『ゲンロン1 現代日本の批評』

東浩紀編『ゲンロン1 現代日本の批評』を読んだ。
もう読んだのがかれこれ一年以上前になる。
そんな中でも印象に残っているのは亀山郁夫・東浩紀・上田洋子の「ドストエフスキーとテロの文学」になり、亀山郁夫が「新カラマーゾフの兄弟」を書き上げていることを知った。
その他に速水健朗「独立国家論」、コラム連載の辻田真佐憲「軍歌は世界をどう変えたか」、西田亮介「日常の政治と非日常の政治」が面白かった。特に西田亮介の連載は何度も読んだ記憶がある。
一応全てのページを読んでいるが、話題になった「現代日本の批評」は読むのが精一杯だったというのが正直なところ。

ゲンロン1 現代日本の批評

ゲンロン1 現代日本の批評

  • 作者: 東浩紀,鈴木忠志,大澤聡,市川真人,福嶋亮大,佐々木敦,安藤礼二,黒瀬陽平,速水健朗,井出明
  • 出版社/メーカー: 株式会社ゲンロン
  • 発売日: 2015/12/23
  • メディア: Kindle版
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ゲンロン1 現代日本の批評

ゲンロン1 現代日本の批評

  • 作者: 東浩紀,鈴木忠志,大澤聡,市川真人,福嶋亮大,佐々木敦,安藤礼二,黒瀬陽平,速水健朗,井出明,亀山郁夫,上田洋子,ボリス・グロイス,クレイグ・オーウェンス,海猫沢めろん
  • 出版社/メーカー: 株式会社ゲンロン
  • 発売日: 2015/12/04
  • メディア: 単行本
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2017年の音楽

2017年に聴いた音楽を以下にまとめた(→2016年の音楽)

アルバムをCDなりダウンロードで聴いており、未だにApple Musicなり、Spotifyと言った有料配信サービスは利用していないが、twitter等を閲覧する限り音源が充実してきたという評判を目にするようになった。おそらく、今後は有料配信サービスを使用することになるのではと考える一方、Bandcampの使い勝手が非常に良く、大手配信サービスでは聴けない楽曲をBandcampでダウンロードして聴いていくのではないかと思う。

何というか、非常にわかりやすいベタなメロディに心が奪われることが多くなっている気がしており、それがどういった理由なのかは判っていない。

今年は小埜涼子のNEW DUO seriesを聴いた。また、去年から引き続きバッハの楽曲をクラシックギタリストの益田展行、河野智美、打楽器奏者の加藤訓子、五嶋みどりの演奏で聴いた。
なお、聴取回数を確認したところ、トップはけもの『めたもるシティ』より「めたもるセブン」、次点はJeff Parker『The New Breed』、後は横並びに猪居亜美『Black Star』、Frederic Hand『Odyssey』、ねごと『ETERNALBEAT』だった。印象と結構違う。
大西順子のアルバム2枚のリリースも嬉しく、過去に遡って聴いていきたいと思っている。
アルトサックス奏者の吉田野乃子が参加しているトリオ深海の窓『目ヲ閉ジテ 見ル映画』の印象も非常に強い。

今年聴いたもので特に印象に残った作品は以下の通り。
猪居亜美『Black Star』
ねごと『ETERNALBEAT』
Frederic Hand『Odyssey』
三村奈々恵『マリンバ・クリスタル~祈り~』
Jeff Parker『The New Breed』
小田朋美『グッバイブルー』
河野智美『The BACH』
三舩優子/堀越彰『OBSESSION』
Keiichiro Shibuya『ATAK015 for maria』
けもの『めたもるシティ』
大西順子トリオ『Glamorous Life』
Daijiro Matsuda,Ryoko Ono『NEWDUO series 002』
Christian Scott aTunde Adjuah『The Centennial Trilogy CD Set』
トリオ深海ノ窓『目ヲ閉ジテ 見ル映画』

以下、聴取順の47曲の目次。クリックにて該当箇所へ。引用内の画像はAmazon、楽曲名はYou Tubeへのリンクとなっている。感想の程度は概ね聴き込み具合と比例する。

Homei Yanagawa,Ryoko Ono『NEWDUO series 001』

  • アルトサックスによる即興演奏で知られる柳川芳命と音楽家でアルトサックス奏者の小埜涼子によるデュオ。
  • 即興演奏の妙を理解できているのかと言われると、理解できてはいない。しかしながら、やけに聴くタイミングによっては良くハマることもある。おそらくライブに行くのが一番の近道なのだと思う。

益田展行『バッハ作品集』

plays Bach バッハ作品集
無伴奏チェロ組曲 第6番 ニ長調 BWV1012 第一楽章 PRELUDE〈編曲:益田展行)

  • クラシックギタリストの益田展行のバッハ作品集。 上記の引用楽曲に聞き惚れて聴いた。
  • 去年からバッハのギター演奏を聴いていたため、山下和仁、福田進一のBWV1012を聴き比べてみたが、三者三様の解釈の違いが浮き彫りになる。その中でより優美さと端正さを感じるのは本作のように感じる。

猪居亜美『Black Star』

Black Star
サグラレス:はちすずめ

  • はちすずめをきっかけに本作を聴いた。
  • おそらく超絶技巧な楽曲を演奏している模様。
  • パガニーニの24のカプリースを聴き、堂本光一と中谷美紀が主演のテレビドラマの「ハルモニア」を思い出し、篠田節子の同名の原作を読むという機会を得た。
  • You Tubeの猪井亜美の動画を探すとファイナルファンタジーやニーア ゲシュタルト/レプリカントのBGMをギター用に編曲して公開しているようだ。

ファジル=サイ『モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集』

モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331

五嶋みどり『バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ 全曲』

SONATEN & PARTITEN BWV 10
パルティータ第3番ホ長調 BWV1006: III. Gavotte en rondeau
パルティータ第2番ニ短調 BWV1004: V. Chaconne

  • 五嶋みどりバッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータの全曲初録音のアルバム。
  • とりあえず五嶋みどりと堀米ゆず子の演奏を聴き比べてみたが、音の伸ばし方とかに若干の違いが感じられた。

ねごと『ETERNALBEAT』

ETERNALBEAT(通常盤)
ETERNALBEAT
アシンメトリ

  • BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之とROVOの益子樹がサウンドプロデューサーとして参加したねごとのアルバム。
  • エレクトロニカなアルバムとなっており、「ETERNALBEAT」、「アシメントリ」、「Ribbon」を良く聴く。特にアシメントリのエコーが好き。
  • ロックバンド的な路線はどのように継続するのだろうと考えていたら、何と年内に新たなアルバム『SOAK』が発表されて驚いた次第。

