッチンの電灯が瞬く。この電灯を以前変えた日は思い出す事はできない。しっかりとはめ込まれた電灯を取り外そうと試みるものの、上手くいかない。

前髪を揃えた幼い女の子から前髪を揃えた2人の女子高生の化粧と細くメリハリの無い長い脚にマカロニを食べ過ぎて戻してしまった青年。

「ボージョレボージョレボージョレヌーヴォー」とスーパーで昼食の弁当を買おうと店内を巡っていると聞こえた意味の無い反復。

「バーニラバニラバーニラ」と路上で聞こえた女性を煽る職業案内。