宇多田ヒカル『Fantôme』

Fantôme
花束を君に
二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎
真夏の通り雨
忘却 featuring KOHH
桜流し

  • 当初は感情移入することは無かったものの、改めて聴くと良いなと思う。
  • 「二時間だけのバカンス」、「桜流し」は良く聴いた。
  • 「二時間だけのバカンス」のMVがスター・ウォーズだった。あと、宇多田ヒカルと椎名林檎が綺麗だなと月並みに思った。

土岐麻子『PINK』

PINK
『PINK』ダイジェスト動画

SHAI MAESTRO TRIO『The Stone Skipper』

STONE SKIPPER
Water Colors (Home Session)

Frederic Hand『Odyssey』

Frederic Hand: Odyssey
Prayer
Sophia's Journey

  • クラシックギタリストにして作曲家であるフレデリック=ハンドの作品。
  • 表題曲の問い掛けのようなギターの旋律に心奪われる。

クーベリック・トリオ/石川静、カレル=フィアラ、クヴィータ=ビリンスカ『ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第3番 & 第7番「大公」』

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第3番、第7番「大公」

平野玲音/ペーター=バルツァバ『ピアニストのチェロ―ショパン:チェロ・ソナタ 他―』

ピアニストのチェロ ?ショパン:チェロ・ソナタ 他?

ECD + 空間現代『Live at Waseda 2010』

  • 空間現代を聴くようになったのは、本作の動画を観たことが理由になっている。
  • 本作はECDの闘病を支援するために空間現代がリリースした作品になるらしい。
  • 「関係ねー」

三村奈々恵『マリンバ・クリスタル~祈り~』

マリンバ・クリスタル~祈り~

  • マリンバ奏者である三村奈々恵のアルバム。
  • バッハから現代音楽の演奏が収録されているのだが、良い意味で内容が混沌としており、意表を突かれた。

北村陽子『ドビュッシー:前奏曲 第1集 & 第2集』

ドビュッシー:前奏曲第1集&第2集

Jeff Parker『The New Breed』

The New Breed [ボーナス・トラック1曲 / 解説付き / 正方形紙ジャケット仕様]
Cliche

  • TortoiseのJeff Parkerの作品。
  • ダウナー系のスローテンポのため、非常に心地良く聴けた。

D.A.N.『TEMPEST』

TEMPEST
TEMPEST

  • D.A.N.のミニアルバム。
  • グルーブのミニマリズム。

小田朋美『グッバイブルー』

グッバイブルー
『グッバイブルー』試聴動画

  • 小田朋美のソロアルバム。
  • 演奏・歌唱・歌詞に耳が離せない。前作『シャーマン狩り』と比較してより聴かせてくれる。
  • 「北へ」、「マリーアントワネットのうた」は聴く度に鳥肌が立つ。
  • 「陣痛かもしれない」

前田啓太『I Ching』

I Ching

  • ペア=ノアゴーの「イーチン」、クセナキスの「ルボン」と「サッファ」の演奏。

福田進一『マズルカ・アパシオナータ』

マズルカ・アパシオナータ 〜ベスト・オブ・バリオス〜

Pablo Casals『Bach:Cello Suites』

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)≪クラシック・マスターズ≫
Cello Suite #1 In G, BWV 1007 - Praeludium

  • ようやくカザルスの演奏を聴いた。

JAZZ DOMMUNISTERS『Cupid & Bataille, Dirty Microphone』

Cupid & Bataille, Dirty Microphone
革命feat.I.C.I

  • 良かったのだが、そもそも余りラップを聴く訳では無いので比較ができない。
  • I.C.Iは前作から引き続き登場。朗読に近いラップの間隙に切り裂くように登場するサックスが最高。
  • 大谷能生こと谷王は「相模横浜オリジナルフロー」

挾間美帆『Time River』

Time River
The Urban Legend

  • ようやっと挾間美帆率いるm_unitを演奏を聴いた。

Nik Bärtsch's Ronin『Holon』

Holon
Modul 45

  • Nik Bärtsch's Roninの『Stoa』と『Llyria』の間隙を埋めるために聴いた。

河野智美『The BACH』

ザ・バッハ

  • クラシックギタリスト河野智美のバッハの演奏。聴かない訳にはいかない。
  • 河野智美の編曲が多数を占めている。
  • 柔らかな落ち着きのある演奏はバッハに対して親しみを感じさせてくれる。

猪居亜美『Moonlight』

Moonlight
moonlight視聴動画

三舩優子/堀越彰『OBSESSION』

OBSESSION
歌劇イーゴリ公 第2幕: ポロヴェツ人の踊り(ダッタン人の踊り)

  • ピアノとドラムスによるクラシック演奏。
  • 「ポロヴェツ人(ダッタン人)の踊り」をしっかりと聴くのは初めてだったのだが、その旋律に感銘を受けた。
  • ファイナルファンタジーのBGMに似たようなメロディの曲があった気がする。

Steve Lehman Octet『Mise en Abîme』

  • 以前ジャズを愛好する方々が年間のベストに挙げていた作品。

Keiichiro Shibuya『ATAK015 for maria』

ATAK015フォー・マリア
for maria

  • 渋谷慶一郎のATAKレーベルの配信解禁を機に聴いた。
  • 久しぶりに感情移入して聴いて涙腺をうるませることを許した。
  • 上記の掲載曲と比較して本作の「for maria」は相当意図的に重く演奏されている印象。

GRAPEVINE『ROADSIDE PROPHET』

ROADSIDE PROPHET(通常盤)
Arma

  • 「疲れなんか微塵も無いとは言わないこともない」GRAPEVINE20週年のアルバム。
  • 普通の人達が主役の楽曲。

高橋悠治『エリック=サティ:新・ピアノ作品集』

エリック・サティ:新・ピアノ作品集

加藤訓子『Bach:Solo Works For Marimba』

Bach, J.S.: Solo Works for Mar
Bach:Violin Sonata #3 In C, BWV 1005 - 1. Adagio

  • 加藤訓子の解説に「天上の音楽」という言葉があり、篠田節子の「ハルモニア」にも散見された。
  • 音楽を直観することにより私が真理を得ることはできないだろう。おそらく私は感極まって得た状態を以て真理と勘違いするだけだろう。
  • 教会で録音されており、響きがちょっと違う。

ものんくる『世界はここにしかないって上手に言って』

世界はここにしかないって上手に言って
ここにしかないって言って
空想飛行

  • 前作より洗練された印象で、一曲目の[Driving Out Of Town」から高揚感がある。
  • 「透明なセイウチ」の間奏のキーボードが最高。

けもの『めたもるシティ』

めたもるシティ
めたもるセブン

  • 表題曲「めたもるセブン」に感情を掻き立てられた。今を生かされているという所与を「時が私を選んだようです」と表現し、現在/2017年と近い将来に対する不安と期待を丁寧に描く一方、懐かしい印象も受ける。歌詞自体は東村アキコの東京タラレバ娘の影響があるらしい。
  • その他だと「第六感コンピューター」が面白い。
  • フィッシュ京子ちゃんのテーマも前作から引き続き収録。

CP Unit『Before the Heat Death』

  • 今年来日したクリス=ピッツィオコス。やっと聴いたクリス=ピッツィオコス。

Shuta Hiraki『Unicursal』

Unicursal

  • id:yoroszことShuta Hirakiのアルバム。

大西順子トリオ『Glamorous Life』

Glamorous Lifeグラマラス・ライフ

  • 「7/29/04 The Day Of」が格好良いのだが、映画「オーシャンズ12」のBGMらしい。

大西順子『Very Special』

Very Special ヴェリー・スペシャル

Daijiro Matsuda,Ryoko Ono『NEWDUO series 002』

  • デス声とアルトサックスの競演。聴くと元気になる。

Christian Scott aTunde Adjuah『Stretch Music』

  • トランペッターであるクリスチャン=スコットのアルバム。
  • 本作と次の三部作『The Centennial Trilogy』で色々と挑戦しているらしいが、すんなりと聴けた。

Chris Pitsiokos,Ryoko Ono『NEWDUO series 003』

  • 来日したクリス=ピッツィオコスと小埜涼子の競演。

Christian Scott aTunde Adjuah『The Centennial Trilogy CD Set』

  • 『The Centennial Trilogy』は『Ruler Rebel』、『Diaspora』、『The Emancipation Procrastination』の三部作。本作はセット販売(ダウンロード版)。

トリオ深海ノ窓『目ヲ閉ジテ 見ル映画』

f:id:bullotus:20180102160643j:plain
流転
さくら
空ヲ知ル

  • 吉田野乃子が組んだトリオになり、映画のBGMのような音楽を演奏するグルーブらしいのだが、あれっと言う間にドライブするサックスが快感である。

James McVinnie『Wesley: Organ Music』

Organ Music
序奏とフーガ 嬰ハ短調(1869年改訂版)

  • 年の瀬にパイプオルガンで精神を清め、物事を省みようと「怖い絵展」で提供されたというSamuel Sebastian Wesleyの作品を聴いた。
  • Samuel Sebastian Wesleyはオルガニストで作曲家となる。

High Risk『Dark Territory』

  • 以前、Dave Douglasの『High Risk』を聴いたのだが、どうやらユニット名でもあったらしい。
  • 『High Risk』と同様にドラムスはMark Guiliana。
  • NEU!っぽい感じがする。

ねごと『SOAK』

【早期購入特典あり】SOAK(初回生産限定盤)(DVD付)(SOAK オリジナルクリアファイル Original Ver.付)
DANCER IN THE HANABIRA

  • 前作『ETERNALBEAT』と同路線の作品だったため意外に思ったのだが、果たして次作はどうなるのだろう。
  • 「WORLDEND」、「サタデーナイト」が好き。
  • 本作を聴きながら、今村昌弘の「屍人荘の殺人」や弘綾辻行人の「十角館の殺人」といった新本格ミステリーを読んでいたため、聴いているとミステリーな気分になる副次効果が付いている。

ねごと『Mizuki Masuda Remixes - EP』

Mizuki Masuda Remixes

2017年12月24日/肖像の人類学的解析によりそのルーツは霊長類としてのボノボ

乗るべき電車を間違えた事に気がつき、電車を乗り換える。最近全く運動していないこともあり、息が上がる。腹周りに付いた贅肉は手で掴める程ある。

バスを降りるべき停車場に間違い無く降りたものの、目的地は川の向こう側にあった。印刷した経路図に目的地まで400mとある。なるほど、目的地まで一番近い場所に案内された事は間違いないらしい。

バスに乗っていると天気が良いためか富士山が見えた。埼玉からでも見えるのかと感心してしまう。

眠気に身を任せて一日が終わる。意味も無く解像度が高い夢と思考が混じり合い、夢と現が曖昧模糊としている。夜と夜が繋がり、二日間が一日になる。損得で言えば、損をした気になるだけだった。確かに休息を求めているが、身体は一日中眠る事を欲している訳では無いらしい。

十二月半ばの土曜日、仕事を回す為に土曜日に外出して普段は乗らない電車に乗ると、隣に座った少女がノートに眼鏡を掛けた男性の絵を描いている。隣に座るのは少女の父であり、その絵が父の肖像であることは間違いながった。子を持つ親だけでは無いだろうか、子どもの絵の肖像になり得るのは?

ニトロプラスの装甲悪鬼村正をプレイし、何とかシナリオを全てこなすことができた。主人公の独白だったり、一太刀振るうための文章量が余りにも多かったりするのに辟易したが、本筋のルートに入る頃には耐性が付いていた。

2017年11月20日/現代ギリシャのデフォルトと海上保険に関する考察

アリストテレス=ソクラテス=オナシス。ギリシャ人の実業家にしてミリオネア、二十世紀の海運王。何も金持ちを羨んだりしたいって訳じゃない、そうじゃない。彼が成功と金と名誉を手に入れただけでなく、古代ギリシャの哲学者の名を二つも有していることに注目したい。「君の名は?」「アリストテレス=ソクラテス=オナシス(もしかして、私たち、混ざり合ってるぅ〜‼︎)」「エウレイカ〜(最近だとクリストファー=ノーラン監督作品「インターステラー」における主人公の娘が想起されるのだろうか)」「タウマゼイン‼︎(哲学の始源は驚きにあると学んだものである)」となりやしないかい。しかし、そんなクリシェは一片たりとも聞いた事が無い。グリセリンの浣腸は官能小説の常套の手段。古代ギリシア哲学の講義で海運王の話題は冗談でも挙がらなかった。古代ギリシャ哲学の講義は海運王を学ぶ場では無かった。海運王よりラバーメンの海賊王の方が親しみやすかった。もしかしてオナシスっていうギリシャの哲学者がいてトリプルプレーなのか。哲学者達の3Pなのか、それともオナニーを連想すれば良いのか、疑いさえ抱き始めてしまう。アリストテレス=プラトン=ソクラテス=オナシスなのかもしれないとも疑い出してしまう。思わず検索して確かめてしまう。小池百合子のアウフヘーブンなんて目じゃない、メジャーじゃない。宇宙英雄ローダンシリーズを邦訳したことがあるドイツ語の先生が「アウフヘーブンって君らは哲学習っているから特別な用語だと思っているかもしれないけど、日常会話だと持ち上げるって意味だからね」と昔言っていた。アリストテレスもソクラテスも単にありふれた名前だったということかもしれない、「これだからヤポニカは…」とギリシャ人の溜息が聞こえてくるのかもしれない。そうこうしているうちにアドレナリンが切れ始めた。「そうか、今時はソクラテス=オナシスを知らない人もいるのか」(暗にアホと言っているように見えるが実はそんな気は無い)「アリストテレス=オナシスの名前に興奮している人がいますが、彼はJ=F=ケネディの妻と結婚しています」(豆知識を追加してマウントポジションを取ろうとしているように見えるが、そんな気は無い)「FF外から失礼…」(フォローフォロワーの意味だと最近知りました)等と再帰的になり、真顔に戻るかもしれない。

ノーマン=メイラーの「死者と裸者」を図書館で予約して借りた。図書館で司書は「保存状態が大変悪くなっています」と言い、本をパラパラと開いて見せる。おそらくこの厚さを読み終えるのは二週間では難しいだろう。なぜ、ノーマン=メイラーの「死者と裸者」に興味を持ったのかは思い出せない。ブラウザには「死者と裸者」のウィキペディアの履歴が残っているものの、検索の契機を確認するにはブラウザを三ヶ月以上遡る必要があった。

午前七時の新幹線に間に合うよう、早朝に最寄駅へ足早に向かう。後方から現れた女性が横並びになる。視線を前方へ戻すと、車道に赤黒い痕跡を発見して、何かを想起する前に、街路樹の下に硬直して伸び切った猫の死骸が横たわっていることに気が付く。顔をしかめた後、鮮明に連鎖的に記憶が蘇る。

片田舎で路上に死骸を見つける事は珍しい事では無い。内臓を撒き散らしたイタチ、狸、猫。後ろめたさを感じながら、私はそれに見入っていた事があったはずなのだ。

高校と最寄り駅の通学路に小さな池があった。蓮の葉と茎が水面と水中を巡り、池の中央には赤い鳥居と小さな社があった。その池には数羽の鴨がいた。「グワァグワァ」と時たま連呼する鴨を眺めながら、これから授業を受ける必要も無い鴨を恨めしく思ったものである。

ある朝、まだ肌寒い、マフラーが必要な時期だったと思う。早朝、部活の自主練習の為に池の前を通ると数羽の鴨が路上で血に塗れていた。一羽では無く数羽の死骸が横たわっていた事に故意性を感じさせた。しかし、故意だとして、それは何の為に行われたのだろう。

朝見た猫の死骸は帰宅した際には片付けられていたように、鴨の死骸も知らぬ間に片付けられていた。いや、正確に言えば、猫の死骸は帰宅する頃には忘れてしまっていて、この文章を書く際に事後的に把握したのだ。おそらく鴨の死体も。

最近、車の移動に体力を消耗するため、なるべく新幹線、在来線、バスを使用することにした。午前中に一仕事を終え、在来線の駅で時刻表を確認すると朝のように通勤快速の電車が無い。各駅停車に乗り込み、バッグを抱きしめて眠ろうと試みる。左前方に座る中年の女性はT字杖を傍に携え、ビニール袋からトリスハイボールのアルミ缶をあおり、巻き寿司を頬張る。その女性の前方に座る若い女性はコンビニで買ったであろうカップに入ったデザートをスプーンで掬っている。

警報と共に電車が止まる。イヤフォン越しの車内アナウンスによれば、ホームの安全確認を行うと言う。場面は既に東京の地下に移っている。

一日中、家で眠って過ごした後の早朝の休日出勤。やるべき事は全て後回しになって行く。キッチンの電灯が瞬く。この電灯を以前変えた日は思い出す事はできない。しっかりとはめ込まれた電灯を取り外そうと試みるものの、上手くいかない。

前髪を揃えた幼い女の子から前髪を揃えた2人の女子高生の化粧と細くメリハリの無い長い脚にマカロニを食べ過ぎて戻してしまった青年。

「ボージョレボージョレボージョレヌーヴォー」とスーパーで昼食の弁当を買おうと店内を巡っていると聞こえた意味の無い反復。

「バーニラバニラバーニラ」と路上で聞こえた女性を煽る職業案内。

2017年10月21日/投票の前に

私が住む自治体の選挙区は、希望の党の候補者が立候補しており、野党共闘が成立していない。そのため、自民党、希望の党、立憲民主党、共産党、無所属と投票先だけは豊富にある。週刊誌の記事を斜め読みしたところ、自民党の候補者の当選が見込まれており、次点が希望の党の候補者になっていた。過去の選挙結果の得票数に鑑みると、候補者が乱立している状況において、自民党の候補者の当選が確実だと言えるのではないかと思われた。加えて、選挙の終盤情勢によれば、与党は300議席を獲得する見込みだとも言う。私は与党を支持しないものの、経済政策に関しては、現政権の功績と方向性は認めるべきだと思っている。問題なのは、与党内や野党に現政権以上の経済政策が望めないことだ。

職場でパソコンの前に張り付いていると、外から選挙の候補者の街宣車の声が聞こえてくる。「結構うるさいな」「そうですね」と社員たちが苦笑いをしている。

けものの新譜『めたもるシティ』を聴いたところ、表題曲「めたもるセブン」に感情を掻き立てられた。今を生かされているという所与を「時が私を選んだようです」と表現し、現在/2017年と近い将来に対する不安と期待を丁寧に描いていると思う。

仕事を終えて一服するために喫茶店に入った。喫煙席に座ったにも関わらず、女性客に囲まれる形になった。どうやらランチタイムということらしい。煙草を吸いたいと思うものの、両隣の女性客のテーブルの上を眺めると、灰皿は置かれていない。弱ったなと思いながら、煙草の箱をテーブルの上に置き、ガラス越しのパチンコ店の真赤な看板と人の往来を眺めた。

2017年10月8日/3ヶ月後

気が付けば十月となり、先の雑記から余りに時間が経ち過ぎていた。

七月の三連休の初日に出勤し、面談相手に軽くあしらわれるのも仕事の内なのだから、溜め息が出るというものだ。

座席の仕切りに寄り掛かった美しい長身の女性。花柄のロングスカートからすえた匂いが漂う。

小松左京の「アメリカの壁」を読み終える。小松左京を読むのは初めてだが、かなり面白かった。

都議選の結果を考える。都民ファーストの会というより、まず、知事選が思い出されてくる。小池百合子の出馬表明を受けて思ったのは、都知事になることが政治家の影響力を復活する手段になるのだろうという事だった。豊洲市場の問題等を見ても、卓袱台をひっくり返しているだけにしか見えない。ラジオによれば「常に次に何をしようか考えている」そうである。

夢の中で城が燃え上がる。もっと燃えろと焚き付けていたのは自分だけだった。

仕事で木更津を訪れる。仕事を終えて友人と連絡を取り、駅前で待ち合わせる。ロータリーを行き交うバス、駅に向かう高校生。友人に連れられて訪れた喫茶店の扉を開くと女子高生しかいなかった。

「後輩にサカイさんって女性がいるのね。サカイさんは昔から付き合っている彼氏がいるらしいんだけど、彼氏が浮気をするらしいの。それで、また浮気されたから別れようかなって言うの」

twitterをアカウント無しで読むことが難しくなったため、観覧用のアカウントを作らざるを得なかった。

上司の勧めで「レッド・オクトーバーを終え!」を観た後、勢いベトナム戦争を描いた「ハンバーガー・ヒル」、加えて「プライベート・ライアン」を観た。また、「アフタースクール」、「鍵泥棒のメソッド」も観た。やっぱり映画は良い。しかしながら、映画館に通うという習慣が無くなって久しい。

西田亮介の「不寛容の本質」を読んだが、今まで著作の要旨を簡潔に記したといった内容であった。

日中、電車で移動していると、修学旅行のしおりを持った中学生を見掛ける。名札の校名を検索すると岩手県!?。わざわざ遠いところからご苦労様だ。

ミシェル=ウェルベックの「服従」を読んだ。初めてミシェル=ウェルベックを読んだが、途中で放り出すことは無かった。

伊豆を車で走らせている時、果たして仕事以外で伊豆に行くことがあるのだろうかと思う。上司が伊豆のホテルに泊まったと言い、調べれば、湯船から水平線を拝むことができるホテルだった。

「ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室」を読んだ。料理がしたくなる本である。なお、日本式のカレールウに関する話題が印象的。塩分が多いってよ。

怒りは換金できない。感情を換金した時のこれじゃない感じ。

Kindleで発売されている深町秋生の作品を全て読んだ。「ショットガン・ロード」がお勧めだ。組織犯罪対策課が登場する作品も良い。

以前の職場の同僚からメールが届く。資格取得をしたという自慢メールだったが、勘違いして退社1年後の安否確認メールだと思った俺は幸せである。

「当て屋の椿」を読もうと試みたが、3巻まで読んで力尽きた。

冷静に考えた結果、貯金が無いため、結婚ができないことが判った。何故今まで気が付かなかったのか、我ながら不思議である。

小松左京の「日本沈没」、谷甲州が引き継いだ「日本沈没第二部」を読み終える。最終的に日本人とは何かと言った内容までに話が及ぶ。更に東浩紀がセレクションした小松左京短編集を読んだ。サイコトラベルという言葉の響きが新鮮である。

昔、寝る前にスター・ウォーズもどきの物語を頭で繰り広げていたのだが、記憶で展開したものは、記憶できている限り、時間的な差が無い。これを文章化した時、やっと作業となり時間差が出来るのではないか。そんなことないか。

谷甲州の「航空宇宙軍史」を読み始める。最高に面白いのだが、Kindleで完全版が全て出版されていない。

午後2時に喫茶店。ホワイトオムライスを頼むも売り切れと言われノーマルオムライスを食べる。

太った。8kg太った。安定感半端無い。

勝田文のマリーマリーマリーが終わる。楽しみが一つ減った。

上司に連れられて通な感じがする日本料理屋で酒を飲む。お通しが美味しくて感動した。お通しが美味いのは良い事である。

小池百合子の希望の党と民進党の合流に驚き呆れる。小池百合子を上述した理由は都民ファーストの会の議席数を受けてしたものだが、展開が早過ぎるし、稚拙にも見える。

自民党も消費税を増税するらしい。私はリフレを支持している。しかしながらその理由は、読んだ本の著者がリフレ派、加えて欧州の左派がリフレ政策を支持、尚且つ海外の著名な経済学者がリフレ政策を支持しているからという浅薄なものである。さすがにこれではいけないと思い、若田部昌澄と栗原裕一郎の「本当の経済の話をしよう」、松尾匡の「この経済政策が民主主義を救う 安倍政権に勝てる対案」を読み終える。更に飯田泰之の「世界一わかりやすい 経済の教室」を読み進めている。

2017年7月5日/台風一過

あさりよしとおの宇宙家族カールビンソンとるくるくを読み終える。リスのター君の布団叩きに笑ってしまった。

筒井康隆の馬の首風雲録、おれの血は地人の血、パプリカを読み終える。どうも筒井康隆の小説は自らのリビドーを認識させられるところがあり、読みながら悶々とする事が多い。

仕事に飽き、都議会の候補先を眺めてみた。基本的に皆50歳以上、告示用に撮影された写真はポスターのように加工もされておらず、皆年相応の皮膚の張りと艶である。正直、候補先は無いと思っていたのだが、気になる候補者を見つける事が出来た。

高校時代からの友人と大学時代からの友人にアフロ田中の主人公田中宏に似ていると指摘されることがある。正直不本意であるが「俺は何時まで性欲に振り回されなければならないのだろう?」といった思考回路が似通っているという。なるほど、その指摘は的を得ているかもしれない。また、友人達は気遣って指摘しないのだろうが、職を転々としているという来歴などの影響もあるのだろう。とはいえ、アフロ田中は時折立読みで斜め読みする程度の認識である。しかも似通った思考回路の主人公の物語を読むという行為は自らの追体験でしかないと読まない理由を考えてしまう。

確かに性欲に振り回されているのは間違いは無く、俺の日々の疲れは自慰行為によるところが多くを負っていると思う。

女性の小さな膝を可愛らしいと思ったが、今までそんな事は一切考えた事は無かった。

母から連絡が有り、病気で都内に通院する事になったという。甲状腺の不調との事で、こうやって要支援、要介護度を認定されて行くのだろうなと思い、近い将来を憂いたくなる。

仕事中、スラックスの尻の部分が裂ける事態に陥る。やはり、ジム通いが滞り、太ったのだと思う。しかし、そんな事より当座の危機をどのように乗り越えるのかが問題だ。ガムテープを内側に貼ったり、ホチキスで留める処置は上手くいかず、仕方無くダプルクリップで誤魔化す事にした。さっさと帰宅しようとした時に限ってこうなってしまう。

痩せた母親から家族の近況を聞きながら、その端々に表れる不満の色にウンザリし、自分は一人で暮らす事に慣れ過ぎたのかもしれないと思う。どうやら母は義理の息子達に何か思うところがあるらしい。

スーツを買いに出掛ける。スーツを割引にする為にクレジットカードを作る必要があるというのだからウンザリしてしまう。全く馬鹿げた仕組みだと思う。

都議選の結果を眺めながら、色々思うところがあるのだが、感想は後にする。

最近、結局のところ、物事に対して確たる考えが無く、自らの論理の帰結で何か考えるという事が稀、端的に言えば無く、あらゆる結論から都合の良いものを選んでいるに過ぎないのではないかと思うに至る。

スピリッツはアイアムヒーローが終わって以来読んでいないのだが、ふと思い立ってアフロ田中を読んだところ、この主人公がお前だと言われれば、否定する事は無いと思った。

2017年6月27日/ロイド眼鏡と赤いスーツ

日曜日の午後8時40分、赤坂見附駅で隣に座ったロイド眼鏡を掛けた女性が電車を降りようとし、又、席に戻った。
日曜日の午後8時45分、四ツ谷駅で複数人の中学生が電車に乗り込んできた。
日曜日の午後8時47分、四谷三丁目駅で複数の中学生とロイド眼鏡を掛けた女性が電車降りた。ロイド眼鏡を掛けた女性は美しくかったから、彼女が立ち上がると、真向かいに座った男性がスマートフォンから顔を挙げ、彼女を見定め、視線だけで見送った。

東京都議会選挙に向けてなのだろう、ポスターの中でしか見掛けたことが無い政治家達を駅前で見掛けた。なるほど、実際はこんな感じなのかと視界に入れ、直ぐに駅の構内に入った。与党の候補者はこういう機会にしか駅前で御目に掛かることは無い。一方、野党の政治家を見掛けることは割と多いという印象を持っている。赤いスーツを着ても違和感が無かったのはポスターで目が慣らされているからなのだろう。

2017年6月14日/年の半ばの息継ぎ

ミッキーマウスに彩られたかりゆしウェアを着た大学生の男女が電車に乗り込んでくる。女性が席を探し、仕方無く私の隣に座り、男性が吊革を握り、態勢を崩す。「この格好恥ずかしいかな?上着着よう。変かな?」「ズボンに入れれば大丈夫じゃない?でも、別に普通に着れるよね、これ。」相槌を打ちながら、男性はトレーナーに袖を通し、かりゆしウェアの裾をズボンに入れ、女性に向けてポーズを決める。「大学生活ももうすぐ数える程しかないんじゃない?私は短期の留学もあるし。」「卒研は無いの?」「あるけど、就活終わったら四年生って暇なんじゃないの?」「文系は判らないけど、理学部は卒研があるから忙しいらしい。」「いや、文系だって卒論はあるけど。」「短期留学だと夏合宿も出られないし…でも新歓合宿は出られるのかな?」「えっ、四年生って顔出すんだっけ?」「どうだったかな、いや出るでしょ?」「出るか。」別段、ミッキーマウスのかりゆしウェアは大して目立つ事は無い。但し、ペアルックであるという点を除いて。そして、まるでちょっとした未来に対する無知、楽観的な展望、尚且つ自分達が恵まれた環境にある事に気が付いてすらいない様子に、若者という言葉が浮かんだ。

イヤフォンを分けて音楽を聴く時、2人の男女が何を分け合っているのか、俺は知らない。

久しぶりにジムに行き、適当に運動をこなして行く。新たに腕を鍛えてみたが、非常に応えた。

吉田秋生のバナナフィッシュと海街ダイアリーを読んだ。バナナフィッシュより海街ダイアリーの印象が良く、各キャラクターの崩れた顔が割とツボだった。しかし、デフォルメされた世界で無ければ、人々の心情に思い至れないとは一体どういう事なのかと考え、自らの恒常性を保つとは、日頃から傍に居る人々の心情を無視することなのではないかと考えるに至った。

テッド=チャンのあなたの人生の物語を読み終える。「バビロンの塔」、「理解」、「72文字」、「地獄とは神の不在なり」が面白かった。

2017年6月1日/1ヶ月間

杖をついた夫婦とその家族が電車に乗り込んでくると、隣の青年が立ち上がり、座席を譲った。「直ぐ降りますので。」と断られ、再度青年は座席に座り直す。私は何も出来ず、ただそのやり取りを眺めているだけだった。

嘔吐物に塗れた青年が電車の座席に座り眠っている。嘔吐物特有の酸味が鼻に付く。

駅構内で嘔吐物を前にベンチに座り込んで介抱されている男性がいる。

柳広司のジョーカー・シリーズを三作目まで読み終える。どうやらアニメ化・漫画化している作品らしい。スパイ達の匿名性が非常に気に入っている。

フィリップ=K=ディックの高い城の男を読み終える。ユダヤ人の妻とイタリア人のやり取りに何が描写されているのか判らず、二度読み直した。

深町秋生のバッドカンパニーを読み終える。小粋な短編集だった。

小田朋美のグッバイブルーを聴く。北へで「陣痛かもしれない」との歌詞に鳥肌が立ち、マリーアントワネットのうたでありふれた罪悪感が想起される。

隣に座った女性がフランスの地方名が記された書類を読み込んでいる。どうやらワイン教室からの帰りらしい。その地方特有の土に含まれた成分が葡萄に与える影響が記載されている。

友人の勧めで進撃の巨人を読み始める。今、丁度、キリの良いところらしい。数巻程読み、何故、人間が巨人を進撃する話らしいのに、巨人が進撃するというタイトルなのか、おぼろげに判った。
この漫画の単行本の構成は、主人公の同期のメンバーが多く紹介されており、巨人から身を守るために造られたとされる壁の中での謎解きという点で、推理小説の傾向が見受けられるのではないかと思った。

進撃の巨人を既刊まで読み終えた。推理小説の段階が終わったらしい。また、進撃の巨人というタイトルの意味はこれから明かされるらしい。

喫茶店に入ると、午前中の為か、高齢者が多い。介護老人福祉施設、介護老人保健施設、短期入所生活介護、通所介護施設といった施設を出入りするようになり、巷で見掛ける高齢者に対する視線が、特に日常の生活動作に対して、変わったように思う。

2017年5月4日/情報量が多くても万能では無い

電車を千葉駅で乗り換える。随分と印象が変わったと思う。学生時代はふらふらしていたものだが、今となっては仕事の為に電車を乗り換える場所でしかない。

一方的な主張をただ聴くしかない仕事というものもあるのだろう。残念ながら期待に添えそうも無い話だと、相手が思い描くストーリーの筋書きを少し変えて説明を試みたが、納得できないらしい。ひたすら喋り続け、代理人をたてる云々と言う。どうぞお好きに。他人に何か求めた以上、それは既に交渉なのであって、自分の意見を貫けば済む話では無い。

流れる有線放送のメロデイに聞き覚えはあるものの、しっくり来ない。メロデイが似通った曲なのだろうか。それともカバー曲か。そんな事を考えているとサビに至り、スピッツの春の歌のカバーである事に気がつく。藤原さくらというシンガーソングライターのカバーで、映画「3月のライオン」の主題歌らしい。全くこういった話に疎くなってしまった。その後、スピッツの春の歌が流れた。

そんな一日だった。

改めて藤原さくらとスピッツの春の歌を聴き比べてみたが、どちらも悪く無いと思った。

宇多田ヒカルの新譜を改めて聴き直したところ、やはり少し重いなぁと感じてしまう。これが情念とでもいうべきものなのだろうか。たぶんそれが良いのだろうけど。

キングダムという漫画を最新刊まで読んだ。秦の始皇帝というのは名君だったのだろうかと考えてしまう。読み始めたきっかけは週刊誌を立ち読みしたところ、王翦という武将が底が見えないよう描かれており、思わず引き込まれてしまったからだが、どうやら史実では主役級の活躍をするらしい。

客と同行して出張をする事になり、新幹線の指定席を予約し、準備に取り掛かるものの、要望が曖昧過ぎる上に、打ち合わせも車の中でという適当さの為に途方に暮れる。

いざ、現地に赴くと、資料がある程度用意してあり、特にやる事が無いとボソリと呟くと客も隣で頷いている。

先日思い付きで読んだ走れメロスはメロスの観念の万能とでも言うべきナルシズムの物語で、何度か読んでいるものの、正直面食らってしまった。何が由来の物語なのかと調べてみると、ピタゴラス学派の逸話等らしい。そこでピタゴラス学派の逸話を童話にしたという鈴木三重吉のデイモンとピシアスを読み、更に他の童話を何作が読んだが、これがなかなか面白い。

大型連休に入り、気が抜けてしまう。

久しぶりにジムに行く。翌日の疲れと筋肉痛が煩わしいが、何も無いよりマシであるとも言える。

いざ、買い物に出掛けてみるものの、衣類の種類と量の多さに戸惑ってしまう。本屋に行ってもKindleで買えるのでは等と考えてしまう。困ったものである。

着物姿の女性が会話が途切れない話し方という漫画を読んでいる。

インターネットで観念と万能の対義語を検索していたところ、「万能ではない」という検索結果が出て笑ってしまった。しかしそもそも対義語とは?

2017年4月23日/海が見える市役所にて

電車に乗り込むと女性が座席に横になって眠っている。最初は無視していたが、周りの女性を訝しむ視線を見つけ、「もしかしたら死んでいるのでは?」と思い、女性を見ると鼻を擦っている。どうやら死んでいる訳では無いらしい。ホッとしてスマートフォンを眺める。何故女性は電車の座席で横になり周りを省みず心行くまで眠る事になったか。

ふと下ネタを思いついた。漢字で伏せると珍珍ぶらり途中下車の旅というしょうもないもので、おそらく露出狂の犯罪者が警察に追われながら余罪を重ねて行く話なのだろうなと思った。しかし、何故今更ぶらりという言葉から頭の中で一筆書きのイチモツを描かねばならぬのだろう。ぶらりからポロリ、ミッキーマウスとポロリと終わり無き連想と闘争。

真鶴街道と熱海街道を抜ける。海沿いを車で走るのは気持ち良いが、急カーブと後ろを走る初心者マークを付けた車があるために気が抜けない。バックミラーに移る青年たちは大学生だろうか?こんな天気の良い日に仲間と海沿いをドライブできるなんて、有りそうで無い事だ。羨ましい限りだと思う。そんな生活を砂漠の中のオアシスだと形容したのは伊坂幸太郎だ。青春は何時か終わるからこそ、美しく印象付けられる。

山間の道路を抜け、下校中の小学生を車で追い抜くと尿意を覚え、市役所に車を停め、トイレを借りる。誰も居ない市役所、天窓から降り注ぐ光に日焼けした置き物。市役所を出ると海が青葉から垣間見える。時間がゆったりと進み始めるのが判る。車に戻り、座席を倒して外を眺める。風が少し強く、車を揺らす。市役所の横にある幼稚園から園児が駆け出してくる。小学生が重たそうなランドセルを揺らしながら喧しく通り過ぎる。役所の出入口から老人が這い出してくる。知らぬ間に身に付けた忙しなさからすれば、最早喜劇にすら見える光景だった。しかし、むしろその忙しなさこそ喜劇めいていて、実は悲劇では無いのか?そんな自問は後でまとめてすることにした。

2017年4月13日/New Chapter

以前、美しいと思った相模湖の夜景、よくよく考えてみると諏訪湖の誤りだった。

雨の冷たさをしのぎながら過ごしている。

新幹線の利用は何度やっても上手くいかない。切符を買ってから、改札を抜けるまでにいつも一手間掛かっている。

どうにも北朝鮮の情勢の雲行きが怪しいとの話がネットで目に付く。上司まで話題にしているところを見ると、テレビでも話題になっているのだろうか。「狙われるなら横田基地だろう。」そんな会話を聞き、東京にロケットが落ちたら、自分が死んだことさえ判らないのだろうと思い、大島弓子の単行本「ダリアの帯」に収録された作品を思い出す。あらすじははっきりと覚えていない。主人公が田舎から東京へ新聞記者として働く友人の元を尋ねるものの、友人の姿が見当たらない。友人が残したメモには複数の飛来物が落ちる絵が残されていた。そして主人公は真相を導き出し、友人の部屋の窓を開け呟く。「なあんにもない。」
死んだことにさえ気がつかず、さまよい続ける主人公の魂が空しい。

新幹線での帰り、隣に座った男性のスマートフォンから音が漏れ出し、聴いた事があるなと思ったらケンドリック=ラマーのFor free?だった。

ジェフ=パーカーのアルバムThe New Breedが良い。

2017年4月8日/病院受診と石原さとみ

桜の開花に無感動な自分を発見し、コートを脱いだ女性の身体のラインに心をざわつかせる三十代の春。こうやって言葉にすると唯のスケベなおっさん、傍から見れば助平親父、エロ親父になったのだなぁと感慨深い。そんな思案の四季を一巡りして、やっと桜が美しいと思える。

首と肩の痛みに耐えかね、整形外科を受診したところ、「姿勢が悪い。」という診断が下る。医師の指示通り、胸を張り、その中心に首を据えれば、確かに痛みは無い。待合室で何時間も待たされて得る答え。病院を出ると春の黄昏時、ビルがつくる影を踏みながら笑ってしまう。

花束を紙袋に入れ、座席に着いた女性が便箋を読み進める。表情は硬い。そんな事を思いながら、胸を張り、首をその中心に据えていると、女性が目元を指で拭い始めた。便箋の文字を足早に追う瞳、崩れ行く化粧、美しい情動。

女性と思う存分愛し合いたいと思う。

肌が荒れてしょうがないので、久しぶりに病院に赴く。医師を待つ間、電子カルテに表示された診断名は顔面性ざ瘡とある。ざ瘡とはニキビの事らしいので顔面にニキビがあるという、そのままの診断である。

待合室、カウンターの向こうに座る事務員の女性に欲情する。ニキビ面のおっさんが犬猫と同じように、思春期の老若男女の如く、心を乱している。全く馬鹿らしいと思うのだが、これが現実である。大学生の時分、友人と神保町を散策していると、アダルトショップでDVDを眺める老人を見つけ「ああやっていつまでも性欲を持て余すのかね?」と友人に問うと「そんなもんじゃないの?」という答えが返って来た事を思い出す。

あの時、傍に居た友人とはもう三年以上会っていない。連絡をしたが返事はもう無い。

物事を繋ぎ留めるのは容易では無く、散り散りに、最早それが何であったかも判らないところまで、分解されてしまう。認知は薄れ、音が連なる事はいずれ無くなってしまう。歳を取る度に記憶は間延びして行く。しかし、それしか生きる術は無く、意味を取り逃がして、漸く得られることがある。

燃え上がる情欲、怠惰、嫉妬、高慢、貪欲、憤怒、貪食、石原さとみ。

東京メトロで専らコスプレしている石原さとみ。過去の映像を編集した映像が流れ、遂に石原さとみの出番も終わりかと思いきや、そのままマイナビの石原さとみ出演の広告が流れ、もうええわっ‼︎となり、車内に逃げ込めば英会話イーオンの石原さとみの微笑みが待っている。何故、石原さとみなのか、私のグランパでチンピラに「一丁前に女の匂いがしやがる。」と言われていた石原さとみ。東京メトロの広告のキャッチコピーは「Find my Tokyo」だが、見つけるまでもなく石原さとみはすぐ傍にいる。

遺伝子改造、人体実験、環境汚染、社会的不公正、貧困、過度な裕福さ、麻薬中毒、石原さとみ。

建前、それはとても重要なものだと思っているのだが、なかなか言葉にならない。しかし、本音のみでは成り立たないことは誰でも判っているはずなのでは?確かに建前にはウンザリだという気分も判るのだが、本音を前提にした会話というのは、そもそも何も進展が無いのでは。そもそも現実と本音、建前と偽善は異なるはずだが。

2017年4月4日/督促

年度末最後の平日の朝を走る。年度末最後の平日だからなのか、電車の進みがいつもより遅い、というのは言い訳で、そもそも自宅を出る時間が遅すぎたのだと思う。形式だけのタイムカードは無慈悲に午前九時一分と刻印される。息を整えたところで、事務員から「今日はどうしたんですか?」と問われ、とぼけようかと思案しながら、間も無く返事をした結果、「いつもより電車が進むのが遅くて。」と考えていたことをそのまま口にしてしまう。

地下鉄のゴミ箱を漁り、排水路と排水口の間を黒い影が走る。ねずみといえば、奥泉光の小説を思い出すが、目の前には夢の国から帰宅する人々がシートに深く腰を下ろしている。

右隣の席に座る母親と赤ん坊。赤ん坊がどこかを眺め、時折視線を送ってくる。母親が赤ん坊を膝の上からシートへ移動させようとすると、すかさず泣き声を上げる。「嫌なのね。」母親は独りごちる。左隣の席には「宗教を越える真理を求めて」と題された頁をめくる白髪の女性が座っている。

髪の先から額まで頭皮の脂が及んでいるのが判る。ワイシャツとインナーが身体に馴染み過ぎた気持ち悪さ。求められているのは、白紙の頁を文字で一刻も早く、誰でも読めるように埋めること。

「すいません、もう督促が来ているので、明日にでも書類を送ってもらえませんか。出来ませんか?」今日でも無く、明後日でも無く明日。新しい朝が来た。希望の朝だ。朝は明日にならなければやってこない。答えは簡単だ。「寝なければ。」「すいません。できますか。」「判りました、やります。」確かに書類の提出が遅れている事は事実、非はこちらにある。
午前二時を周る前に仮眠を取り、午前五時に起き、顔を洗い、歯を磨く。果たして徹夜というのは労力の割に…等と言い訳をしている場合では無い。

「自分から自由になれるゼロ思考」なる本を黒衣で身を守る女性が読み進めている。L'Arc〜en〜Cielの楽曲に「自由に縛られている」という歌詞があった事を思い出す。これは自論だが自由になる方法はたった一つ、決まりと時間を守る事だ。しかしながら、私はまた、タイムカードを定刻ギリギリに刻むのだと思う。